デパートのルネッサンスはどこにある? 2020年07月01日号-5
現場の今
先行する顧客の心理
5月25日に緊急事態宣言の全面解除が発表され、ほぼ1か月が経過した。もちろんコロナウイルスの感染者がゼロになったわけではない。特に首都東京では、このところ連日の様に40人近い新規感染者が「発見」されている。当然第2波を心配する声も聞こえるものの、6月19日からは休業要請の全面解除に加え、県境を跨いだ通行もOKとなった。一度動き始めた「経済」という歯車は、もはや誰にも止められない、と言うところだろうか。
東京に限って言えば、都知事選挙のスタートも加わり、今更あの自粛生活に戻る、という選択肢はNOなのだろう。コロナ前の日常(に近い)生活にもどりつつある今、コロナ感染は「いわゆる夜の街」だけの出来事であり、普通に生活している我々庶民が、今さら通勤や買物を自粛する必要はない、という居直りや達観が、皆の心を支配している。
マスクをして、良く手を洗い、他人とのディスタンスをとっていれば、「ちょっと不便だけど元通りの生活」が満喫出来る様になったのだ、と誰もが思いたいし、国や各自治体も、喜んでお墨付きを与えてくれているのだ。
筆者自身も正直そう思いたい。それを「早計」と非難することは出来ない。誰しもが、2か月間の長い「自粛」に対する「見返り=ご褒美」が欲しいのだ。それは10万円の給付金だけではないし、もちろん2枚のガーゼマスクでもない。特にこの自粛期間にちゃんと我慢した人ほどそうであり、皆、この後来るかもしれない第2波までの、ひと時の「自由」を謳歌したいのだ。それはもちろん制限付きの自由ではあるが、そもそも制限なしの自由なんて世の中に存在しない訳なので。
コロナ後のデパート
百貨店の自粛休業から再開への経緯については、本紙6月1日号で伝えているが、業績の回復については、各地各店ごとに「まだら模様」と言ってよい。実態として、店舗ロケーションやフロア・業種によって売上の差(前年比)が大きく異なる状況だ。入口を絞り、モニターによる体温チェックや手指の消毒スプレーといった対応だけでなく、時短営業や、「混雑緩和」を合言葉に、セール企画の中止を「判で押した様に」横並びに発表している。
主力のファッション、特にシーズン性の高い衣料品については、正直2か月分の在庫を、セールで処分したい、という「本音」と、混雑を避けるため集客を控える、という「建前」の板挟みの間で、苦悩する担当者の顔が、マスク越しに垣間見える。
苦肉の策として、三越伊勢丹は「夏のクリアランスセール」を単純に中止にするのではなく、オンラインストアのみの実施に切り替えた。実施期間も6月9日から8月31日までの3か月弱という超ロングランに設定するという徹底ぶりだ。お買物のタイミングはお客様にお任せします、というスタンスだ。髙島屋もほぼ同じ対応となる。逆にそごう・西武は混雑緩和という大前提は同じでも、セールを6月15日から前倒しスタートとし、7月19日まで期間を延長する、としている。
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