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デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年03月15日号-44後編

西武池袋本店

コロナと共に過ごした2 年間(総括)

百貨店は元々「高コスト」業種

 そこで気になるのは、どうやって回復基調に向かったかという問題だ。何か特効薬を見つけたのであろうか。三越伊勢丹は人件費の削減と、広告宣伝費のデジタル化などにより、大幅な経費削減に成功したのだ、という。特に人件費の圧縮は、当然痛みの伴うものであったが、それにより2019年度は3180億円あった販管費を、2020年度時点で324億円削減し2739億円にまで圧縮した。

 さらに、オンライン事業の成長がそれを支えた。三越伊勢丹の昨年度のオンライン事業の売上高は315億円を超え、今後は同事業において売上高500億円を目指す、としている。もちろんこの先の収益の柱の1 つに成長することも期待されている。当然同業他社も同様の戦略をとっているが、こと「ブランド力」においては、三越伊勢丹には一日の長がある。

 同社はその他にも、ビジネスモデルの刷新に向け2020年に三越日本橋店新館6〜7階にオープンさせたビックカメラの売上は、好調に推移していると聞く。長引くステイホームによる巣籠り需要の拡大を受け、家電業界は全体として活況であったが、家主である百貨店もその恩恵を授かったのだ。ビックに限らず、ノジマなども百貨店シフトを強化している。ひと昔前は見向きもされなかった都心ターミナル駅前の一等地、その老舗百貨店に三顧の礼で迎えられる時代が到来したのだ。家電量販店にとっては「我が世の春」だ、と言ったら言い過ぎだろうか。当然テナントとして迎えた家電フロアには、百貨店の社員は一人もおらず、人件費の節約と相まって、デパートにとっては2度美味しいカップリングとなる。

富裕層シフトが奏功

 三越伊勢丹の決算資料によれば、日本は総人口が減少する中でも、今後年収1000万円超の人口は増加するという。トップが期首に掲げた目標である「富裕層シフトの戦略」は成功している、という訳だ。実際に高額品はコロナ禍にかかわらず好調と聞いている。

 他の百貨店についても、販管費を抑え、オンライン事業の育成やライブコマースの売上を伸ばすなどして、各社様々な施策に取り組んでいるのは本欄で何度もとりあげている。

 今後、積み上がったリベンジ消費がより活発化すれば、回復の兆しが期待でき、百貨店の未来は意外と明るい、とも言える。

 但しこれは大手4社の話であり、先日セブン&アイHDが売却を決定したそごう・西武や、地方の独立系百貨店については、「富裕層シフト」の果実を直ぐには手に入れられない。

 デパート全体のルネッサンスへの道のりは決して平坦ではない、ということだ。

復活のキーワードは「従来型からの脱却」

 耳タコの話かもしれないが、かつて、百貨店は時代のイノベーター= 変革者だった。江戸時代の呉服屋は見本を持って得意先を回り、商品を得意先に持ち込む形で売上を立てていた。当時の支払はお盆と年末の2回という売掛( うりかけ) 方式であった。そのため回収リスクや金利分を商品価格に反映しており、消費者に届く値段は必然的に高くなってしまった。そこで、越後屋(現在の三越)が「店前売り」「現金掛値なし」のビジネスモデルを導入したのが百貨店の始まりと言われている。その結果、よい商品が手頃な価格で消費者の手に届くようになり、大衆消費のデパート文化の花が開いた。

 良く言われる様に、百貨店は時代の最先端を走って来たのだ。只、どんなに優れたビジネスモデルにも、いつかは廃れる時が必ず来る。リモデルやイノベーションは百貨店にかぎらず必須なのだ。今後、百貨店が百貨店のステレオタイプなイメージを打破することができなければ、次のウィルスによって小売= 消費の世界から淘汰されてしまうだろう。逆に、今回のコロナ禍を生き残ることが出来れば、「100年安心」の、盤石な体勢を作ることができるのかもしれない。

 何度も繰り返しになり恐縮だが、それは都心の大手デパートだけではない。地方を含めた「淘汰」は続いていくのだから。

ステークスホルダーとは誰なのか?

 淘汰(とうた)というコトバを気軽に使っているが、意味を記しておく。「ある生物集団において、不適当な個体が排除され、特定の形質をもつ生存力の大きい適者が生残って繁殖する現象、またはそのような操作をさす。」適者生存ともいう様だ。

 では、適者と不適者を選別するのは誰なのか?前号のセブン&アイのコラムでも触れたが、筆者は、それは投資家( 株主)ではなく、消費者( 顧客)であるべきだ。という趣旨を述べた。

 もちろん、その気持ちは今も変わっていない。ステークスホルダーというと、端的には利害関係者なのだが、我々はなぜか「株主」をメインに考えがちだ。ここは改めて行きたいと思う。

閑話休題

 2/15号の本欄で、そごう・西武の売却について記した。今時点で、どこかの外資系ファンドの名前等は上がってはいない様だ。だが、セブン&アイホールディングとしてのコンビニ( 本業) 回帰については、揺るがないだろう。

 ダイエーとの量販店戦争に勝利し、日本のコンビニエンスストアの祖であり、かつ頂点に君臨するセブン&アイが、遂に「お荷物」を捨てたのだ。セブンイレブンはコンビニ業界では無敵でも、創業のイトーヨーカ堂は、ライバルのイオングループに凌駕されつつある様に見える。小売業の「継続」はそう簡単ではないという事だろう。

 2/15号では、セブン&アイに対し「物言う株主= 投資家の言いなりで、顧客を顧みない」として叱責したが、企業としての「選択と集中」は生き残り策として間違ってはいない。

 もし、このままコロナ禍がひと段落し、400兆円の蓄財がリベンジ消費に廻り、百貨店を含む小売業が活況を呈することがあれば、再生したそごう・西武( またはそれに代わるショッピングセンター) が「デパートのルネッサンス」の一翼を担う日が来るかもしれない。もちろんその日まで筆者の余命があれば、の話だが。

連載 デパートのルネッサンスはどこにある?

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