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デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年04月01日号-22

コロナ禍で加速する百貨店ファッションの空洞化

 百貨店の苦境は、コロナ禍が追い打ちとなり、今現在も加速している。百貨店は今後、その生き残りをかけて、事業モデルの変革に取り組んでいかねばならない。大手百貨店3強の一角を占める三越伊勢丹はトップの交代を発表したばかりだ。これを大きな変革の一端と見るのは、深読みであろうか。

 2021年に入っても、新型コロナウイルスの感染拡大が、苦境続きの百貨店の経営を、大きく揺るがしている。緊急事態宣言による、外出自粛やリモート勤務の普及により、主力の衣料品販売は極端な不振に陥り、これまで共に成長を享受してきた大手アパレルメーカーも、百貨店からの撤退を余儀なくされている。特に地方百貨店は、ファッションテナントの大量閉店により、深刻な事態に直面している。

衣料品売上は激減

 まずはこの10年の、百貨店の衣料品の売上数値を振り返ってみよう。

 日本百貨店協会によると、百貨店は10年以上に渡り、衣料品の売上を漸減させている。

 2008年に7・3兆円を超える百貨店売上に占める衣料品売上は2・7兆円近くあり、衣料品シェアは約37%であった。正にデパート=ファッションという、百貨店にとっては「古き良い時代」だった。

 それが7年後の15~16年には、売上総額が6兆を下回り、衣料品シェアは全体の1/3を切り、2兆円を下回った。

 最後はご存知の様にコロナの追い打ちだ。2020年には総売上4・2兆円に対し、衣料品売上は1・1兆円と、わずか5年で半減したことになる。

 もちろん去年に限っては、コロナ禍による「一過性」のイレギュラーな数字かもしれない。但し、今後も先行き不透明な中、2021年以降にどれだけ数字が戻って来るのかは、誰にも判らない。

地方での大量閉店

 J.フロントリテイリング傘下の高知大丸でも、衣料品売上は以前から苦戦が続いていたが、コロナでとどめを刺された。

 高知県唯一の百貨店である高知大丸では、2020年7~8月に婦人服と紳士服の合計31ブランドが一気に退店した。撤退分の売場面積は計360坪にのぼり、同店全体の10%に及ぶ。

 退店したのは、2020年5月に経営破綻したレナウンや、オンワードといったアパレル大手が展開するブランド群だ。以前であれば、退店があれば他のアパレルブランドで穴埋め出来たが、今は新規出店の余力を持つブランドはないのが現状だ。

 雑貨売場を拡充するなどして補ってはいるが、空きスペース全体のリカバリーは当然不可能だ。今、全国各地の地方百貨店が、ほぼ同じ様な状況になっている。

新しい潮流

 その高知大丸の東館2F に、2021年2月に新たに「ラック・ラック」が出店した。Luck・RackClearanceMarketはアパレルブランドの余剰在庫を買い取って50~70%割引で販売するオフプ ライスストアである。高級感が売りの百貨店のイメージダウンが危惧されるものの、背に腹は代えられない、という本音も聞こえて来る。同じ東館1Fには、ポロ・ラルフローレンやポール・スミス、ラコステといったブランドショップが出店しており、板挟みにあって苦慮する、大丸の現場担当者の悲哀を感じてしまう。しかもだ、そのLuck・Rackも3カ月の期間限定出店(POPUP催事)で、その後の展開は未定という。因みに、昨今Luck・Rackは時代の寵児として、何度もマスコミに取り上げられている。前号掲載記事で、3年後の閉店を発表した新所沢パルコ3FのLuck・Rackは、3/17にTBSの夕方のニュース番組「N スタ」で紹介された。

 元々はリユース(ブランドリサイクル)の2ndSTREETを運営するゲオグループの子会社ゲオクリアが運営している。

 Luck・Rackも立ち上げ当初は、当然、正価(プロパー)で販売しているブランド正規店との軋轢を防ぐため、郊外のホームセンターの一角で運営していた。もちろん新所沢パルコも、「れっきとした」郊外モールである。しかし、コロナ禍の2020年を契機に、静岡の松坂屋や名古屋の名鉄百貨店といった、それこそ正真正銘の百貨店への出店が相次いだ。結果、プロパー品とオフプライス品の「共存」という、開闢以来、百 貨店業界のタブーとされてきた1物2価が、遂に現実のものとなった訳だ。※実際はワンシーズン前のストックなので、と担当者は説明しているのかもしれないが・・・

大手アパレルの本音

 2020年における百貨店全体での衣料品販売は前年比で30%以上減少した。百貨店向けのブランドを複数展開するオンワードや三陽商会などの総合アパレルメーカー大手4社は、2020年度に多額の赤字を計上する見込みだ。構造改革の一環として同年度内に合計1400店程度(百貨店以外のSCなどの店舗を含む)を閉鎖する。その多くは地方百貨店に入る店舗だ。

 日本の百貨店では、売上が立った時に商品を仕入れ、計上する「消化仕入れ」と呼ばれる独特の取引形態が主流だ。百貨店側は在庫リスクを負わず、多様な商品を店頭に並べられる。一方アパレルメーカーは在庫リスクを負いつつも、自社店員の派遣など販売現場の主な業務を担う代わりに、好立地の売場を提供してもらえるというメリットがあった。往事には両者間で、このような「持ちつ持たれつ」の関係が続いてきたのだ。

 大都市圏での売場確保のバーターとして、付き合いで不採算の地方百貨店にも出店していたアパレル大手にとってコロナ禍は撤退の口実になった面もある。アパレル側としても「もはや地方百貨店に店を残す理由はなくなった」という理屈だ。

 百貨店側も取引条件の変更を提案するなど、引き止めに躍起だが、消費者が服を買わなくなった現状を看過してきたツケが、回って来たのだろう。

増殖するPOPUP STORE

 各アパレル大手は、収益改善のために品番の数や、生産数量を大幅に絞っているが、商品の数が限られるため、地方百貨店の店舗には、売れ筋商品が回ってこない。それが店の魅力を低下させ、一層の客離れを起こす、という、典型的な悪循環に陥っている。

 北陸の雄である大和百貨店では、2020年に主力の金沢香林坊店でレナウンとオンワード、三陽商会が展開する約10ブランドが撤退した。レナウンのブランドが撤退した跡地に、地元メーカーによる紳士服ブランドを導入し、大手アパレルに頼らない売場作りへの転換を目指す。但し、それですべての空きスペースを解消できるわけではない。新たな取引先に期間限定店舗を出店してもらい、自転車操業でしのいでいるのが実態だ。地方百貨店ではどこも事情は同じ様だ。

アパレル依存症に特効薬はない

 百貨店業界内では、婦人服売場が館の2ないし3フロアを占めるような状況が長らく続いて来た。もちろん都心の百貨店では、それ以上の占有もざらにある。近年は、衣料品売場の面積過剰が指摘されてきたにもかかわらず、ずっと稼ぎ頭だった成功体験から脱せず、売場の転換は一向に進まなかった。

 地方百貨店では、過去20年間で衣料品の売り上げは半分近く減ったのに、売場面積はあまり変わっていない、という所が多い。実際は、売場の面積=売上バランスの変更を考えなければいけない時期は、とっくに過ぎているのだ。

 首都圏の百貨店も例外ではない。国内最大の売上高を誇る伊勢丹新宿店では、2019年に婦人服売場を集約し、インバウンド消費が好調だった化粧品を1フロアから2フロアに拡大するなどのテコ入れを図った。※これは期せずして起こったコロナ禍により、結果的にはあだ花となってしまったが・・・考え方は間違ってはいなかった。

 関西圏では、近鉄百貨店も、あべのハルカスの婦人服売場の再編に重い腰を上げた。現在3フロアある婦人服売場を縮小し、複数の商品カテゴリーによるミックスMDのフロアへの変換を検討している、という。

 只、こうした大幅改装ができるのは多額の投資に耐えられる大手百貨店や、一部の地方百貨店に限られる。三越伊勢丹ホールディングスでさえ、首都圏以外の店舗での売場の面積バランスの修正はほとんど手付かずどころか、閉店する店舗の数が増える一方だ。

 当然、集客力のある食料品、いわゆるデパ地下に注力する百貨店も多いが、食料品の利益率は各社ともに10~20%と、衣料品の20~30%より低い。衣料品に代わって食料品を強化すれば、利益構造の悪化を招き、全体の利益率を押し下げるというジレンマも抱えているのだ。

2019年の大手三社の商品別売上高シェア

三越伊勢丹衣料品34・6%、身の回り品12・4%、雑貨22・8%、食料品21・7%髙島屋衣料品27・4%身の回り品16・1%、雑貨18・0%、食料品28・3%大丸松坂屋衣料品40・2%、身の回り品 6・6% 、雑貨20・8% 、食料品22 ・0%

 百貨店大手3社の売り上げの商品別構成比を見ると、現在も衣料品の売り上げが大きなシェアを占める。コロナ前まで成長著しかった化粧品は、インバウンド需要が消滅し、国内需要も外出自粛の長期化で先行きが見通せない。衣料品に代わる収益源を見出せてはいない、というのが現状だ。

地方で進むテナント化

 地方百貨店がすがるのが、大型専門店などのテナントだ。定借契約を結び、百貨店は固定や売上歩合といった賃料を受け取る仕組みだ。先行するJ.フロントリテイリングは、山口県の大丸下関店にニトリや東急ハンズ系列の雑貨店を入居させた。大都市への大型旗艦店舗の進出を目論むユニクロや無印良品に加え、前述のラック・ラックも俎上に上ってきた。

 J.フロントの好本社長は「百貨店部分を減らし、テナントを増やしていくしか、地方百貨店が生き残る道はない」と断言する。去年完全子会社化した、傘下のパルコの社長と専務をJFRの役員に組み込んだのもその「本気」の表れだろうか。

 一方で、そごう・西武も家賃収入を主体とするビジネスモデルへの転換を急ぐ。埼玉県の西武所沢S.C.はその代表格だ。

 百貨店が従来頼って来た、消化仕入れ方式は、利益が売上げに連動するため、市場の右肩上がりが前提のビジネスモデルだ。それに比べ、定借は百貨店側の実入りが減る可能性が高いものの、テナントから固定賃料をもらうため、収益は安定する。また、テナントの魅力により、今まで来店していなかった新規客層を店内に呼び込み、百貨店売場への波及効果も期待できる、という皮算用だ。

 ただ、アパレルの大量閉店は、そうしたテナント導入策を超えるスピードで進んでいる。地方百貨店では、大型テナントを入れてもフロアが余る状況が顕著になっている。

百貨店の縮小均衡

 店舗規模を、現状のまま維持できない地方百貨店の究極の選択は「ダウンサイジング」だ。大手百貨店の旗艦店舗を除き、10年後の2030年には、百貨店は現在の標準的な店舗面積と比べ、半分以下になるという予測すらある。

 実際、三越伊勢丹では、一部の地方店のフロア数を絞り込み、中小型店として衣替えさせる戦略を練っている。松山三越では9フロアあった百貨店の売り場を3フロアに圧縮し、空いた上層フロアを、ホテルやエステティックサロン等に非物販化をする計画だ。

 フロア単位の大規模代替の手法には、ホテル、マンション、公共施設(ex.図書館)、美術館の誘致などがある。その他、クリニックモールやフィットネスジム、シェアオフィスといった、大型サービステーマも検討出来る。

 こういった戦略には、テナントリーシング力=デベロッパー能力が求められる。しかし、地方にある地場資本の百貨店では、大手と比べて抱えている人材に限りがあり、自前での達成は中々難しく、ハードルは高い。

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本紙に広告を掲載しているクリック&モルタルやC.P.O.設計は、地方百貨店のそうした課題を解決する「手法」を持っている。一度相談されることをお勧めしたい。

株式会社クリック&モルタル

株式会社C.P.O設計

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