渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第16 回 )
これは強引な推論かもしれない。だが街とデパートとの関係を分析する道具の一つにはなるのではないかと考えるので、旅人としての感想に添えて記しておく。 少し時間をさかのぼって、今年の5月に初めて岐阜を訪ねた時だ。タカシマヤ […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第15 回 )
岐阜でも弘前でも、デパートを失った時に聞こえてくる共通の言葉がある。「家族との思い出」だ。 岐阜タカシマヤの最終営業日、私が加わった開店前の行列には親子連れ、また孫も一緒に並ぶ姿があった。取材に来ていた記者たちは、私 […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第14回 )
私が弘前から山形へ戻ったころ、岐阜の柳ケ瀬商店街では新たな動きが進んでいた。閉業したタカシマヤの前に露店を常設させるのだという。 劇場通北商店街振興組合が企画し、岐阜市中央卸売市場との連携で、新鮮な食料品を毎日販売す […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第13回弘前 )
翌日、9月18日の朝から弘前駅前のイトーヨーカドーに出掛けた。開店直後だったが、地下の売り場にはすでに行列ができている。30人くらいだろうか。年齢にばらつきはあるが、皆女性だ。 お目当ては「ポッポ」という店のクレー […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第12回 岐阜その6)
かつての職人町に、いい居酒屋がある。古びてはいるがよく手入れされた木造で、控えめな照明が心を落ち着かせてくれる。 通ぶったことを書いたが、昨年春に初めて弘前市を訪ねた際に入った店で、今回もここを目掛けてやって来たので […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第11回 岐阜その5)
旅をすると、その土地の「ソウルフード」を食してみたくなる。昨年4月に青森県弘前市へ出かけた際には、中三の地下にある「中みそ」がそれに当たるというので訪ねてみた。細め麺に絡むスープは優しい甘みがあって、デパートにふさわし […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第10回 岐阜その4)
すでに30人ほどが列を作っていた。2024年7月31日の午前8時半、この日で47年の歴史に幕を閉じる「岐阜タカシマヤ」の正面玄関前だ。 先着470人にバラの花が贈られるのだという。行列はそのためか。よそから訪ねてきた […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第9回 岐阜その3)
静かな商店街の散策をさらに続けると、やはり間口の小さい食料品店が目に留まった。入口のガラス戸にはポスターを剥がした跡が点々とある。中に人の姿はないが、明かりはついているので営業しているのだろう。ただし棚にはほとんど商品 […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第8回 岐阜その2)
軒先で寝そべるワラビに、つい足を止めてしまった。 タカシマヤの巡回が終わった後、近くをぶらついていた時のことだ。とある食料品店に注意を引かれた。売り場は数人も入れば窮屈になりそうなこぢんまりとしたもので、棚の商品も決 […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第7回 岐阜その1)
来る日を間違えてしまったか。 火曜昼の商店街は、私の足音がアーケードに反響するのではないかと思うほど静まり返っていた。多くの店がシャッターを下ろし、そうでない店はガラス扉の奥を暗がりにしている。 私の住む山形市でも […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第6回 郡山その4)
郡山の空を薄く覆う雲は、わずかな裂け目から日差しをこぼした。その光を受け、うすい百貨店の外壁が輝く。正面玄関前には3台のタクシーが並んでいて、一番後ろの車はドアの外にやや腰の曲がった運転手をもたれさせていた。「まあ、デ […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第5回 郡山その3)
あと1週間早く訪ねていればと悔やんだ。見上げた木はもはや色彩を失い、薄曇りの空を透かす。反対に、その足元に花びらの点描を広げていた。 駅から西に3㎞ほど離れた開成山公園は「観光地もない」と自嘲の聞かれる郡山でも「桜の […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第4回 郡山その2)
「今はさすがにないけどね。昔は卒業式の日になると、高校の前に迎えの車が並ぶのよ。そういう人たちの、ほら、いかついのが。乗ってく子だって、親がそうってわけでもない。先生の息子だったりね」 (ある商店にて) 作家の大江健 […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第3回 郡山その1)
「じゃあ、泥棒でもして税金払えってか?」 憎々しげに吐き捨てた男は、50代半ばといったところだろうか。ねずみ色の作業服を着て、向かい合わせに座った同じ格好の若者に延々と愚痴を聞かせている。 私は、郡山駅前を30分ばか […]
渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第2回 山形)
父の放つ駄じゃれを鼻息だけであしらっていた。そうなったのは中学に入学した辺りからか。夕食時に母が「ソース出すから」と言うと、父は「ソーッスか」などと反応する。居間はたちまち静寂に包まれ、家族の鼻息とため息だけがかすかに […]
<新連載> 渡辺大輔のデパート放浪記 - ペンを捨てよ、街へ出よう - (第1回)
また1つデパートが消える。 かつて憧れとして街に君臨した存在は、今や病人のように心配のまなざしを向けられている。 デパートと街との関係は、なぜ、どのように変わってきたのだろうか。当連載ではさまざまな地域を放浪しなが […]
デパート破産 第25回 (最終回)~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「大沼デパートは、果たして本当に愛されていたのだろうか」 この連載の初回で、私はこの問いを原稿に置いた。2020年1月の破綻後、山形を包んだノスタルジーに偽りのにおいを感じたからだ。もちろんそれは、大沼の歴史をたどる本 […]
デパート破産 第24回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
デパートが苦境に立つ理由を語る時、まず挙げられるのが郊外の巨大ショッピングモールの存在だろうか。 山形においては、1997年に「ジャスコ山形北ショッピングセンター」が、2000年には「イオン山形南ショッピングセンター […]
デパート破産 第23回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「大沼が長くないというのは、この辺で商売をやっている人間ならみんな分かってましたよ」 中心街の事情に通じたある人が、そう話してくれた。2021年秋、大沼デパートの破綻から2年が過ぎようとしていたころだ。 「ただし、 […]
デパート破産 第22回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「大沼の包み紙だと機嫌がいいからね」 母の言葉を、なぜかずっと覚えている。祖父のことだ。 盆や年始になると、母の用意した手土産を持参して祖父の家を訪ねた。当時の山形市には大沼のほかにもデパート、及び似た機能を、持つ店 […]