2024年3月4日 / 最終更新日時 : 2024年3月14日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その3 (承前) 少し時はさかのぼるが元治元年三月、水戸藩尊攘派が鎖国を主張して決起する。天狗党の乱である。これを断固弾圧する方針の幕府は、参勤交代制を復活させるといった強硬な姿勢を取り始める。結局、慶喜に拝謁しようと上洛行の […]
2024年2月2日 / 最終更新日時 : 2024年3月14日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その2 藩政の中心となる大久保 文久二年の久光の率兵上京は、かねてから大久保たちが目指していた薩摩藩による京都の守衛が実現したことになる。だがこれに沸き立った尊王攘夷志士たちが、こぞって京都を目指したことで、恐怖した朝廷は久光 […]
2024年1月16日 / 最終更新日時 : 2024年3月14日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その1 日本国の根幹を作った男 大久保利通を一言で言い表すのは難しい。「明治政府の牽引者」と言えば分かりやすいが、それは「明治六年の政変」以降、十一年に死を迎える頃までのイメージが固定化されたにすぎない。 幕末の薩摩藩では島 […]
2024年1月2日 / 最終更新日時 : 2024年2月14日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その5 白石との対立 人には嫉妬という厄介な感情がある。それでも不遇な人生を送っていた人の人生が突然開けてくると、たいていは過去のことを忘れる。だが中には偏執的な人物もいる。 その典型が新井白石だ。白石は狷介固陋(けんかいこ […]
2023年12月18日 / 最終更新日時 : 2023年12月29日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その4 かくして世界に先駆けて名目貨幣の通用実験が開始された。まさに勘定吟味役と佐渡奉行を兼帯し、将軍や老中の信頼厚い重秀でなければできなかったことだ。 その結果として「貨幣改鋳により物価が騰貴した」ということなら、重秀の失 […]
2023年12月4日 / 最終更新日時 : 2023年12月29日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その3 白石の不遇 重秀が出世街道をひた走る中、一方の白石は不遇な生活を送っていた。 その発端は貞享(じょうきょう)元年( 一六八四)、白石が仕える堀田正俊が暗殺されたことに始まる。 下総古河藩十三万石の藩主である正俊は、 […]
2023年11月16日 / 最終更新日時 : 2023年12月29日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その2 重秀の前半生 重秀は、幕府勘定所の勘定( 平役人) 二百俵取りの次男として、万治元年( 一六五八) に両国橋付近の武家屋敷の一角で生まれた。下級役人の次男という、一生うだつの上がらない境遇に生まれたことになる。それでも […]
2023年11月2日 / 最終更新日時 : 2023年11月30日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その1 毛嫌いされた男 本稿の主人公の荻原彦次郎重秀ほど「毀誉褒貶(きよほうへん)」という言葉が当てはまる人物も少ないだろう。江戸時代を代表する経済官僚で、その優秀さは比類なく、また携わった仕事のほとんどを成功裏に終わらせ、何 […]
2023年10月16日 / 最終更新日時 : 2023年11月15日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その4 意次の経営手腕(承前) それは大小あるが、以下の四つの大きな政策に絞って評価していきたい。 まず「印旛沼の開拓」だが、利根川の下流にある二十万平方キロメートルにも及ぶ印旛沼は、もし干拓に成功したら約三千九百ヘクタール […]
2023年10月2日 / 最終更新日時 : 2023年11月15日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その3 暗転する運命 絶頂期が転落の芽を内包しているのは、幾多の歴史が教えている。だが田沼父子の場合、それは突然襲ってきた。天明四年( 一七八四) 三月、意知(おきとも)が殿中で旗本の佐野政言(まさこと)に惨殺されるという事件 […]
2023年9月4日 / 最終更新日時 : 2023年10月19日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その2 田沼意次の登場 田沼時代と呼ばれるものは、十八世紀後半の宝暦・明和・安永・天明期を指し、西暦で言えば、一七五一年から一七八八年までの三十七年間を指す。 この四つの時代は社会・経済・文化が成熟した時代で、意次のイメージ […]
2023年7月17日 / 最終更新日時 : 2023年10月19日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その1 江戸という時代 いつの時代も為政者の役割は、世の静謐を保ち、万民が安心して暮らせる社会を作り、できれば豊かさを享受できるようにすることだ。それが実現できれば、たとえ為政者たちが贅沢な暮らしをしようと、賄賂をもらおうと、 […]
2023年7月3日 / 最終更新日時 : 2023年10月19日 デパート新聞編集部 連載小説 英雄たちの経営力 第8回 蘇我馬子 その4 三位一体の国家経営(承前) 話は戻るが、この完璧に思える三位一体の体制も、厩戸が飛鳥から北に十五キロメートルも離れた斑鳩(いかるが)宮に新たな都とも呼べるものを築き始めることで、不穏な空気が流れてくる。これは明らかに新 […]
2023年6月16日 / 最終更新日時 : 2023年10月19日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第8回 蘇我馬子 その3 馬子の登場と抵抗勢力の排除 こうした時代背景を経て、馬子は表舞台に登場する。 国内では、欽明と稲目が死去することで、国家の舵取りは次の大王の敏達、馬子、物部守屋の三人に握られた。ちなみに後に馬子と共に二人三脚で国家を […]
2023年6月2日 / 最終更新日時 : 2023年10月19日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第8回 蘇我馬子 その2 大陸の情勢 古墳時代の大陸の情勢についても触れておこう。 高句麗・新羅・百済三国による朝鮮の「三国時代」は紀元前から続いていたが、半島の東北部から満州の一部までを押さえた高句麗の勢力が、ほかの二国に比べて強かった。 […]
2023年5月16日 / 最終更新日時 : 2023年10月19日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第8回 蘇我馬子 その1 国家とは何か こんな疑問を持つ人は極めて少ないだろう。国家とはあって当然のもので、その存在意義などを考えたこところで埒が明かないからだ。しかし考えてみてほしい。あなたが農耕民だと仮定したら、自分と家族、そして土地を守っ […]
2023年5月2日 / 最終更新日時 : 2023年10月19日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第7回 白河上皇 その4 白河院政から鳥羽院政へ(承前) 白河は四十三年にわたる院政の後、大治(だいじ)四年( 一一二九)、七十七歳で崩御(ほうぎょ)する。それを待っていたかのように鳥羽院政が始まる。 白河は父の後三条と違って自ら不正の中に飛 […]
2023年4月17日 / 最終更新日時 : 2023年7月4日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第7回 白河上皇 その3 武士階級の勃興 搾取する方と搾取される方がはっきりしてくると、搾取される方は何らかの防衛手段を講じる。搾取される方とは農民であり、それを管理するのが元豪族の在地役人、すなわち公領の場合は郡司や郷司、荘園の場合は荘官にな […]
2023年4月3日 / 最終更新日時 : 2023年7月4日 伊東 潤 連載小説 英雄たちの経営力 第7回 白河上皇 その2 後三条上皇は院政をしたのか こうした荘園の成長過程が、院政にも大きくかかわってくる。なぜかと言えば、公地公民制を事実上破壊されて最も困るのは天皇だからだ。律令制の建て前は公地公民制なので、天皇は私有財産を所有することが […]
2023年3月16日 / 最終更新日時 : 2023年7月4日 デパート新聞編集部 連載小説 英雄たちの経営力 第7回 白河上皇 その1 古代から中世へ 「賀茂川の水、双六の賽(さい)、山法師( 比叡山延暦寺の僧兵)、これぞわが心にかなわぬもの( 思い通りにならないもの)」と言ったとされる白河上皇は、まさにそれ以外のものはすべて、思いのままになるほどの独 […]