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デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年07月01日号-49

デパートを取り巻く 最近のトピックス

 遂に、と言うか、やっと、コロナ明けの光明が見え始めた。都心の老舗百貨店の土日の様子を見ていると、3年前の2019年に戻ったかの様な盛況ぶりだ。但し、地域差も含め、昨今の百貨店業界は難題山積だ。

 2022年上半期の百貨店を取り巻くニュースをいくつかピックアップしてみた。

①岡山の天満屋 – ロフトのFC店を開設

 総合雑貨店「ロフト」が、岡山天満屋の本店5階に移転した。若い新規客の来店や既存顧客の利用が増えている、という。 岡山市の天満屋は、「ロフト」など、自らFC化した店舗を広げている。百貨店本体だけでなく、エリア全体の魅力を高めることと、自社運営にすることによって地域客のニーズを把握することなどが狙い。更に、顧客・消費者との接点を広げるために、自社ECやアプリの強化も同時進行している。

 ロフトのFC店は、4月28日に天満屋ハピータウン岡南店1階(売場面積は約160坪)に開設。ロフトとしては7店目のFC店舗だという。隣接する岡山ロッツの閉店に伴い、3月2日に岡山本店5階(約200坪)に移転開設したものを含め、津山、福山、福山ポートプラザ店、米子しんまち天満屋の同社百貨店内のほか、高松・丸亀町グリーンにも出店している。

 百貨店店舗へのロフト開設はほぼ完了したことから、今後は百貨店外でFC店舗を増やしたい意向だ。

 他に福山店、米子しんまち天満屋に「好日山荘」、空港やバスステーション、病院といった施設内で「セブンイレブン」を運営している。自社のノウハウにもなり、地域ニーズを実現するためには、FCを広げた方が良い、という考えだ。

自社ECやアプリも強化

 天満屋が、顧客が来店に至るまでの接点として重視しているのがデジタル化である。その一つとして強化しているのが自社ECであり、2020年度売上高は前年比約50%増、21年度は取扱いのアイテム数を増やし、さらに10%伸ばした。

 コロナ禍真っただ中という特殊要因があったとはいえ、顧客の来店減を「指をくわえて見ていた」訳ではないという証左である。22年度も3、4月は約50%増と伸びが拡大している。税込み5000円以上の購入で、送料無料のキャンペーンをしており、その効果が大きいとみている。

 ECと電話注文を含めた店舗受け取りサービスも、百貨店だけでなく、傘下の天満屋ストアの一部店舗でも開始した。今後もECの品揃えを順次広げていく方針だ。

 また、「天満屋アプリ」の会員数増とコンテンツの魅力アップに力を入れていく。この他、デジタル化の一環で、今春の美術画廊の改装を機に、ほとんどの展示・販売商品を、アーカイブを含め、VR(仮想現実)で見られる「美術画廊VRギャラリー」をホームページに開設。VRがきっかけとなり、販売につながった例もあった、という。テナント出店が難しい、地方独立系百貨店は、余剰人員の人材活用も含めた、FCの「受け手」を自社で行うという手法を取り入れ、活路を見出そうとしているのだ。 

沖縄ではサンエーも

 百貨店ではないが、自社でFC対応をすることで、魅力あるテナントを引き込むという手法は沖縄でも見られる。

 地元で商業施設を運営するサンエーは、パルコと組んで沖縄に「サンエー浦添PARCO CITY」を開業させた時に同様の対応をしている。出店させたい大型テナントが、沖縄が遠隔地である事からくる、「物流や人材」の問題を解決するために、サンエーがFCを受けるというパターンが多いのだ。

 ライバル施設であり、先行出店している、イオンモール沖縄ライカムとの差別化MDの獲得が、大命題であったことも伺える。沖縄の場合は特に「物流コスト」というハードルの解消が事業継続の生命線だと言える。

②ビックロ消滅 – ユニクロが6月に閉店

 JR新宿駅前の家電小売大手・ビックカメラとアパレル大手・ユニクロによる複合施設「ビックロ」に出店している「ビックロユニクロ新宿東口店」が2022年6月19日で閉店した。
ユニクロを運営するファーストリテイリングはニュースメディアの取材に対し、賃貸契約満了のタイミングで閉店を決めたと説明している。ユニクロ閉店後の施設名は「ビックカメラ新宿東口店」となる。

 ネット上では「いつも利用していた」とか「便利だったのに」と惜しむ声が相次いでいる、という。確かに便利な場所ではあったのだろう。 

GUは営業を継続

 ビックロはファッションビル「新宿三越アルコット」の跡地で2012年9月に開業。「ビックロビックカメラ新宿東口店」と「ビックロユニクロ新宿東口店」を中心に構成され、ユニクロは同店を「グローバル繁盛店」と位置付けていた。開業当時は異業種のコラボ店舗として大きな話題を呼んだ。

 ファーストリテイリングの広報担当者は2022年5月20日、ユニクロの閉店理由について「新宿駅周辺の再開発が進み、お客様の導線に変化が予想される」とし、賃貸契約満了のタイミングで閉店を決めたと説明した。ビックロ内に出店している同じファーストリテイリング傘下のブランド「GU」は営業を継続するとした。

 「ビックロユニクロ新宿東口店」の閉店後は近隣の新宿西口店、新宿高島屋店を利用してほしいと呼びかけているが、22年秋には新宿エリアに新宿三丁目店・新宿フラッグス店の2店舗を出店予定だとしている。新宿エリアの再編は着々と進んでいる様だ。

 また、ビックカメラの広報担当者は同日の取材に、ユニクロ閉店後もビックカメラの営業を継続すると説明。ユニクロ閉店後の施設名は「ビックカメラ新宿東口店」となり、「ビックロ」の名前は消滅する。
もちろん消滅しても誰も困らない。異業種コラボの「実験」がどのような成果があったのかも、もはや定かではない。何か成果があったのであれば、ユニクロもビックカメラも、声高に叫んだはずだからだ。

③小田急百貨店 – 新宿店本館の最終営業日は10月2日

 小田急百貨店は5月18日、新宿店本館の最終営業日が10月2日に決定したと発表した。

■新宿店本館概要
開業:1966年9月新館として一部開店し1967年11月に本館として全面開業
営業面積   約4万7560㎡
営業施設   地上14階地下2階

先ずは小田急の告知POPの文言を確認しよう。

『小田急百貨店新宿店は閉店しません。』

 「いよいよ新宿駅西口再開発が始まります。それに伴い小田急百貨店は、現在の新宿店本館での営業を終了し、10月からはお隣の新宿西口ハルクでリニューアルハルクでして営業します。秋になったらハルクでお会いしましょう。」

 新宿店は、本館の営業終了後に、新宿西口ハルクを改装して、営業を継続する。

 現状の同社営業区画に加え、7階や1階の路面店エリアの一部にも売場を広げ「食品」「化粧品」「インターナショナルブティック」を中心に服飾雑貨やゴルフウエアなどで構成する。

 お中元・お歳暮やバレンタインギフトなどを提案する催事スペース、お得意様サロンなどのサービス施設も開設する。ショップなどの詳細は9月頃に発表する予定だ。また、5月25日からは、「新宿店本館↓ハルクお引っ越し前の売りつくし!」と題した売出しや特別企画を開催している。

 筆者が要約すると、小田急百貨店本館が一時避難する「小田急ハルク」は、現在小田急が運営するB1、1、2階のスポーツゾーンを大幅に縮小して、百貨店の「虎の子」であるブランドブティックや化粧品、宝飾貴金属、靴、バッグ、衣料品を押し込む算段である。

 加えて、デパート上層階の必須アイテムである商品券や学生服、サービス等も既存7階のビューティーゾーンを削って再配置している。

 無難と言うか、ある意味納得のリニューアルとなっている。面白味はないものの。
以下詳細。

《新宿西口ハルクのフロアプラン》
※太文字は本館から移設
屋上ゴルフスクール
8階レストラン
7階ビューティー&サービス → 宝飾メガネ、ギフトサロン、催事場他
3〜6階ビックカメラ
2階フィットネス → 身回品、服飾雑貨
1 階ゴルフ用品 → ウォッチ&アクセサリー
(ブランド衣料等)
B1アウトドア&トラベル → 化粧品
B2食品
B3食堂酒場ハルチカ

 新宿店本館跡地は、小田急電鉄が東京メトロと共同して推進する、国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトである新宿駅西口地区開発計画の進展に伴い、リニューアルする。
詳細は以下。

 新宿グランドターミナルの一体的な再編を象徴する大規模開発として、高層部にはハイグレードなオフィス機能を集積。中低層部には新たな顧客体験を提供する商業機能を備える。ビル本体は地上48階、高さ約260mの超高層ビルとなり、2022年10月以降に着工、2029年度の完成を目指している。

④渋谷マルイ – 8月で休業2026年開業へ

 丸井グループは5月27日、運営する商業施設「渋谷マルイ」を8月28日で休業すると発表した。ビル建て替えのためで、跡地には地下2階、地上9階の木造建て商業施設を建設、2026年に開業予定という。

 現在の渋谷マルイは1971年開業。ファッショントレンドの発信基地となったほか、近年はアニメイベントなども手がけてきたが、正直、現状はテナントが歯抜け状態なのも事実だ。

木造の商業施設

 構造の約60%に木材を使用した「本格的木造商業施設」を計画。同社によると、従来の鉄骨造で建て替えた場合と比較し、約2000トンの二酸化炭素排出量を削減できる見込み。

 建物のデザインは日本の伝統的な建築技術に着目し、天然素材や太陽光の活用など、自然由来のエネルギーを効率的に利用する。開店後も再生可能エネルギー由来の電力を使用するなど、最高水準の持続可能技術を採用し、よりサステナブルな施設を目指す、としている。

環境負荷を軽減

 新店は、地下2〜地上9階を予定。売場面積は2800平方メートル。新店舗の詳細は決定次第、発表するとしている。鉄骨造りと比較し、約2千トンの二酸化炭素排出量が削減できる見込み。開業後は再生可能エネルギー由来の電力を使うなど、環境負荷の軽減に取り組む。出店テナントも、環境に優しい取り組みを行う事業者を想定している。

 2021年8月末に池袋店を閉店した丸井は、正直なところ、売場構成=テナント集めに苦慮していた様に見受けられる。それは複数の旗艦店が集積する新宿や渋谷エリアも例外ではない。※逆に赤羽店や溝の口のファミリー業態の方が堅調の様だ。新宿、渋谷、池袋はライバル店も多く、丸井が「駅のそば」を謳っても、百貨店やJRの駅ビル系には立地で勝てないからだ。

脱ファッションビル

 今はエポスカードになったが、「○一○一の赤いカード」はクレジット決裁(分割払い)により、若年層を取り込み、DCブランド全盛期には109やパルコと、渋谷ファッションの「覇権」を争っていたのが懐かしい。

 四半世紀以上前の話をされてもピンと来ない購読者もおられるかも知れないが、デパートだけでなくファッションビル全盛の時代があったのだ。

 現在の丸井は、ファッションビルビジネスでは第一線を退いたものの、金融等で企業業績は堅調とも聞く。

 但し、要であるエポスカードを巡っては、中々穏やかとは言えない「訴訟騒ぎ」も起こっている。
※丸井グループの元常務執行役員が、エポスカードを巡るビジネスモデル特許の発明対価の支払いを古巣に求めた訴訟の第1回期日が5月24日、東京地方裁判所で開かれた。元役員側は、特許が会社側に約600億円の利益をもたらした、などとして、発明の対価の一部として1 億円を請求している。会社側は答弁書を提出し、争う姿勢とみられる。

脱ファッション

 いつまでたってもファッション第一主義から脱せない、ルミネやパルコよりも、ビジネスの新しい方向性を模索している丸井の方が「潔い」とも言える。しかし、脱ファッション=成功という、単純な業界ではない。百貨店も含めた小売業界では、衣料品比率は縮小し続けている。遅かれ早かれ、ファッションは、アイテムとして「ワンオブゼム」に近付いていくのだとは思うが・・・ 

 コロナ収束に、円安という追い風が加わり、インバウンドの再来を待ちわびている都心のデパートは良いだろう。しかし、地方、郊外の百貨店の淘汰に歯止めをかける「神風」は期待出来そうもない。更に模索は続く。

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