デパート破産 第25回 (最終回)~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「大沼デパートは、果たして本当に愛されていたのだろうか」 この連載の初回で、私はこの問いを原稿に置いた。2020年1月の破綻後、山形を包んだノスタルジーに偽りのにおいを感じたからだ。もちろんそれは、大沼の歴史をたどる本 […]
デパート破産 第24回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
デパートが苦境に立つ理由を語る時、まず挙げられるのが郊外の巨大ショッピングモールの存在だろうか。 山形においては、1997年に「ジャスコ山形北ショッピングセンター」が、2000年には「イオン山形南ショッピングセンター […]
デパート破産 第23回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「大沼が長くないというのは、この辺で商売をやっている人間ならみんな分かってましたよ」 中心街の事情に通じたある人が、そう話してくれた。2021年秋、大沼デパートの破綻から2年が過ぎようとしていたころだ。 「ただし、 […]
デパート破産 第22回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「大沼の包み紙だと機嫌がいいからね」 母の言葉を、なぜかずっと覚えている。祖父のことだ。 盆や年始になると、母の用意した手土産を持参して祖父の家を訪ねた。当時の山形市には大沼のほかにもデパート、及び似た機能を、持つ店 […]
デパート破産 第21回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
職業柄というよりも私の性格のせいなのだろう。同業である飲食店の廃業に敏感だ。 インターネットを使い、特に山形市内の閉店情報を見つけては、自分がまだそうならずに済んでいることに安堵する。悪趣味だが、開業からおよそ13年 […]
デパート破産 第20回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「大沼の存続を心から願っていたのは誰なのでしょう」 先日、山形市内で拙著『さよならデパート』にまつわる講演の機会を頂戴した。大沼デパートについて書くことになったきっかけや、取材の方法、執筆前から発売後にかけての心境の変 […]
デパート破産 第19回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
山形市の中心街にマンションが増えている。 皮切りは旧「セブンプラザ」だろうか。元々は若者向けのブランドを集めたファッションビルで、1974年に開店した。大沼デパートとは交差点を挟み斜めに向かい合っており、互いにお客を […]
デパート破産 第18回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
山形市・大沼の創業から破綻までを追った自著『さよならデパート』のあとがきに、このような一文を書いた。 —もしかしたら私たちは、デパート以上の何かをなくしたのかもしれない。 この真意について何度か尋ねられたが、実は口 […]
デパート破産 第17回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
大沼デパートについてのノンフィクションを書くに当たって、エレベーターガールの証言は欠かせないと思った。とはいえ、確たる狙いがあってではない。単純な連想ゲームのようなもので、私の中では「デパート」と「エレベーターガール」 […]
デパート破産 第16回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
̶軒下貸します。 突然の破綻から間もなく2年になる2022年1月の初旬、旧大沼デパートの土地建物を所有する「一般財団法人山形市都市振興公社」がそう発表した。 朝日新聞の記事(1月15日)によると、中心街の大通りに面し […]
デパート破産 第15回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
デパートのなくなる街が増えている。人口が減り、景気には長らく暗雲が垂れ込めて、さらに人々の趣味や嗜好が細分化されてゆくとなれば、大きな建物を構えてたくさんのお客を呼び込もうという業態は厳しいのだろう。 どこかでデパー […]
デパート破産 第14回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
—将来、子どもたちがね「小さいころの思い出はショッピングモールです」なんて話してると想像したら寂しいじゃないですか。 『さよならデパート』の制作中、取材相手からそんな言葉が漏れた。その方の考えを語ってもらうのが趣旨なの […]
デパート破産 第13回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
2023年8月現在、旧大沼デパートの跡地利用について具体的な発表はないままだ。築年数や耐震性の理由から建物の解体は避けられない。 大枠としては、地元地権者・商工業者・行政が組んで「(仮称)まちづくり委員会」を設置、中心 […]
デパート破産 第12回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
2022年4月の終わりごろ、私の本が書店に並んだ。 大沼デパートについて書こうと着想を得てからおよそ1年半が経っていた。その間、コロナ禍で料理店はまともな商売にならなかったが、国や自治体からの給付金があったので、店を […]
デパート破産 第11回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
2020年1月に大沼デパートが破綻すると、「初の百貨店ゼロ県」として全国的に報道された。ただし山形県の一部では「百貨店はまだ残っている」という声が上がる。「清水屋」があったからだ。(注:2011年6月より「マリーン5清 […]
デパート破産 第10回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
大沼デパート前の大通りを、従業員が清掃する。かつてよく見られた光景は、破綻後の七日町にも残った。 再起の旗を揚げたコンサルティング会社に合流した元幹部によるものだった。学校を出てからずっと大沼で働いていたとか、自らの […]
デパート破産 第9回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
大沼の閉じたシャッターが、再び持ち上がる。「感謝閉店セール」と銘打たれた催しが、2020年7月15日に始まった。9月末まで、ひと月半の復活だ。主催者であるコンサルティング会社が「状況次第では翌年夏頃に」と営業再開の可能 […]
デパート破産 第8回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
幸いにも、という表現は適切ではないだろう。だが大沼デパートは、間もなく襲ってくる「コロナ禍」に巻き込まれることなく、その生命を終えた。 一方、私はコロナ禍によって大沼により接近してゆく。 山形市の日常に恐怖が差し込 […]
デパート破産 第7回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
会見の場で社長は、沈痛な表情を浮かべた。用意された椅子に腰を落とさず、終始立ったまま、何度も頭を下げて記者に向かい合ったという。 社長は突然の破綻の理由として、増税や気候を挙げた。消費税率の上昇によって顧客の購買意欲 […]
デパート破産 第6回 ~山形県からとうとうデパートの灯が消えた~
「今日、大沼がつぶれます」 日曜の夕方に差し掛かろうというころ、彼は私の店に突然やって来てそう吐き出した。 いつもは催事場で、責任者として、また配膳や接客係として朗らかに振る舞っていた彼だ。その顔には一見すると笑みが […]