デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年08月01日号-51
2年半でコロナが変えた日本(と百貨店)
先ずは、久々だが新型コロナのニュースから始めよう。ちょっと無視できない状況だ。
7月21日現在
全国の新規感染者18万6246人…東京は初の3万人超えとなった。この週末までに全国では20万人越えが予測され、東京は4万人越え必至か。
東京都内で新たに3万1878人の新型コロナウイルスへの感染が確認された。3万人を上回ったのは初。これまで最多だった今年2月2日の2万1562人を1万人以上、上回り、10日連続で1万人を超えた。自宅療養者は10万1548人となり、初めて10万人を超えた。
全国の新規感染者は18万6246人で、前日から3万人以上、上回り、2日連続で過去最多を記録した。これまで今年2月5日の10万4163人が最多だったが、これを約82800人上回った。第7波の急拡大はさらに続く可能性がある。35の都府県で過去最多を記録。
今年に入ってからの第6 波は、2 月5 日の10万4163人がピークで、初めて1日の感染者が10万人を超えた。そこから減少傾向に転じ、6月には1万人を切ることもあったが、7月に入って急上昇。累計の感染者数は今月14日には既に1千万人を超えている。
国内感染最多
①全国で1日に感染した人の合計が初めて18万人を超え、今まで10万人超で最多記録であった今年の2月5日を上回った。識者の予測では、今後20万人越えは確実とみられる。
②感染の波は、今年始めの第6波に続き、既に第7波と呼ばれるフェーズに入った。
③記述にはないが、変異ウイルス「オミクロン株」の新種BA.5が主流となり、今までのBA.2株を上回る感染力を持つ。このため、特にワクチン接種が進んでいない若年層に、感染が急拡大している。
④累計の感染者数は7月14日に1千万人を超え、今月末までに日本の人口の1割に当たる、1248万人を突破する見込みだ。
※死亡者は3万人超。
①については、昨年の同時期、オリンピック直前の状況をおさらいしておこう。
2021年7月23日に開会式を迎えたTOKYO2020大会であるが、新型コロナの新規感染者数が7月20日以降、東京で連比1000人を超え、前日の22日には既に2000人に迫る勢いとなった。
昨年の東京の感染者数は、多く見積もっても今の10分の1に満たないのだ。逆に言えば、今、去年の10倍以上の感染者数となった。しかし、政府もマスコミも国民も、誰も驚かず「静観」している。
去年が騒ぎ過ぎなのか、今、急に「喉元過ぎれば熱さを忘れる」なのか。筆者は決して「もっと驚いて、皆騒ぐべき」と言っているわけではない。
只、去年との余りの落差を「いぶかしく」思っているだけだ。「感染者は去年の10倍」とは誰も言わない、もしかしたら「タブー」になっているのだろうか。不思議だ。
そして④だ。2020年4月7日の最初に緊急事態宣言が発出されてから2年半経たないうちに、日本人のほぼ1割が感染したコトになる。10人に1人というコトだ。もちろん、1人で何度も感染した方もおられるので、単純な比率計算ではないが・・・
これは、学校や職場、家族( 親戚) 、ご近所など、自分の身近にいる「名前を知っている」誰かが感染したことがある、という事態だ。もちろん、自身の感染も含めて。
コロナ感染は、かつてないレベルの「高確率」なのだ。そして残念ながらこれは、この2年半で終わったわけではない。
1年で10倍に
因みに、誰も記憶にないと思うが、100万人を突破したのは昨年の8月6日だ。
「国内の累計感染者数100万人超 急激な感染拡大続く」(2021年8月6日)
国内でこれまでに新型コロナウイルスの感染が確認された人が6日、100万人を超えた。第5波により、先月29日以降はほぼ連日、感染者が1万人を超え、感染拡大のペースが急激に上がっていた。
国内で新型コロナウイルスの感染が確認された人の数は、国内での感染が始まってから1年半余りで、100万人を超えた。
つまり1年半かけて100万人に増加したコロナは、1000万人を突破するのに、そこから1年かからなかった、というコトだ。今年に入ってからの第6波、そして今回の第7波の勢いの凄まじさを示している。そして、不謹慎な見方をすれば、1000万人が感染して死亡者は3万人なので、感染者の0・3%だ。国民はこの死者数を「少ない」と感じているのだろうか。
〈比較参考にならないデータ〉
ロシアは4月、約2万3000人のウクライナ兵を殺害したと主張。英政府は4 月、約1万5000人のロシア兵が死亡したと発表。ウクライナは6月時点で、ロシア側の死者数を約3万5000人と主張している。
2年半超のコロナ禍
前述したが、さすがにコロナ禍も2年以上になると、「感染者数」ではもはや誰も驚かない。
※死者数や致死率では、元々驚くべき要素がなかった訳だし。
感染した人以外は「経済を回さないと」と異口同音に唱え、元首相の葬儀や、宗教と政治の繋がりといったニュースがクローズアップされ。最速で終わったはずの梅雨の再来、というか降雨被害や土砂災害のほうが、身近に迫る「危険」として意識されている。
今の日本では、感染急増にもかかわらず、コロナの話題が「ワンオブゼム」になっている。ある意味「日常」が戻りつつあるというコトなのだ、とも思う。
我々デパート業界に身を置く人間としては、円安や物価高騰といった金や物にまつわるニュースへの関心は高いものの、それらの原因とされる、「ロシアのウクライナ侵攻」や「アメリカの金利上昇」でさえ、遠い世界の話でしかない。皮肉なことに。
感染者数の急増にもかかわらず、コロナは自分の生活を脅かす「リスク」ではなく「他人事」になりつつあるのだろうか。誤解を恐れずに言えば、それはウクライナの様に我々の意識の外に追いやられていくのだ。なにしろ我々は、目の前の生活が一番の大事だからだ。
続く百貨店の閉店
くどくど書いてきたが、本コラム「デパートのルネッサンスはどこにある」で去年、一昨年の夏に「最優先」に言及していたのは、コロナ禍であった。百貨店にとって、大きな売上マイナスの主要因であり、地方独立系の(従って孤立無援の) デパートにとっては、閉店圧力を高める最大の要因となっていたからだ。
前号でもお伝えした様に、百貨店の閉店ラッシュはこれからも続いてい第51回2年半でコロナが変えた日本(と百貨店)く。いっこうに終息も収束もしないコロナだけではなく、そこにはいろいろな要因が絡まっている。
久々にコロナの話題でスタートした本欄ではあるが、再び非常事態宣言が発出されない限り、コロナの話題は敢えて考えない様にしたいと思っている。第8波や10波が来ようと、百貨店の客数に影響がなければ、他に考えなくてはいけないことが、たくさんあるからだ。
最近、筆者が百貨店を訪れたところ「コロナ前に戻った」とは言えないものの、客足は悪くない、という印象だ。しかし、なくなったものもある。それはインバウンド需要である。外国人観光客はゼロではないが、往時のレベルには程遠い。
インバウンドの暗暗
前号で「人口50万人の壁」を検証するため、栃木県宇都宮市の「百貨店興亡史」を記した。大型商業施設を含め、百貨店は東武だけになってしまった、という結論で一旦検証を終えた。※もちろん車社会である宇都宮市で、ロードサイドに活路を見出した「福田屋=FKD」の生き残り戦略も、進化論になぞらえて併記した。
この時にも言及したが、大都市以外のデパートにとって「インバウンド需要」は全く関係のない「あだ花」なのだ。「インバウンドの消失」はハイブランド売上の比率が高い、都心百貨店だけの問題なのだ。地方、郊外で苦戦している百貨店にとっては「インバウンドの恩恵」など、コロナ前から無かった訳だから。
その伝で言えば、少しでもインバウンドの恩恵に与った都心百貨店が、2019年のコロナ前水準に売上を戻すことは、地方郊外以上に難しい、ということだ。だからこそ、皆「右に倣え」で富裕層シフト注力しているのだ。
だからと言ってこの後、地方百貨店が都心の大手百貨店よりも繁盛し、閉店リスクが少なくなるという「甘い話」ではない。
コロナによる売上マイナスの「谷」が低かったからと言って、コロナ後の「山」が高くなる訳ではないのだ。そこに都心と地方の「明暗」は存在しない。そして、デパートのルネッサンスは遠い。
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