英雄たちの経営力 第12回 大隈重信 その5(最終回)
(承前)
ただし元老や陸海軍を無視し、矢継ぎ早に自分の政策を実現させていく大隈への反発は強まっていた。この時点では、薩長藩閥から軍閥へと成長した陸海軍を抑えきることは困難だった。そんなことから山縣との関係が悪化し、大隈の構想する後継内閣が流産することで、大正五年( 一九一六) に大隈は辞表を提出し、第二次大隈内閣は終幕を迎える。
第二次大隈政権は二年半という期間となり、外交面でも財政面でも実績は上々だった。
だが誰にも晩年は訪れる。「健全な二大政党による政治運営」というイギリスの立憲主義に倣った体制を日本でも定着させるべく奔走してきた大隈だったが、首相を退いた後の政界への影響力の低下はいかんともし難く、政治の世界と距離を取らざるを得なかった。そのため大隈の究極の理想である「東西文明の調和による平和」という目標に邁進すべく、活動の場を大日本文明協会と雑誌「大観」に求めるようになる。
しかしそんな大隈にも落日が訪れる。大正十一年( 一九二二) 一月十日、大隈は永眠する。享年は八十三だった。
このコンテンツを表示するには、会員登録 が必要です。
作 伊東 潤
『黒南風の海 – 加藤清正』や、鎌倉時代初期を描いた『夜叉の都』、サスペンス小説『横浜1963』など幅広いジャンルで活躍
北条五代, 覇王の神殿, 琉球警察, 威風堂々 幕末佐賀風雲録 など。