英雄たちの経営力 第9回 田沼意次 その2
田沼意次の登場
田沼時代と呼ばれるものは、十八世紀後半の宝暦・明和・安永・天明期を指し、西暦で言えば、一七五一年から一七八八年までの三十七年間を指す。
この四つの時代は社会・経済・文化が成熟した時代で、意次のイメージとしては、金権腐敗の政治家で栄耀栄華をほしいままにしたといったところだろう。果たして、それは事実なのだろうか。
田沼家の元の名字は佐野だが、家祖とされた正俊の出自や事績は不明で、下野国人の佐野氏との関係も分かっていない。正俊から六代後の重綱が下野国田沼に住み、田沼を称したというから、佐野家の支流の一つだったと思われる。
時代は下り、吉次という者が大坂夏の陣で功を挙げ、紀伊藩の家祖となる徳川頼宣に仕え、子孫は紀伊藩士として続いていく。意次の祖父の義房は、何らかの理由で致仕して牢人となるが、意次の父の意行が、まだ部屋住みだった吉宗に召し出されて側近の一人となり、家運が開けてくる。
吉宗が将軍となったことで、意行は六百石の知行を得るが、不運にも四十七歳で他界してしまう。
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作 伊東 潤
『黒南風の海 – 加藤清正』や、鎌倉時代初期を描いた『夜叉の都』、サスペンス小説『横浜1963』など幅広いジャンルで活躍
北条五代, 覇王の神殿, 琉球警察, 威風堂々 幕末佐賀風雲録 など。