英雄たちの経営力 第12回 大隈重信 その5(最終回)
(承前) ただし元老や陸海軍を無視し、矢継ぎ早に自分の政策を実現させていく大隈への反発は強まっていた。この時点では、薩長藩閥から軍閥へと成長した陸海軍を抑えきることは困難だった。そんなことから山縣との関係が悪化し、大隈 […]
英雄たちの経営力 第12回 大隈重信 その4
(承前) 後年の回想によると、大隈は使節団に選ばれなかったことに失望するというより、さっさと頭を切り替え、留守政府の中心となって様々な改革を断行するつもりになっていたという。つまり自らの孤立を知るや、それを逆手に取って […]
英雄たちの経営力 第12回 大隈重信 その3
鉄道敷設 大隈の事績のうちでも、近年とくに注目が集まっているのが東京・横浜間の鉄道敷設だ。 近代化を図る上で、物流の重要性は計り知れない。すなわち日本は四方を海に囲まれているため、海運や河川舟運が物流を支えてきた。だ […]
英雄たちの経営力 第12回 大隈重信 その2
(承前) その後も政局とは距離を取っていた佐賀藩と大隈だが、中央の政局は予断を許さないものとなっていた。慶応二年( 一八六六) の第二次長州征伐の失敗は、幕府の屋台骨を揺るがすほどで、これにより幕府の先が見えてきた。と […]
英雄たちの経営力 第12回 大隈重信 その1
分かりにくい男 大隈重信という名を聞いたことのない人は少ないだろう。では何をやった人かと問われれば、十人中九人が「早稲田大学を創設した人」と答えるはずだ。かくゆう私も卒業生の一人として、歴史に携わる前までは、それしか知 […]
英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その5
(承前) これに大久保は愕然とした。留守政府は自分がいない間に新しい政策を出しまくり、参議も増員されていたからだ。つまり「十二カ条の約定書」など無視されたことになる。 大久保は休暇を取って頭を冷やそうとするが、このま […]
英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その4
(承前) そして十二月、王政復古の大号令が下された。この時、春嶽と容堂が慶喜の寛典を説くが、これを岩倉具視と大久保が一蹴する。かくして慶喜に辞官納地が申し渡されるが、それで慶喜らが収まるわけがない。 ただしこの時点で […]
英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その3
(承前) 少し時はさかのぼるが元治元年三月、水戸藩尊攘派が鎖国を主張して決起する。天狗党の乱である。これを断固弾圧する方針の幕府は、参勤交代制を復活させるといった強硬な姿勢を取り始める。結局、慶喜に拝謁しようと上洛行の […]
英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その2
藩政の中心となる大久保 文久二年の久光の率兵上京は、かねてから大久保たちが目指していた薩摩藩による京都の守衛が実現したことになる。だがこれに沸き立った尊王攘夷志士たちが、こぞって京都を目指したことで、恐怖した朝廷は久光 […]
英雄たちの経営力 第11回 大久保利通 その1
日本国の根幹を作った男 大久保利通を一言で言い表すのは難しい。「明治政府の牽引者」と言えば分かりやすいが、それは「明治六年の政変」以降、十一年に死を迎える頃までのイメージが固定化されたにすぎない。 幕末の薩摩藩では島 […]
英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その5
白石との対立 人には嫉妬という厄介な感情がある。それでも不遇な人生を送っていた人の人生が突然開けてくると、たいていは過去のことを忘れる。だが中には偏執的な人物もいる。 その典型が新井白石だ。白石は狷介固陋(けんかいこ […]
英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その4
かくして世界に先駆けて名目貨幣の通用実験が開始された。まさに勘定吟味役と佐渡奉行を兼帯し、将軍や老中の信頼厚い重秀でなければできなかったことだ。 その結果として「貨幣改鋳により物価が騰貴した」ということなら、重秀の失 […]
英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その3
白石の不遇 重秀が出世街道をひた走る中、一方の白石は不遇な生活を送っていた。 その発端は貞享(じょうきょう)元年( 一六八四)、白石が仕える堀田正俊が暗殺されたことに始まる。 下総古河藩十三万石の藩主である正俊は、 […]
英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その2
重秀の前半生 重秀は、幕府勘定所の勘定( 平役人) 二百俵取りの次男として、万治元年( 一六五八) に両国橋付近の武家屋敷の一角で生まれた。下級役人の次男という、一生うだつの上がらない境遇に生まれたことになる。それでも […]
英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その1
毛嫌いされた男 本稿の主人公の荻原彦次郎重秀ほど「毀誉褒貶(きよほうへん)」という言葉が当てはまる人物も少ないだろう。江戸時代を代表する経済官僚で、その優秀さは比類なく、また携わった仕事のほとんどを成功裏に終わらせ、何 […]
英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その4
意次の経営手腕(承前) それは大小あるが、以下の四つの大きな政策に絞って評価していきたい。 まず「印旛沼の開拓」だが、利根川の下流にある二十万平方キロメートルにも及ぶ印旛沼は、もし干拓に成功したら約三千九百ヘクタール […]
英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その3
暗転する運命 絶頂期が転落の芽を内包しているのは、幾多の歴史が教えている。だが田沼父子の場合、それは突然襲ってきた。天明四年( 一七八四) 三月、意知(おきとも)が殿中で旗本の佐野政言(まさこと)に惨殺されるという事件 […]
英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その2
田沼意次の登場 田沼時代と呼ばれるものは、十八世紀後半の宝暦・明和・安永・天明期を指し、西暦で言えば、一七五一年から一七八八年までの三十七年間を指す。 この四つの時代は社会・経済・文化が成熟した時代で、意次のイメージ […]
英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その1
江戸という時代 いつの時代も為政者の役割は、世の静謐を保ち、万民が安心して暮らせる社会を作り、できれば豊かさを享受できるようにすることだ。それが実現できれば、たとえ為政者たちが贅沢な暮らしをしようと、賄賂をもらおうと、 […]
英雄たちの経営力 第8回 蘇我馬子 その4
三位一体の国家経営(承前) 話は戻るが、この完璧に思える三位一体の体制も、厩戸が飛鳥から北に十五キロメートルも離れた斑鳩(いかるが)宮に新たな都とも呼べるものを築き始めることで、不穏な空気が流れてくる。これは明らかに新 […]