昭和24年10月創刊

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デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年12月15日号-38

生き残りをかけ模索続く百貨店(後編)

大丸東京

OMO(後編)

前編 からのつづきです。

大丸松坂屋

 旗艦店である東京大丸にJ.フロントリテイリング初のOMO、ネット通販時代を反映したショールーミング店舗「明日見世」を開いた。

他店舗への導入も視野

 大丸東京店4階に10月6日にオープンした大丸松坂屋百貨店初のショールーミングスペースは「明日見世(asumise)」アスミセと読む。

 物販を要としてきた百貨店で「売らない」スペースを展開するという異例の取り組みだ。新型コロナウイルス感染拡大を機に「新しいリアル店舗のあり方を模索した」(大丸松坂屋百貨店DX推進部)として、リアルでの販売機会が少ないD2Cブランドを集積することで、既存顧客に回遊を促し相乗効果を狙うとともに、大丸東京店の課題の一つとなっていたというZ世代やミレニアル世代の新規顧客獲得を目指す、という。

 明日見世のスペースは4階のイベントスペースに配置。売場面積は約30坪、什器や装飾物にはリサイクルできる素材やユーズド家具を組み合わせた。4階のフロアには「エンポリオアルマーニ」や「エポカ」「ベイジ」といったエレガントなウィメンズブランドのほか、「ユナイテッドアローズ」や「トゥモローランド」といったセレクトショップが並ぶ。イベントスペースではウィメンズのファッションブランドのポップアップを開催することが多かったが、明日見世はテーマに合わせてファッションからコスメ、生活雑貨まで幅広いラインナップを展開する。

D2Cブランドに特化

 売場ではD2Cブランドに特化し、常時20ブランドを取り揃え、3ヶ月に1度入れ替えを行う。初回のテーマには「社会を良くするめぐりと出会う」を掲げ、「Socialgood、Essential beauty、Breaking stereotypes」の3つのポイントに基づきブランドをセレクトした。アパレルからは「BRING」や「WRINN」、コスメからはスキンケアブランド「citr e a 」や日本発のヴィーガンブランド「UNNATURALLYNATURAL」など、ライフスタイルからはインナーブランド「Sugano ORGANIC」やタオルブランド「tt」が出店。ほぼすべての商品でテスターを用意し、あえて「売らない」形態にすることで「来店客に購入へのプレッシャーを減らし、気軽に商品を試せる場にしたかった」と話す。ブランドセレクトには入社3年目の若いスタッフも携わっている。

販売員ではなくアンバサダー

 販売員は、ブランドの魅力を発信する「アンバサダー」と称し、ブランドストーリーを伝えていくとともに、顧客から得た意見をブランド側にフィードバックしていく。人材は大丸東京店で用意する。スタッフユニ フォームは出店したブリングが製作した。

 購入したい商品はQRコードを読み込み、各ブランドのECサイトで購入手続きを行う。大丸松坂屋百貨店側の収益は出店手数料としている。今後は店内にAIカメラを設置し、来店客の行動データを含むパッケージを販売することや、「明日見世」を通じてECで購入した場合の手数料の導入など、さまざまなビジネスの可能性を検討していく、としている。

 「明日見世」の立ち上げに向け、大丸松坂屋は昨年末から準備を進めてきた。D2Cブランド側は百貨店に出店することで認知向上につながるほか、大丸東京店からのフィードバックを得ることでブランド運営に役立てることができる。大丸松坂屋側はD2Cブランドの展示スペースを通じて得た知見を百貨店事業に活かしていきたい考えで、反響次第で他店舗への導入を視野に入れている。
※D2Cとは、「Directto Consumer」の略称で、「メーカーやブランドが代理店や小売店を通さずに、自社のECサイトを通じて、商品を消費者に直接販売するビジネスモデル」を意味する。

《所感》

 コンセプトだけでなく「とっつきにくさ」まで、渋谷西武のCHOOSEBASEと東京大丸の明日見世は酷似している。 筆者は、実際に買い物をしようと思い渋谷西武に行ってみた。正直な感想は「まどろっこしい」だ。もちろん、筆者の様なシニア層をターゲットにしている訳ではないだろうが。

 オジサン客は「あ、このスニーカーいいな」と思ったのだが、値札やプライスカードを探しても、どこにもない。もちろんスタッフも居ない。
※もし居ても、多分教え てはくれないのだろうけど・・・QRコードをスマホで読み取る動作に慣れていないだけなのだろう、が、(リアルの)プライスの表示にそれほどの手間はかからないと思うし、それで販売機会をロスする理由が、どうしても理解し難いのだ。「老兵は只消え去るのみ」というのが実感だ。

 試しにECサイトの「トリセツ」を読んでみよう

 『明日見世の商品は各ブランド様のウェブサイトページからのご購入となります。店舗では商品の購入ができませんのでご注意ください。

 明日見世の商品をご購入頂きますウェブサイトは、(株)大丸松坂屋百貨店が運営するサイトではございません。そのため、大丸・松坂屋各種カードのご利用並びにポイント付与は出来ません。』

と素っ気ない。試験導入だからだろうが、前述の渋谷西武も同様だ。

3年でオンライン経由売上400億円へ

 大丸松坂屋百貨店は、2024年2月期を最終年とした3カ年の中期経営計画でOMOを加速する。「人」を軸にしたデジタル戦略により、オンライン経由の売上高は、前期(21年2 月期) の100億円強に対し、3年後には400億円を目指す。カテゴリー別のオンライン経由売上高については、これまではギフトが中心だったが、同領域も伸ばしつつ、3年間で成長のけん引役として化粧品とアート、外商オンライン活動(コネスリーニュ)などを見込んでいる。

 来年2月には、コスメのOMOショッピングサイトをスタートする。当該サイトは「人」の力をデジタルで拡張する独自のOMO施策を具現化したもので、デパートコスメの情報メディア「DEPACO(デパコ)」を進化させ、商品販売だけでなく、ビューティーアドバイザーによるオンライン接客やウェビナー、チャットなど、さまざまなタッチポイントを通じてコスメを楽しめるサイトとして展開。

 3年後のオンライン経由売上高として50億円を目指す。

富裕層シフトの切り札「コネスリーニュ」

 大丸松坂屋の外商顧客向けサイト「コネスリーニュ」については、遂に会員数が8万人となり、掲載商品や接客機能の充実を図っており、9月からはオンライン接客サービスを始めている。今後も第一級の商品やサービス、体験価値を充実させることで、3年後のオンライン経由売上高として100億円を目標とする。また、アートについてもオンラインで売れる傾向があり、専門家がオンライン上でしっかり説明することで購入のハードルを下げられると見ており、中計における成長領域としてリアルとデジタルを組み合わせた取り組みを模索している。 ECチャネルの新サービスや実験店舗の取り組みとしては、今年4月に高価格帯ブランドの洋服を月額定額でレンタルできるファッションサブスクリプション事業「アナザーアドレス」をスタートした。8月末までに累計登録者数が5000人を超えた、という。

 前述した、D2Cブランドのショールーミングスペース「明日見世」についても、このOMO戦略の一端として開設したものだ。百貨店として将来売れる商品を探索するひとつの装置として同実験店舗を機能させたい考えの様だ。

 なお、大丸松坂屋百貨店ではアプリによるタッチポイントのデジタル化についてもコロナ禍で前進しており、直近1年間の実績ではアプリユーザーの売上高は1750億円で稼働率は76%、顧客単価は自社カード顧客でアプリ未登録者と比べると2・5倍に上った。

 今上期のアプリユーザー数は112万人だが、顧客情報および購買情報の一元管理とCRMの高度化を図り、24年2月期には倍以上となる240万人を目標とする。

V R( メタバース)

松屋銀座本店

 自主編集売り場「デザインコレクション」のバーチャルストアを開設。「デザインコレクション」は京都を拠点とするデジタルアーカイブ制作のディオ(Dio)のVR(仮想現実)技術を活用し、リアル店舗のような買い物体験を仮想空間で再現した、という。

 バーチャルストアは8Kを超える高細密な画質で、商品を360度回転して見ることができるのが特徴。VR技術を用いて店舗空間と陳列商品をサイト上に再現し、訪問者は売場をバーチャル上で見て歩き、商品との出会いや新しい発見を体験してもらう。オルゴールや折りたためる椅子など一部商品は動画で音や機能を確認できる。

 取扱いアイテムは店頭の700点のうち、家具、時計、文具、玩具、食器など定番や最新アイテムの代表的な商品100点を掲出し、松屋のオンラインサイトで購入できるようにした。

 「デザインコレクション」は1955年に開設し、全ての商品は日本デザインコミッティーが選んだセレクトショップ。実店舗同様にサイト上でも選定者のコメントやプロフィールを知ることができる。

 店頭、EC合わせた年間売上高は前年比25%増を見込んでいる。同店では「百貨店らしい買い物体験をオンラインで追求した。新規顧客の開拓や実店舗への送客につなげたい」と話している。ディオは京都を中心とした国宝や世界遺産、寺社文化財などのデジタルアーカイブを製作している。
VRとECを組み合わせた今回のバーチャルストアは百貨店向けで初の試みとなる、という。

変わり続ける世の中だから、わたしも変わる

 11月19日にリニューアルオープンした、仙台S‐PALのキャッチコピーだ。唐突で申し訳ない。

 変化する世界、変化する社会では、先ず自分自身が変わらなければ、生きていけない、生き残れない。という事だろう。QRコードを読むためにスマホをかざし、アプリをダウンロードする事さえ厭うような人間は、淘汰されてしまう、という事なのだ。実際それには年齢は関係なく、変化に対応するモノが進化し、生き残るというコトだ。ヒトもそうだし、百貨店という企業ももちろん例外ではない。
自身も肝に銘じたい。

連載 デパートのルネッサンスはどこにある?

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