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デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年06月01日号-26

コロナ禍の1年 百貨店の今 2

『緊急事態宣言の再延長は不可避』

三越伊勢丹に続き松屋も、都の要請により高級ブランド店を再び休業

 三越伊勢丹は都内4店舗のラグジュアリーブランドの売場を5月23日から再び休業した。松屋も24日から店内のブランドショップを休業。尚、そごう・西武は既に20日から休業している。

 東京都によるラグジュアリーブランドへの直接休業要請を受け、百貨店とブランド各社が協議した結論が「再休業」だ。17日以降、都はラグジュアリーブランド側に対し、路面店の休業要請の働きかけを始めたのだ。

 これまで百貨店やショッピングセンターに限られてきた休業要請が、ラグジュアリーブランドの大型旗艦店などに波及している。都知事の執念を感じる一幕だ。

 因みに、大丸松坂屋百貨店の5月21日のホームページを見ると、「政府から発出された緊急事態宣言とそれに伴う都道府県知事からの要請にもとづき、当該地区の店舗の営業時間ならびに営業範囲を以下の通り変更させていただきます。」としている。

 松坂屋名古屋本店は、5月22日からの営業範囲として、土日限定の生活必需品売場の休業に加え、「特選ブティック、宝飾、呉服、美術、時計、アクセサリー、ハンドバッグ、ゴルフギア等は休業」に変更した。

 百貨店と東京都は「高級品」を巡る解釈でせめぎ合いを続けていた。緊急事態宣言が延長された12日以降、百貨店各社は営業エリアを拡大した。休業要請の対象外である「生活必需品」の範囲を広げることで、衣料品や ラグジュアリーブランドを含めた売場の営業を再開していた。
※これは、前号でも言及している。

 しかし東京都の小池知事は、ラグジュアリーブランドを生活必需品に加えた百貨店の対応を問題視した。都が日本百貨店協会に対して12日に提出した要望書では「豪奢品( ごうしゃひん=並外れてぜいたくな品)」の販売、をやり玉にあげ、14日には小池知事が会見で「高級衣料品は生活必需品に当たらない」と、名指しで非難した。さらに都は百貨店に文書を送るだけでなく、場合によっては都の担当者が直接百貨店やブランド本社を訪ね、休業を求めるという「実力行使」に出た。

 都の強硬な姿勢を受け、前述の様にそごう・西武は20日から、三越伊勢丹や松屋も追随し、ブランドと協議し、豪奢品に相当する商品を売場から引っ込めた。当該ブランドが休業したいと申し出れば、他の都内百貨店やSCにも休業が広がるのは自明の理だ。また都が直接ブランド各社に働きかけたことで、ブランドの大型旗艦店の休業も相次いだ。緊急事態宣言は5月末以降も延長される公算が高く、影響は止まることを知らない。

 ある百貨店関係者は「ラグジュアリーブランドはさほど混雑しないし、人流を抑制させる効果があるとは思えない。都は勝手に営業範囲を拡大した百貨店に対し、意地になっているのではないか」と述べた。大義名 分だった人流抑制が、いつの間にか「生活必需品」の線引きや「高級衣料品」の解釈の問題にすり替えられてしまった。東京都の要請は、感染抑止という本来の目的とは、大きくかけ離れた方向に向かっている。いや、もはやオリパラの開催との帳尻合わせを含め、「迷走」していると言って良いだろう。百貨店の顧客を含め、都民の「思い」は、置き去りのままだ。

 筆者が憤っても何も解決しない。本題に戻ろう。前号に続きコロナ禍に明け暮れた2020年度を振り返り、百貨店大手各社の今後の展望を探る。

大丸松坂屋

 J.フロント リテイリングの好本達也社長のコロナ後を見据えた生き残り策は、本紙12月15日号の特集「百貨店よ、どこへ行く」の中で、好本達也社長が表明した「脱百貨店」路線だ。 このテーマを掲げて百貨店のテナント化を進めてきた
J.フロント リテイリングは、業界内では独自の存在感もあり、一定の評価をされて来た。しかし、長引くコロナ禍には抗えず、傘下の大丸松坂屋に加え、昨年子会社化したパルコも、大幅な売上げ減に見舞われた。2021年2月期の最終損益は200億円近い赤字に転落。先行き不透明な中、同社の好本達也社長が描く、生き残り策を検証しよう。※社長発言の抜粋ゆえ、いささか「自画自賛」感があることは否めない、事前にお断りしておく。

コロナが変えた消費

 客足の回復を含めて、業界の展望をどう見通すのか、という問いに対し、好本社長は、「例えばEC(ネット通販)などデジタル分野がものすごいスピードで進化していく中で、2年前には(J.フロントが長期ビジョンとして想定している)2030年に起きると思っていたことが、来年か再来年にはおそらく起こってくる。」と言う。ECの普及や、コロナによる巣ごもり消費など、消費行動の変化が加速し、百貨店のファッション需要が大きく減っている。ECに流れた影響もあるが、それよりも「需要自体」が消滅してしまったのだ。リモートワークがどの程度定着するかによって、ファッション消費の将来も全く変わってしまうフェーズに入っている、として、百貨店でのアパレル販売は従来から苦戦が続いていたが、コロナでそれがより鮮明になった、と続ける。

脱アパレルモデル

 曰く、2017年度から5カ年の中期計画では、市場が縮小している婦人服について、売場面積の30%削減を進めてきた。それがコロナで増々加速してくることは間違いない。ゼロにはならないが、百貨店が今の方式を続けていく限り、どんどん縮小していくだろう。

 婦人服の売場を他のモノに変えてしまうのも1つの手段だが、結構な投資がかかる上に、何より代替するカテゴリーが必要だ。コロナ以前は、化粧品やラグジュアリーブランドが伸びていたが、インバウンド需要の激減により、見直さざる得ない状況に入っている。問題は、転換するカテゴリーがないコトだ。足元でアパレル大手( オンワードやワールド) がどんどん撤退し、短期的な対応をどうしていくかを考えざるを得ない状況だ。

 既に地方店や郊外店では、大手アパレルの大量閉店の影響が顕著になって来ており、例えばオンワードの店舗は、大丸下関店でも、高知大丸でもゼロになった。地方店から婦人、紳士アパレルのゾーンが消滅するのは、避けられないと思わなければだめだ。

 下関店では百貨店フロアが従来の半分以下になり、その中で衣料品ゾーンは激減している。それでも生き残っていけるモデルを、描いていかなければいけない。
※これは前号で、三越伊勢丹の「ダウンサイジング」でも触れたが、大丸松坂屋の手法はいささか異なる様だ。

地方店での「定借化」は必要不可欠

 先に言及した大丸下関店では自前の百貨店フロアを大幅に減らし、固定賃料をもらう定期借家契約を結び、ニトリなど大型専門店を誘致した。

 地方店の再建には、「定借化= テナント導入」が不可欠だ。テナントを入れることで、アイテムバラエティを増やし、今まで来店しなかった顧客を呼ぶことが出来る。東急ハンズやニトリが、従来の百貨店の雑貨やインテリア売場では品揃えできないものを提供してくれる。

 一方で人件費の削減も課題だ。下関店では百貨店部分を大きく減らしたことで200人程度いた社員は半分の100人になった。地方店の場合は( 従業員には申し訳ないが) こういう店舗体制にするしか生き残る道がない。

 結果として、下関店の売上げはあまり下がって『緊急事態宣言の再延長は不可避』いない。なぜなら、このエリアは外商の上得意である、医師層の顧客も多く、宝石や眼鏡を持って自宅を訪問したり、名古屋や博多での「催し」に招待したりしているからだ。

 コロナ禍では外商の対面営業がなかなか難しい。下関店は、リモートツールを活用するなどして成果を上げ、地方店再生の一つのモデルになりつつある。

消化仕入れから定借契約へ

 従来の百貨店では、在庫リスクを負わずに、商品を売上げた時に取引先からの仕入れを計上する、「消化仕入れ」という独特の取引形態で多くの売場が運営されている。百貨店にとって「利益」に相当する「歩率」は、決して低くない。大手百貨店はこの歩率がものすごく高く、そのため取り分が少なくなる取引先は、ついてこられないのが実態だ。一番の問題点は、新たな取引先を導入する時に、代替がいないことであり、消化仕入れ の取引形態で「百貨店の中でやりたい」というブランドはもう出てこない。

 J.フロントは、従来型の消化仕入れを減らして、各テナントと定借契約を結ぶ「テナント= 場所貸し」化を進めてきた。大丸心斎橋店は店舗面積の3分の2が定借契約であり、定借化は一層加速していくしかない。

 百貨店は似たような品揃えばかりだという批判があるが、GINZASIXの様にラグジュアリーブランドを重視した商業施設であれば、その独自のポジショニングだけで、闘える。

PARCOとのシナジー

 大丸心斎橋店は、通常の百貨店とGINZASIXの中間のポジショニングだ。もし、難波と梅田の真ん中に普通の百貨店があっても、おそらく勝てない。

 逆に、地域一番店かそれに近いポジショニングにある、大丸神戸店や松坂屋名古屋店は、百貨店の王道を行けばいい。 人口100万以上の都市で、ある程度の顧客基盤を持って、外商もマッチングできれば勝てる。

 大丸心斎橋店は2020年11 月、本館隣の北館に、若年層に強いパルコを開業し、百貨店とのシナジーを実現した。

 既存百貨店の一番の悩みは、なかなか若いお客様を呼び込めていないことであり、パルコの出店により、大丸だけでは呼び込めなかったお客様が確実に来店している。アニメのキャラクターショップなど、大丸単独 では絶対に出来なかった。

 心斎橋店の2つの館、大丸とパルコとはMDが明確に異なる。それぞれが個性を持ち、それぞれの顧客を呼べている。4分の1ぐらいのお客様は大丸とパルコを行き来して、相互に送客が出来ている。

インバウンド回帰

 大丸心斎橋店では特に顕著だが、インバウンド需要の消滅によって百貨店は大打撃を受けた。同店は売上の40%が免税売上だったので、日本で一番インバウンド消滅の影響を受けた店舗だ。ただ、全く心配していない。なぜなら、心斎橋店の売上はここ数カ月、国内富裕層の消費が好調で、インバウンドを除けば、前年比で2ケタ以上のプラスだ。また、数年後には、インバウンドは必ず戻ってくる。そうなると、赤字の心配はなくなる。

 インバウンドはラグジュアリーブランドや化粧品を買う中国人の比率が非常に高く、商品的にも顧客の地域的に偏りが大きい。東南アジアで調査すると、一番訪れたい国は日本だと言う。アジアのもっと多くの国・地域から来てもらって、化粧品やラグジュアリーだけじゃなく、日本の文化を感じさせる商品を、しっかり売れる態勢を整えておかないといけない。

 もちろんGINZASIXもインバウンドのシェアがものすごく高く、年初には「大量退店」か、というニュースが流れた。たまたま4年目の契約更改のタイミングで、閉店したブランドがあっただけだ。
※これについては、本紙2月15日号の「GINZA SIXで大量閉店」のニュースは本当なのか で顛末を詳細に伝えている。

 コロナ禍でも、ラグジュアリーブランドは継続好調で、定借で長期間の契約をしているので、赤字になる心配は全くない。国内唯一のラグジュアリーモールとしての方向性ははっきり見えている。今春には40店以上の新店舗が順次オープンした。

海外富裕層シフト

 コロナ禍で中間層消費が落ち込む一方、国内富裕層の消費意欲は旺盛で、高額品が売れている。低迷する中間層に向けて、どうするかは大きな課題だ。中間層と富裕層の区分けが日本では曖昧だ。中間層から富裕層の「間( はざま) の層」は人数も多く、百貨店にとっては大きなターゲットだ。冠婚葬祭やハレの日とか、ちょっと上質なものを百貨店で購入したいという需要は、そういった方々も持っている。

 中間層が非常に重要であることは変わらないが、日本の百貨店は全体として、今後は徐々に富裕層向けに寄っていくことになるだろう。必ずしもお金を持っている、ということではなく、もっと心豊かな生活を送りたいという方をターゲットにしていきたい。

 海外には「本当の」富裕層が居る。彼らにしてみたら、誰もが入れる店の中で、誰もが買えるようなものを買っても満足できない。香港やシンガポールなどアジアの本当の富裕層はケタ違いだ。そうした海外富裕層の需要を取り込むために、これまでの様に「待ち」の姿勢ではなく、海外富裕層をもっと日本へ連れて来るビジネスをやりたい。モノやコトなど、新しいコンテンツを生み出すことが重要だ。

 新しいお客さまを取り込もうと思ったら、現状では無理だ。焼き物や工芸、美術品の作家とのコラボレーションの場を作るなど、日本らしい文化の「特別な体験」ができるコンテンツを生み出していかなければいけな い。

閑話休題

 前号で三越伊勢丹、今号では大丸松坂屋の、それぞれのトップが考える、コロナ禍とその後を見据えた「方向性」を確認した。

 地方店のスクラップに始まり、ネットショッピングやリモート接客へのトライ、外商利用の拡大から、更には海外も含めた超富裕層へのアプローチなど、大手百貨店の共通した方向性が窺えた。それらは、生き残りのためには不可欠の対応なのであろう。庶民代表の筆者からすると、一抹の寂しさは拭えないが。

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