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デパート新聞

デパートのルネッサンスはどこにある? 2020年5月15日号

目次

  1. 全国の百貨店売上は歴史的なマイナスを記録
  2. アフターコロナとインバウンド需要の回復
  3. 地方百貨店が衰退した、都心とは異なる理由 – 二つの競合要因
    1. 他業種との競合
    2. デパート間競合

全国の百貨店売上は歴史的なマイナスを記録

 現在国内の百貨店のすべてが新型コロナによる感染防止の名のもとに休業を余儀なくされている。自治体による休業要請に含まれない食品フロアの営業を継続している店舗もあるが、売上への影響は甚大だ。前号でも言及した様に不要不急業種の最右翼である百貨店は、一部食品等を除く営業自粛の影響で、窮地に立たされている。

 百貨店主要5社の4月の売上速報によると、各社の業績は7~9割の減収となった。新型コロナ感染拡大に伴い7都府県で4月7日に「緊急事態宣言」を発出、同16日の全国への拡大により、各社がほぼ全ての店舗を休業、自粛した結果だ。

 GW明けを期限とする「緊急事態宣言」について、政府は5月4日に5月末までの延長を正式決定した。東京、大阪、名古屋とその周辺の都市圏に、福岡、北海道等を加えた13の特定警戒都道府県については、現在と同様の対応継続を求めた。逆に、各知事の判断によるが、エリアによっては早期の営業再開の可能性が出て来たことになる。各社とも、現時点では営業再開に関して慎重な姿勢を崩していないが、仙台、広島等に支店を持つ企業は既に5月中旬での営業再開に向け、GW明けの7日には取引先との折衝を始めるはずだ。

 各社の4月度の既存店売上高は、三越伊勢丹が前年同月比90.2%減、髙島屋が同75.8%減、大丸松坂屋が同76.3%減、そごう西武が同71.4%減、阪急阪神が同80.5%減だった。

 各社が「ほぼ」全ての店舗を休業したと記したが、前号本紙号外でも述べた様に、食品を含めた全面休業に踏み切った三越伊勢丹が前年の1割を切る売上なのに対し、食品フロアの営業を継続した髙島屋と大丸松坂屋が25%前後、そごう西武はかろうじて3割近い売上を確保している。

 「1割と3割で大きな違いはなかろう」と言う声も聞こえて来る。「デパートはその顧客だけでなく、従業員、取引先の安全を最優先しなければならない」という本紙のスタンスから、中途半端な「自粛営業」を続けているデパートに対して警鐘を鳴らしたい。例えば、日本一の百貨店集積地である新宿で、デパ地下が無ければ食料品の調達が不可能という客は本当に存在するのか、よく考えてもらいたい。

 業界紙の端くれとして、本紙は「デパートは不要不急業種の代表である」と再度、百貨店トップへの自覚を促したい

アフターコロナとインバウンド需要の回復

 もちろん、このコロナ禍が終息すれば、小売業全体の売上高もある程度は回復するだろう。但し百貨店、特に都心の主要大型デパート各店は、売上高に占めるインバウンド比率が高かった反動から、地方百貨店を含めた他の施設と比べて、最もダメージが大きいと言える。これはコロナ終息が即、インバウンド回復には直結しないからだ。流通業界以上に売上マイナスの大きいホテル、観光業界との共同歩調が、復活の鍵となるだろう。

 それでは地方百貨店がこの凋落傾向から逃れられるかと言えば、そんなことはなく、コロナ禍による「デパートの終焉」は都心、地方を問わず一気に早まりそうだ。

 地方百貨店の窮状は、インバウンドで文字通り「一息ついた」都心大手デパートと違い、バブル崩壊からリーマンショックを経て10年以上もマイナスのスパイラルを続けているのだから。

 前号でも触れた百貨店消滅都市や、デパートがなくなる県は今後急速に増える可能性がある。

 2020年1月末の山形の大沼デパートの破綻=閉店により、結果として山形県が「百貨店のない県第一号」になってしまったことは本紙既報の通りだ。

 新型コロナウイルスの流行による営業自粛がなかったとしても、今後、地方の有力デパートは様々な要因により、徐々に減っていくだろうと考えられていた。だが、今回のコロナ禍での売上不振により、そのスピードはさらに加速することとなる。

地方百貨店が衰退した、都心とは異なる理由

 一口に「地方百貨店」と言っても、三越伊勢丹やそごう西武などの、大手デパートの地方支店と、地元企業の運営による独立系百貨店に分けられる。ご存知のように、札幌の丸井今井や福岡の岩田屋は元々地元資本であったものが、三越伊勢丹の傘下に入ったものであり、独立系と地方支店のハイブリットタイプとでも言えば良いであろうか。両社は三越伊勢丹の子会社となる道を選んだ、いや、生き残りのために、選ばざるを得なかったのだ。

 一方、徳島そごうや大津西武は、そごう西武という大手百貨店の地方支店だ。もちろんそごう西武も既にセブン&アイ・ホールディングスの子会社であり、厳しい言い方をすれば、大手ではあるが有力な百貨店として生存競争に勝ち残った訳ではない。流通グループ間の再編の波に、否応なく飲み込まれた格好だ。
※奇しくも徳島そごうと大津西武は2020年8月の閉店が決定している。本来であれば徳島県こそが百貨店のない県第一号となる予定であった。

 不名誉な第一号は本紙4月15日号で詳細に報じたように、ダークホースの山形県「大沼」となった。大沼は、岡山が本店の天満屋や姫路のヤマトヤシキと同じ地元独立系百貨店である。

二つの競合要因

1.他業種との競合

 全国的なデフレ(所得=消費の伸び悩み)を背景に地方にも郊外型の大型ショッピングセンターが進出。交通手段は車が主流の地方では、駐車場の広い商業施設やアウトレットモールに客が流出。

2.デパート間競合

 都心部の大型百貨店が海外ブランドの集積を強め、鉄道や道路といった交通網の発達により、地方から都心や近隣大都市への流出客が増えた。結果、品揃えで見劣りする地方百貨店は売上が大幅に減少した。

 例えば、前述した山形市は新幹線と高速道路で交通網が結ばれたことにより、仙台市に客を取られ、結果として大沼デパートの破綻に繋がった。(もちろん原因はそれだけではないが・・・)

 また、徳島そごうの衰退の原因は、四国と関西が瀬戸大橋と明石海峡大橋で繋がり、神戸や大阪への既存顧客流出が大きいとされる。

 一方で東京、名古屋、大阪の都心大手百貨店は大型改装=増床を繰り返し、ブランドラインナップを拡充し、その求心力を増大している。

 低価格を求める客は近隣ショッピングセンターに奪われ、高価格帯は都心の大手百貨店に取られる地方百貨店という構図だ。その凋落傾向に対し、誰も有効な対策を見いだせないままだ。

 山形や徳島のように、県内百貨店が消滅するという事態を受けて、各地方自治体も存続支援や後継店舗の誘致に乗り出した。しかし、成果のあった事例は聞こえて来ない。

 地方百貨店の衰退は、もちろん「競合負け」だけに起因する訳ではない。
本紙は引き続き、地方でコロナ後の生き残りを模索する、地元デパートを追いかける。

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