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デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年07月15日号

東京に4 度目の緊急事態宣言発出 五輪「無観客」に

85%の期間が緊急事態宣言とまん延防止等重点措置

 前号本欄で『緊急事態宣言再延長 翻弄される百貨店』で、デパートの半年間にわたる苦境を伝えたが、半月と立たないうちに新たな緊急事態宣言が発出されてしまった。

 正直4度目の緊急事態宣言を、オリンピック開幕直前のこのタイミングで発出するとは思わなかった。コロナ対応を「後手後手」と批判され続けた菅首相が、「先手先手」と言いたいがため、と、つい深読みしたくなる様な「即決」パフォーマンスだ。

 デパートの再生と復活をテーマにしている本稿だが、コロナ禍一色のこの1年を、緊急事態宣言を含めた、「行政の対応」を抜きに語るのは、前号同様もはや不可能だ。

 特に今年に入ってから3度目となる今回の緊急事態宣言については、宣言の連発と、延長に次ぐ延長という対応もあり、益々その「効果」が疑問視されている。それは非日常がまったく日常化してしまったからだ。

 本紙前号( 7 月1 日号) の本欄で、1月から6月までで、緊急事態宣言の期間は、半年間の71・8%になると述べた。これはまん延防止等重点措置の期間を勘定に入れないで、である。今回の8月22日までの再発出を受けて、再び計算してみよう。
※今回は厳しく「まん防」の期間も含めて。1月から8月の8ヶ月は243日、宣言も重点措置も出ていない日は37日、差し引き206日間が、我々が「生活を制限されていた」期間だ。シェアにして何と84.8%。

 8割以上の期間を、酒類を提供するな、土日は営業するな、閉店時間を早めろ、と様々に営業を規制され、挙句の果てに「贅沢品は敵だ」という戦時下の様なレッテル貼りで、スケープゴートになって来たデパート達。

 もちろん、お役人の査察や告発を受けた飲食店も、同様に苦汁を飲まされ続けてきた。皆、「禁酒法」や「贅沢狩り」の中で、何とか商売を続けている。

 苦々しい現状ではあるが、本紙も業界紙のハシクレとして、このニュースを粛々と伝えて行きたい。真の意味でのデパートのルネッサンスは、脱コロナからリスタートすると信じて。

7月7日( 政府)

 政府は新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」を適用している東京都について、4度目の緊急事態宣言を発令する方針を固めた。沖縄県の緊急事態宣言、首都圏3県と大阪府の重点措置は継続する。
 期間はいずれも7月12日から8月22日までとなり、結果として東京五輪の全日程が、緊急事態宣言下で開催されるという異例の事態となった。

 政府が8月22日までを期限としたのは、お盆期間までの人流を抑制したい狙いがあるからだ。

 菅首相は8月末まで、ワクチン接種一本鎗を継続し、オリンピックを無事に開催し、あわよくば秋の衆院選を、何とか乗り切りたいと考えているのだろう。7月8日( 東京都)酒類提供の飲食店に休業要請東京都は、8日夜、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、7月12日から8月22日までの4回目となる緊急事態宣言のもとで実施する措置を決定した。それによると、酒やカラオケ設備を提供する飲食店などに対しては休業を要請。提供しない場合は午後8時までの時短営業を要請する。

 都は、6月21日から、利用を1グループ2人まで、滞在時間を90分までなどの制限を設けて酒の提供を認めていたが、わずか3週間で再び提供の停止を求めることになった。

 一方、床面積の合計が1000平方メートルを超える、百貨店などの大規模施設に対して、今回は休業要請を行わず、引き続き時短営業の要請に止めた。時間は、デパートやゲームセンターなど、客が自由に出入りできる施設は午後8時まで、劇場や展示場などの施設がイベントを開催する場合や、映画館は午後9時までとした。このほか、イベントについては、開催時間を午後9時までとしたうえで、人数の上限は5000人で、定員の50%以内とする。

 さらに、都民に対しては、日中も含めた不要不急の外出と移動を自粛し、特に帰省や旅行などの都道府県をまたぐ移動は、極力控えるよう求めた。

7月9日( 百貨店)

デパート各社の対応

 以下に、東京都に緊急事態宣言が出されることを受けたデパート各社の対応を記す。

 三越伊勢丹、松屋、東急百貨店は、都内の店舗については現在、午後8時までとしている営業時間については変更せず、宣言が出される週明け12日(月曜) から、レストランなどでの酒の提供は中止する。

 高島屋、そごう・西武、京王百貨店、東武百貨店、小田急百貨店は、具体的な対応は検討中としているが、酒の提供の中止を含めて東京都の要請に沿って対応する方針だ。

 デパート新聞らしい記事はここだけだ。申し訳ない。

 「もう、うんざり」という世間の声も、政権中枢には響いていない様だ。だが、秋に迫った衆院選の前哨戦と位置づけられた都議選は、政権与党にとって安閑としていられる結果とは言い難い。一週間ほど日付を遡ってみよう。

都議会議員選挙と安倍前首相の反日発言

7月4日( 東京)

 東京都議会議員選挙(定数127)が投開票された。前回大敗した自民党は都議会第1党に返り咲いたものの伸び悩み、公明党と合わせて56議席と過半数である64議席には届かなかった。

 小池知事が特別顧問を務め、前回都議会第1党であった地域政党「都民ファーストの会」は議席を減らし、自民と2議席という僅差で第2党となった。

 立憲民主党と共産党は現有議席を上回った。党派別当選者は自民33人、公明23人、都民ファ31人、立民15人、共産19人など。都議選の投票率は42.39%で、前回(51.28%)を大きく下回った。

 自民は当初、少なくとも40議席は行ける、と楽観的な予想をしていたが麻生財務相が小池知事の過労入院を「自分が蒔いた種」と揶揄した結果、手にした「果実」がこれだ。

 衆院選の前哨戦として注目されていたが、争点となったコロナ対策と、オリパラ開催の是非に沿った結果とは言える。端的に言うと、誰も「勝たなかった」選挙である。争点がいろいろとあった割には投票率が低く、「都民の怠慢」をあげつらうネット民のコメントが目立った。例え結果として「消去法」であっても投票はすべき、という外野の声が耳に入らないほど、「何も変わらない」という厭世観が、この首都東京に蔓延していたのかもしれない。

 もちろん、有権者には投票しないという選択肢(自由?権利?)も与えられているのだが。

 そして、今度は安倍前総理の発言が物議を醸している。

7月3日(Yahoo!ニュース)

「五輪反対は反日」

 7月4日投開票の都議選に向け、応援演説に駆け回った安倍前首相。東京では新型コロナウイルスの感染が再拡大しつつあり、五輪開催に不安を抱く有権者も多い中、前回1964年の東京五輪に触れて、「あの時の感動、日本選手の活躍、試合を通して未来に見た夢や希望、勇気……」などと情緒的なフレーズを繰り返す場面もあった。

 後継の菅首相も党首討論で同じ様な「昭和のオリンピックは良かった」発言をしている。悩みなき高度経済成長時代を懐かしむ姿勢が、新旧宰相に共通している様だ。

 2代続けて首相が昭和好きとは知らなかった。令和の現代に山積する課題から、一瞬でも目を逸らしたいのだろうか。

 安倍前総理は、発売中の「月刊Hanada」8月号での桜井よしこ氏との対談でも、五輪について語っている。その開催の意義について、安倍氏はこう説明する。
※以下原文まま
《「共有する」、つまり国民が同じ想い出を作ることはとても大切なんです。同じ感動をしたり、同じ体験をしていることは、自分たちがアイデンティティに向き合ったり、日本人としての誇りを形成していくうえでも欠かすことのできない大変重要な要素です。感動を共有することは、日本人同士の絆を確かめ合うことになる。》
 日本人のアイデンティティとか、誇りを形成とか、国粋主義的な話ばかりだ。安倍氏自身が招致時に「復興五輪」と訴えていたのは、お得意の「ウソ」だったのか。
※スーパーマリオの扮装をして、TOKYO2020のアピールをした5年前のリオ五輪の閉会式を思い出したのは、筆者だけではあるまい。

 しかも、コロナ禍での五輪開催を懸念や反対する声があることについて《極めて政治的な意図を感じざるを得ませんね。彼らは、日本でオリンピックが成功することに不快感を持っているのではないか。共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています》

 共産党= 反日という言い方、考え方自体が既にれっきとした「ネトウヨ(ネット右翼)」発言である事はひとまず置いておこう。

 日本国民の6~7割の人が感じている様に、今夏の開催に反対する声が根強いのは、現状で強行すればコロナ感染再拡大や医療崩壊のリスクがあるからだ。決してイデオロギー的な対立ではない。

 安倍氏は、世論調査で中止や延期を求める6~7割の人も反日的だというのか。懸念を宮内庁長官が代弁した天皇陛下さえも反日ということか。「2年延期案」を押し切って1年延期に 

 コロナ禍によって1年延期された東京五輪だが、そもそもその決定を下した張本人が安倍氏だ。国内で新型コロナの感染が拡大し始めた昨年3月24日。当時首相だった安倍氏はIOCのバッハ会長と電話会談し、1 年延期を提案したのだ。

 当時の報道によると、「開催国日本として、現下の状況を踏まえ、世界のアスリートの皆さんが最高のコンディションでプレーでき、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とする」とバッハ会長に伝えたという。安倍氏の申し出に、バッハ会長も「100%同意する」と受諾したと伝えられた。

 周囲からは〝2年延期案″も出ていたというが、安倍氏が押し切ったことで1年延期が確定したという。

 安倍前総理は『人類が新型コロナに打ち勝った証として、完全な形で開催する』と主張していたが、五輪開催がなぜ1年後に可能なのか具体的な根拠はもちろん示していない。

 「2013年に自らプレゼンテーションし、五輪招致を勝ち取っただけに、在任中に開催することが悲願だったのでしょう」とは全国紙記者の談だ。

 新型コロナ対策で、アベノマスクを配布するなど、大きく批判を浴びた安倍氏は、最終的に、山積する課題を菅首相に引き継ぎ、「1年延期の五輪」を残したまま辞任したのだ。

識者の意見は

 『「歴史認識などで一部から反日的ではないかと批判されている人たち」とレッテル貼り発言した安倍氏ですが、自身が海外メディアや海外の識者から、歴史修正主義者や極右、ナショナリストだと見なされていることを認識しているのでしょうか?』

 『ワクチンや治療薬開発には時間がかかると言われていた昨年3月時点で、何の科学的根拠もなく1年延期を決めた楽観的な判断の裏には、国民のためというより、自身の政治的野心を満たしたいとするエゴがあったのでしょう。』

 『先日、バッハ会長を「ぼったくり男爵」と命名したワシントンポストのコラムニスト、ジェンキンス氏に話を聞きましたが、同氏は「開催を主張している日本政府は国民にコストやベネフィットを説明し、中止できないならその理由を徹底的に説明すべきだ。日本政府は説明していない」と政府の対応を批判していました。今、政府がすべきは国民に対して説明責任を果たすことだと思います。』

コロナは天災だが五輪は人災

 断っておくが、オリンピックの開催とコロナ対策により都民、国民の命を守るコトは、別に二者択一の話ではない。オリンピックに参加する選手や関係者の入国や、競技を観戦するために人流が増えるから、感染対策をしましょう、それが難しいならば、無観客もやむなし、という話に過ぎない。その大前提を踏まえた上で、前首相の発言はとんでもない「暴言」だ。

 反日= 非国民の考えは、戦時中に戦争に反対する人を非難する当時の軍国主義政府の発言と全く同じで、「体制側」の有無を言わせぬ上から目線という点まで同じだ。
※80年前は「皇国の興廃」と軍部が喧伝し、天皇崇拝により国民を従わせようとしていたが、今回は国民を気遣う陛下の心情まで「なかったこと」にすり替えて、五輪開催に猛進している。

 安倍氏にとっては政府= 日本であり、日本国民は首相であった自分の「しもべ」という位置づけなのだろう。自分の意志に逆らう者、従わない者はすべて「反アベ= 反日」という脳内変換が行われる訳だ。まことに単純であり、だからこそ真に恐ろしい。

 熱狂的なトランプ信者と一緒で、安倍を支持しているネトウヨ(実際はこれもレッテル貼りだが)も大勢いるのだろう。

 自分の立場が危うくなると、病気を理由に2度も政権を投げ出したのに、ほとぼりが冷めると3度目の登板を伺っているという噂まで流れる。自民党の人材不足と、自民党議員の定見の無さは痛ましいばかりだ。

 もちろん、選んだのは我々有権者である、という事実を忘れてはいけない。他に居ないから、というネガティブな理由であっても、一票の重みには微塵も差がないのだから。

 政治家が劣化した、と宣う政治評論家は多いし、恐らくそれは事実だ。但しそれならば、そもそも劣化したのは我々「有権者自身」であることに誰も反論できない。残念ながら。

7月10日

 この7月15日号が発行されるころには、残すところ一週間と差し迫ってきた東京五輪。しかし東京都の新型コロナの感染者数は着実にリバウンド傾向にあり、第5波が懸念されている。またワクチン接種も全国民に、十分に行き渡っていない状況だ。

 百貨店だけでなく、どんな商売に従事する人であっても、この危機を何あとか持ちこたえて、秋の衆議院議員選挙では、有権者の本分を果たそうではないか。デパートのルネッサンスはそこからだ。人びとが日常生活を取り戻すことが、そのルネッサンスの大前提だからだ。

 デパートを語る前に政治を語らなくてはならない状況に、筆者は少々疲れた。

 もう一度断っておくが本誌はイデオロギー的に右でも左でもない。
ジャッキー・チェンのファンだったが、共産党は支持していないし、好きではない。只、ジャーナリズムに携わる者としては、明らかに権力を持つ為政者には、常により批判的な目を持ち、権力の乱用を監視しなければならない。

 安倍~菅とその「取り巻き」の民主主義からの逸脱は、たとえどんなに些細なことであっても、見過ごすことは許されない。オリンピックの開催や、コロナ対策= ワクチン接種を政治利用することはあってはならないのだ。

連載 デパートのルネッサンスはどこにある?

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