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デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年01月15日号

緊急事態宣言再び

首都圏の百貨店は、政府による緊急事態宣言の発出を受け、営業時間の短縮を相次ぎ発表した。

 東京都では新型コロナウイルスの新規感染者数が1月7日に2447人翌1月8日が2392人、1月9日も2263人となり、3日連続での2千人超えとなり、過去最多を記録した。

 政府による緊急事態宣言の発令決定を受け、百貨店各社も7日、首都圏1都3県(東京、埼玉、神奈川、千葉)の飲食フロアを含め、全館の営業時間短縮などの措置を、相次いで発表した。

百貨店各社の対応

 三越伊勢丹ホールディングスは8日から、伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店など、6店舗の営業時間について、レストランは午後8時までとするほか、それ以外の売場も、これまで継続してきた閉店時間(午後7~8時)を午後7時に統一すると発表した。

 髙島屋は首都圏7店舗のうち、横浜店の営業時間を8日から、全館午後8時までとしたほか、ショッピングセンター(日本橋、二子玉川等)の専門店ゾーンについても閉店時間を30分~2時間繰り上げた。

 J・フロントリテイリングが運営する大丸松坂屋百貨店も8日から、大丸東京店の営業時間を、全館で午後8時までと決めた。

 同じJFRグループの商業施設パルコも、首都圏10店舗について同様の対応とした。

 そごう・西武も8日から、西武池袋本店など8店舗を対象に、午後10時までだったレストランの営業時間を午後8時までに短縮し、酒類提供は午後7時までとした。その他の売り場の閉店時間も、午後7時半に前倒しした。

 松屋は銀座店について午後10時のレストランの閉店時間を8日から午後8時に変更。その他のフロアでも、生活必需品に限り現状の午後8時を維持するものの、それ以外の売り場では12日より1時間早めて午後7時に閉店する。浅草店は8日から、閉店時間を全館午後8時から午後6時へと、2時間の前倒しに踏み切った。

 東武百貨店は8日から、池袋本店と船橋店のレストランと一部売場について、午後9~10時だった閉店時間を午後8時に統一する。なお、酒類の提供については午後7時までとした。

 小田急百貨店は新宿店のレストランのほか、町田店のレストラン、専門店ゾーンの閉店時間を、8日から午後8時に前倒しした。

 京王百貨店も8日から、新宿店の営業時間を全館午後7時までとした。

 新型コロナウイルスの第3波を受け、政府により緊急事態宣言が再発令されたことを受け、都内をはじめとする複数の百貨店や商業施設が、1月8日から緊急事態宣言が解除されるまでの当面の期間(2月7日めど)、営業時間を短縮することを決めた。

百貨店以外の対応

 1月7日に発表された緊急事態宣言は東京、埼玉、千葉、神奈川を対象に、8日から効力が発生。

 同時に1都3県の住民には、20時以降の不要不急の外出自粛を、飲食店などに対しては営業時間を20時までに短縮することや、酒の提供を19時までにすることを要請した。

 対象地域の商業施設では、ルミネ各店やイクスピアリ、先に述べたパルコ各店、SHIBUYA109、ラフォーレ原宿などが閉店時間を20 時に前倒しした。

 イオンモールは8日、東京都など1都3県で運営するイオンモール26施設と系列のトップバリュも含め、今月9日~2月7日にかけて、飲食を含めたテナント企業が入る専門店街の、午後8時までの時短営業を決めた。もちろんイオン本体はヨ ーカドーや西友同様、食料品やドラッグストア、生活必需品がメインMDのため、時間短縮や閉店時間の前倒しは表明していない。

 イオンは、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発表を前に、千葉県の物流センターを報道陣に公開し、「在庫は十分にあるので買いだめはしないでほしい」と呼びかけている。去年の緊急事態宣言のときに、品薄となったカップ麺やマスクなどの食料品や日用品を中心に、在庫を通常の2倍にして対応するとしている。消費者が供給不足の不安から買いだめに走らないよう、在庫が十分あることをアピールしたのだ。

 イオンは原則、緊急事態宣言が出た後も通常通り営業するとし、「いつも通り安心して買い物をして欲しい」と呼びかけた。

 今のところ前回宣言下の様な「買い占め」騒動や、売場の混乱は起きていない様だ。消費者は半年前の宣言時で学んだのだ。懲りた、とも言うが。

コロナ第3波が直撃した、主要百貨店の11月売上は大丸松坂屋の「ひとり負け」

 百貨店の主要4社が発表した11月の月次データは以下の通り。

前年同月比増減
阪急阪神百貨店86.30%▲13.7%
髙島屋89.90%▲10.1%
越伊勢丹86.70%▲13.3%
大丸松坂屋79.40%▲20.6%
既存店売上高

 阪急阪神百貨店(エイチ・ツー・オー リテイリング)の既存店売上高は、前年同月比86・3%(13・7%減)。髙島屋の売上は、同89・9%(10・1%減)。

 三越伊勢丹の既存店売上高は同86・7%(13・3%減)だった。

 主要4社の中で、最も厳しい状況にあるのが大丸松坂屋(J・フロントリテイリング)である。11月度の百貨店事業合計は、同79・4%(20・6%減)だった。

正月速報。2021年になると、業績は更に悪化し「全滅」に近い惨状。

①主要百貨店の中で、元日営業を実施したそごう・西武の前年比と衣料品動向。

グループ計池袋西武横浜そごう千葉そごう
全体42.7%39.2%42.8%51.6%
婦人服34.8%32.3%32.3%40.0%
紳士服34.3%33.8%33.6%39.0%
子供服35.7%34.1%30.6%44.4%
前年比と衣料品動向

②そごう・西武以外の各店 初売り1月2日の売上前年比
新宿伊勢丹 52%
立川伊勢丹 50%
浦和伊勢丹 46.1%
日本橋三越 52%
新宿髙島屋 39%
横浜髙島屋 32%
柏髙島屋 39%
名古屋髙島屋 47%
京都髙島屋 50%
東京大丸 41%
梅田大丸 31%
京都大丸 54%
神戸大丸 44%
上野松坂屋 42%
静岡松坂屋 61%
名古屋松坂屋 52%
うめだ阪急 49%
池袋東武 41%
有楽町マルイ 45%

 特に東京では、大晦日に1337人と、初の千人越えとなり、百貨店の主要顧客であるシニア層は「これはちょっとマズイな」と、年始の外出を控えたのではないか。それから10日も経たずに、あっさり2千人の大台を連日更新という状況だ。当然、百貨店の1、2月の数字の悪化は、火を見るより明らかだ。2021年度は2020年度からの反転攻勢を謳った百貨店トップ達だが、正月早々からのつまずきは大きい。

 菅総理大臣が、コロナ対策について会見で、「先手先手で」と繰り返すたび、政策が「後手後手」という批判が、政府の緊急事態宣言の再発出が遅すぎた、という意見が、噴出する。

 特に今回は、感染経路不明者の増加原因を「飲食店」と断罪し、東京(と近隣3県)と飲食店を狙い撃ちにするという、菅総理お得意の、スケープゴート作戦の拡大版だ。

 安倍政権下の官房長官時代もそうだったが誰かに「責任転嫁」しないと何事も決められない病が悪化している。それは、夜の街や小池都知事であったり、コロナ対策の分科会であったり様々だが、自分自身の判断で物事を決めて、失敗したり、批判されるのが本当にお嫌いの様だ。但し、今は我が国の首相であり、コロナ対策の総責任者である。国民が納得し、実効性のある施策を打ち出して欲しい。

 いや、最初から国民が納得しなくとも、実効性の伴う施策であれば、国民は総理を追認しそしてその言に従う様になる。それが政治のあるべき姿ではないのか。それにより国民や「歴史」は、彼が次の総裁選までのワンポイントリリーフなのか、稀代の名宰相なのかを判断する。問題は彼にとってのピンチは、我々国民にとっても、同じピンチだということだ。

 もちろん、米国のトランプ現大統領の様な「自分ファースト」は困るが、彼の「諦めない」姿勢だけは是非見習っていただきたい。やれることはすべて(言うだけでなく)実行してほしい。

 感染症の専門家が言っていた。「前回の緊急事態宣言の様に、まず全国に発令し、その後新規感染の収まった地域から、徐々に解除して行く方法の方が確実に効果がある。その方が、国民の納得性も得られるのではないか」と。

 また政権批判になってしまった。香港だったら筆者はとっくに逮捕されているだろう。

 本紙の本分は百貨店のいくすえを見守り、応援することであるが、このコロナ禍は、コロナ抜きの記事やコラムを許してはくれない。コロナ抜きでは、百貨店を語ることが出来ないのだ。

 今言えるのは、半年後、いや1年後は、コロナのコの字も文章にしたくない。それだけだ。

希望を売る百貨店 ~ 編集長の視点 ~

2021年1月1日元旦にネットで見た百貨店の広告について

【西武・そごう】CM

わたしは、私。
レシートは、希望のリストになった。

(レジを打つ音に続き女性のナレーション)

 これは、2020年6月から11月までの西武・そごうでのお買い物の記録。

「レシートは、希望のリストになった。」

 新型コロナウィルスで、行動が制限された2020年。

 それでも、自由に旅行できる日のために662人のお客さまが、スーツケースを購入された。

 マスクの下でもメイクを楽しみたい76175人のお客さまが口紅を購入された。

 夏祭りは中止だったけれど、浴衣は475着。

 颯爽と街を歩く日を待ちながら、お求めになったハイヒールは1001足。

 生まれて来る命を、566セットのベビーギフトが、全力で祝福した。

 足踏みばかりの日々であっても、一人ひとりの「私」は、今日を楽しむ工夫を続けた。

 お買い物の記録に教えられた、大切なこと。百貨店が売るのも、お客さまが欲しいのも、ただのモノではないということ。

百貨店が売っていたのは、希望でした。

(ナレーション終了)

 希望を買いに来てくださったすべてのお客さまに、感謝します。

 どうだろう、スーツケースも口紅も浴衣も、今年一番「売れなかったモノ」の代表と言って差し支えないだろう。百貨店にとっては正真正銘の「ネガティブ情報」である。

 それを逆手にとって、購買客に感謝し、客と百貨店の「思い」まで込める。

 ちょっと良い話を聞いた、気にさせられる。上手い広告だと思う。

 相当古い話で恐縮だが、糸井重里の「おいしい生活」以来の西武らしい広告だ。

 亡くなった樹木希林や力士の炎鵬を起用し、話題となった「わたしは私」のシリーズだ。

 これ以前にも、SMAPの解散がまだ記憶に新しい木村拓哉や、パイを投げられる安藤サクラにより、無関心や賛否両論の議論を巻き起こしてはいたが。

 賛否両論の議論となっても、話題になったのだから広告効果はあったのでは、という意見もあるかもしれないが、売れない芸人なら炎上して美味しいという事も、万人を顧客とする百貨店にとっては、ただのマイナスパブリシティに過ぎない。

 今年の広告は「百貨店が売っていたのは、希望でした」と題し、2020年6月〜11月のそごう・西武11店舗の販売実績を、レシートに記載した。レシートにはスーツケース、口紅、浴衣などの売上がプリントされており、コロナ禍で様々な制約があった1年での買い物を〝希望の象徴〟として表現した。

 そごう・西武の広報担当者は今年の広告について「2021年は制約のない、自由で喜びに満ちた年であったほしいという願いとともに、コロナ禍の厳しい環境であっても私たちは自分たちの仕事を通じて、顧客の希望のリストを叶える手伝いをしていきたい。そうした思いを表現した」とコメントしている。
SNSでは多数拡散されており、一般ユーザーが広告を紹介したツイートは2・4万以上のリツイート、13・6万のいいね!を記録した。リツイートした人や動画広告を公開しているYouTubeのコメント欄では、

「『売上が下がった』ではなく、自身の売上をこう考えて前を向ける。」

「希望を拾うなんて素敵。元日に相応しく素晴らしい。」

「新聞広告と動画を見て、感動して思わず涙ぐんでしまった。」

といった声が挙がっている。

 今回はレシートのアップ映像と、女性のナレーションという「シンプルすぎる」内容だが、「百貨店が売っていたのは、希望でした。」のキャッチコピーは、先に述べた「おいしい生活」に匹敵する西武の新たな名コピーかもしれない。ジャニーズの大御所や、朝ドラのヒロインを担ぎ出さずとも、百貨店の「思い」が伝わり、じんわりと温かい気持ちになる。

 正直に言うと、「中々良い」どころではなく、ちょっと感動してしまった、というのが本当のところだ。もっとも、生命保険のテレビCMを見て、シングルマザーが息子の作文を読んで・・というくだりで目頭が熱くなるくらいだから、筆者が年を取って、涙もろくなっただけかもしれないが。

 コロナ禍により「食品以外、物が売れない」という、百貨店にとっては致命的な状況が続いている。百貨店に限らず、どの商業施設も、どのショップも、年末年始はセールと福袋による「お得」アピールと、EC(通販)による「便利」アピールの2本立て広告ばかりだ。そんな中で、このイメージ広告は「新鮮な驚き」と言ってよい。

 久々に言葉の大事さ、コトバというモノの力を感じた。ネガティブなデータを元に、ポジティブな未来を「希望」を垣間見せてくれる、秀逸なCMだ。
言葉に力がないと、どんなことになるかは、本来、コロナと戦う国民の先頭に立つべき首相や担当大臣が、示してくれている。どこか他人事で、空疎なその発言は、内容も含めて、聞く人びとの耳には届かない。自分達は一切自粛をしないのに、国民に自粛だけを求め、説いて来る、強いて来る、そんな人間の言葉を誰が信じ、誰が従うと思っているのか。

 国民は少なくともこの10ヶ月近くの間、やれることはやって来た。10万円と布マスク1枚と引き換えに、これ以上何を我慢しなければならないのか。医療従事者であれば尚更だ。

 諦めの気持ちと、もう政府に期待できないと、感じている人が大勢ではないだろうか。

 政治家に限らず、人は有言実行の人を信用するのではないか。失敗を認めようとしない人、自己保身に走る人、責任を取りたくない人の言葉はとてつもなく軽く、信用できないのだ。

 今回も菅首相は、一都三県への(限定した)緊急事態宣言を「急遽」発出した。

 どう考えても、事前に良く検討した、とは思えない。首都圏の知事たちに詰め寄られて「いやいや、仕方なく」感が漂う。GoToキャンペーンを停止する時もそうだったし、その時も緊急事態宣言についての記者の質問に、「考えていない」と回答している。政策が後手後手なのは、特措法の改正についても同様だ。去年の夏から半年以上経過していながら、今の今まで手付かずだったことで判る。場当たり的で、かつ後手後手なのだ。結果的に対応が早かったのは、アベノマスクとGoToキャンペーンといった、お得意の利益誘導施策の時だけだ。

 失礼、いささか興奮してしまった。言いたかったのは、当たり前のことだが、広告も政治も「言葉」が大事だというコト。真摯で心に響く言葉は、良い広告を、逆にコメントの字面だけ追っている出来の悪い政治家も、一瞬にして炙り出してくれる、というコトだ。

 正月早々政権批判になってしまったが、これも1年近くたっても収まらない、コロナ禍での閉塞感の現れなのか。ご容赦願いたい。
何度も記事にしているが、直近で西武・そごうは地方、近郊の百貨店をいくつも閉店している。

 そんな、苦しい状況の中でも、百貨店と生活者の両方に「希望」を見せてくれた。人は希望があれば、苦しい今を耐え忍ぶことができるのだ。皆で支え合って、我慢できるのだ。そのことを為政者は思い出してほしい。

元旦から、切に願う次第だ。

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