英雄たちの経営力 第10回 荻原重秀 その3

白石の不遇

 重秀が出世街道をひた走る中、一方の白石は不遇な生活を送っていた。

 その発端は貞享(じょうきょう)元年( 一六八四)、白石が仕える堀田正俊が暗殺されたことに始まる。

 下総古河藩十三万石の藩主である正俊は、綱吉を将軍に据えることに貢献し、綱吉から絶大な信頼を得て大老職に任じられた。以後、幕政に辣腕を振るっていた。

 ところが美濃青野藩一万二千石の藩主の稲葉正休(いなばまさやす)という男によって、正俊の人生は突然絶たれる。

 正休は正俊の下役として河内平野の溢れ水対策に取り組んでいたが、些細な行き違いから面目を潰され、殿中で発作的に斬撃に及んだのだ。正休はその場で殺され、正俊は後に死去する。

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伊東 潤