昭和24年10月創刊

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デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年12月1日号-37

伊勢丹新宿本店

生き残りをかけ模索続く百貨店(前編)

SDGsOMO (前編)

 本紙11月1日号で、筆者は「百貨店の変革」を唱えた。ビジネスモデルの転換や「脱百貨店」の一例として、リアルとデジタルの融合と、それによる百貨店の「ECシフト」を語った。 続く11月15日号では、もうひとつの柱として「富裕層シフト」を取り上げた。以下整理してみた。

○デジタルシフト

 もはや「ネット社会」という言葉を聞かなくなるほど、デジタルの進歩が我々の生活のバックボーンとなった現在。百貨店の商売がDX化、OMO化するのは至極当然のことである。
※OMOは後述

 それに応じて、館の来店客が減り、結果として宅配シェアが増えるのも自明の理だ。予想外なのはコロナによって4~5年その変化のスピードが速まったコトだけである。帰結は変わらないのだ。

 これは科学の進歩により、半世紀前には「SFの世界」だった話が、具現化した「だけ」である。
この間、仮想空間という「もう一つの世界」もVR、ARからメタバースへと進化し、それに伴う販売手法もネット課金やサブスクリプション(定額制)へと、変化を続け ていかざるを得ない。

○富裕層シフト

 もう一方の「富裕層シフト」は科学ではなく政治と経済の、そして「歴史」の話である。

 アベノミクスにより株高と上場企業の内部留保が進み、勤労世帯の所得は上がらない、と言う状況が9年近く続いた。それは、従来百貨店の主要顧客であったアッパーミ ドル層を消失せしめた。岸田新首相がしきりに「新しい資本主義」「成長と分配」を連呼しているのは、このアベノミクスの暗黒面が露見してしまったからに他ならない。もちろん中間層は消えてなくなったのではない。大多数は多かれ少なかれ「貧困化」し、ほんの少数の「富裕層」とに分断されたのだ。そして都心の大手百貨店は「金持ち相手の商売」に特化しようと、既存の「外商という仕組み」を強化しようとしているのだ。

 本欄にはアベノミクスの功罪を語る紙面はない。但し、富裕層シフトというのは、ある意味半世紀前に「原点回帰」しているだけなのかもしれない。昭和30年代からの50 年、「1億総中流」という日本社会の「平等幻想」は、世界の歴史の中で、特別な出来事であったのかもしれない。失礼、こちらもSF的な話になってしまった。筆者の悪い癖だ。「昔は良かった」と言い始めたら、れっきとした「老人」の仲間入りだ。

▽政治シフト

 以前にも記したが、百貨店というのは政府の政策の影響を受けやすい業種である。時の首相の思惑で(もちろん思惑だけではないだろうが)自主休業というお題目で休業、時短に追い込まれる。知事が「ステイホーム」を唱えれば、人流は激減し、混雑したことのないブランド売場でさえ、マスコミに告発され「スケープゴート」にされる。

 逆に、常に混雑しているデパ地下は、近所の食品スーパー同様「おとがめなし」だった。※食品スタッフのクラスターが発生して直ぐに休業したが。

 2019年以前のレベルにまで、インバウンドが復活するまで、デパートは数は少なくとも「富裕層」に選択と集中するしか、策はないのかもしれない。もちろんインバ ウンドが戻って来るとは、だれも保証はしてくれないが。

さて、本題に移ろう。

 コロナ禍に端を発した「巣ごもり需要」だが、感染収束に近い状況となっても、衰えを見せない。そういった「非来店時代+非消費社会」の新しいテーマである、OMOやサステナビリティについて、各百貨店ともいろいろなチャレンジを始めている。

 以下、デパート大手の三越伊勢丹、大丸松坂屋の対応を列挙する。併せて渋谷西武や松屋銀座の取組みも紹介する。

SDGs(リサイクル)

SDGs(持続可能な開発目標)が小売(商業)だけでなく、あらゆるビジネスで必須のコンセプトになって来た。これは、けしてかつての「エコ」ブームが、サステナビリティというワードに変わっただけではない。環境配慮については、ここでCOP26にまで言及する紙面はないが、百貨店に限らず、我々の生活は「脱炭素社会」を目指し ていることは間違いない。当然、持続可能社会の「ニューノーマル= 常識」として、リサイクルやリユース、更にはサブスクビジネスへの追い風が続いている。順番に見て行こう。

□三越伊勢丹 直営買取り店を始動

 三越伊勢丹は10月1日より、常設型の直営買取り店「アイム グリーン」を、昨年10月にスタートした日本橋三越本店に続き、伊勢丹新宿店での2店舗目をオープン。百貨店への「信頼」をベースに、販売のアフターサポートとしてのリユースを提案する。

アイムグリーン

 三越伊勢丹のスタッフ10名が接客を担当し、査定と値付けといった実務はバリュエンスのバイヤーが常駐して行う。利用者は三越伊勢丹のHPから予約し来店。三越伊勢丹スタッフが個室にて接客を行う。宅配買取りや、外商部門での出張買取りも行っていく。

 強みは百貨店の積み上げてきた信頼性と、接客スキルの高さだ。買取り事業者の利用に不安を抱く層に対し、百貨店としての信頼や接客を強みに利用を呼びかけていく。 三越伊勢丹は店頭販売を経験したスタッフを中心に「商品知識や接客、背中を押す役割など、販売の経験が活きるシーンは多い」と担当マネージャーは話す。

 テスト段階は順調で、20年秋から実験的に運営を行った日本橋三越店では買取り額が計画比130%、年約2000件に到達。また10月から伊勢丹新宿店で開始した宅配買取りは、人気のため10月下旬時点での申込みを停止している。

 これまでも同社百貨店にリユース事業者がテナントインすることはあったが、アイム グリーンでは特定ブランドの高価買取りにこだわらず、購入後のアフターサポートとしてのサービスを打ち出す。例えば売却が難しい品の引取りも行い、古着など一部商材は日本環境設計と組んで、リサイクル素材に再生する。またバリュエンスジャパン と提携することで、ニーズの大きい骨董等の適正買取りへと結びつける。当面2店舗体制で運営し、他の三越伊勢丹への展開は現在検討中だ。短期的には家具家電や楽器への対応を目指していく他、リユースの難しい小物類や革製品など、廃棄に繋がりやすい引取品の活用を模索する。

 正直、ブランド買取りの「なんぼや」との違いは、接客を伊勢丹のスタッフが行うことだけだ。しかしブランド品を持ち込む顧客は「伊勢丹」の看板を見て、来店するのだ。買取り品がバックヤードに収まった後に、なんぼやの店舗で再販されるのか、業者同士のオークションに掛けられるのか、海外で処分されるのか、顧客は知る由もない。このスキーム( 仕組み) の要は、伊勢丹の看板= ブランドが国内では最強だ、ということだ。

黒子はバリュエンス

 もちろん、販売のプロである百貨店であっても、買取りについては「シロウト」である。バックにちゃんとした「 指南役」がついている。ブランド買取りの「なんぼや」を展開・運営するバリュエンスである。

 そのバリュエンスホールディングスは10月14日に決算発表を実施した。21 年8月期は売上高525億円で、前年比38%増となり、増収増益となった。

 金相場の落ち着きや時計相場の変化、緊急事態宣言などのマイナス要素を、ネオスタンダードの買収や同社運営の古物市場「スターバイヤーズオークション」のオンライン化により、会員増加などのプラス要素が大きく上回った。

 オークション会員数は前期末の576社から21年8月期は1239社まで増加。海外企業の参加も増え、現在金額ベースで約4分の1が海外からの落札という。

 店舗数は国内が前期84店から今期125店舗に、海外は前期2店舗が今期21店舗体制になった。売上総利益は前期比48%増の138億円、営業利益12億円、親会社株主に帰属する純利益は7億円。またQ4期の海外売上高比率は19%と、徐々に海外での売上を伸ばしている。同社はネオスタンダードを20年9月に傘下に入れ、21年2Qより同社決算に含まれるようになったことで大幅な増収が予測されていた。今後は百貨店とのアライアンス強化、オークションの拡大、海外展開の加速などで成長を継続する考え。22年8月期は売上643億円、営業利益18億円を目指す、という。

次のテーマに移ろう

OMO

※ O M O は「OnlineMerges with Offline」の略称で、日本語に直訳すると「オンラインとオフラインを併合する」という意味。具体的には「ネット上とネット以外の店舗などの垣根を超えたマーケティング概念」を表す。

□渋谷西武

 そごう・西武は、店頭とECで顧客・商品・在庫情報が統一された、メディア型OMOストア「CHOOSEBASESHIBUYA(チューズベース シブヤ)」を西武渋谷店に9月にオープンした。CHOOSEBASE SHIBUYAは店頭とECで顧客・商品・在庫情報統一したOMO新業態。西武渋谷店パーキング館1 階をリニューアルし ミレニアル世代やZ世代の支持を集めるD2Cブランドとの協業を通して新しい小売ビジネスの創出を目指した。

 来店者は、没入感のある空間のなかで、オンラインとオフラインを融合した新しい購買体験をスマートフォンにて楽しめる、という。特色としてミレニアル~Z世代の関 心事である社会課題をテーマに設定。テーマに寄り添った商品、ブランドが編集されたストアを作っていく。「モノ」に込められた思い・意味をオンライン・オフラインの双方で発信することで、顧客とブランドをマッチングする役割をそごう・西武が担う。

 テーマや商品は一定期間で入れ替わり、来店しても新しい出会いと学びのあるストア体験を提供する、としている。店頭で来店者は、配布された店内専用Webカタログ を通じて、手持ちのスマートフォンでカート追加・お気に入り登録・決済などができる。

 店頭決済は、完全キャッシュレス。店頭では、スタッフを介さずともWebカタログを閲覧・活用することで、関心がある商品や製造背景の理解を深められ、スタッフと非接触で購買体験を完結することも可能。店頭決済後に持ち帰り、自宅配送もでき、多様な ニーズに合わせた受け渡し手段を用意する。

専用ECサイトも開設

 今回、リアル店舗と同時にECサイトをオープン。オンラインで購入した商品を店頭で受け取れる販売形態をはじめとした、新しいショッピングサービスを提案する。

 店頭販売商品はすべて専用ECサイトで購入可能。ショールーミング展示など一部の商品を除き、店頭とECサイトの在庫情報はタイムラグなしで完全連携するという。

 ECサイトでの注文商品の店頭受取りBOPIS(Buy Online Pick-upIn Store)にも対応する。店頭では迷って購入できなかった場合も、遠方で来店が難しい場合も、オンラインで新しいブランド、商品と出会える機会を創出する。

 一方、出店者にも、さまざまなサービスを提供する。実店舗出店実績の少ないブランドでも、商品展示・販売接客業務の追加負担なく、簡単に出店できる仕組みを用意。 出店者側の業務は、販売商品のシステム登録とCHOOSEBASE SHIBUYAへの商品配送のみ。店頭とECにおける陳列(VMD)、販促、在庫管理、販売 売上管理などすべてそごう・西武社が代行する。店内業務オペレーションは最新のデジタルツールを活用することで効率化。実店舗出店にまつわる業務負担が軽くなることで、D2C専業事業者を含めた幅広い出品者による魅力的なコンテンツ展開を見込む。

 さらにAIカメラなど最先端のテクノロジーを活用し、テストマーケティング、商品企画、サービス改善に活用できるデータ提供を行う。

 そごう・西武はこうしたと取り組みを通じて、購買体験のデジタル化が進む中での新業態開発を進めていく構えだ。

後編 に続く

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