英雄たちの経営力 第12回 大隈重信 その4

(承前)

 後年の回想によると、大隈は使節団に選ばれなかったことに失望するというより、さっさと頭を切り替え、留守政府の中心となって様々な改革を断行するつもりになっていたという。つまり自らの孤立を知るや、それを逆手に取って、国内問題の改革によって実績を挙げようとしたのだ。

 留守政府の中心は西郷隆盛で、大隈が何かを提案すれば「よかど」といった調子なので、大隈はやりたい放題となった。

 転んでも起きない点からすれば、「さすが大隈」と言えるが、使節団が帰国してからのハレーションを考えれば、さらなる孤立もあり得る。それを念頭に置いていたのだろうか。

 かくして財政・地方制度の統一、外国債処分・紙幣償却、裁判権の独立、兵権の統一と徴兵制度、兵部省改革( 陸軍と海軍の二軍制)、教育制度の統一、学制の制定( 義務教育制)、四民平等の布告、人身売買禁止、国立銀行条例公布、太陽暦の採用、銭湯での混浴禁止といった改革を大隈は実行する。文字通り多岐にわたり、いずれも近代国家建設のために必要なものだった。

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伊東 潤