昭和24年10月創刊

メニュー
メニュー

デパートのルネッサンスはどこにある? 2020年6月1日号

 5月25日に緊急事態宣言の全面解除が発表された。2か月にも及ぶ自粛休業を余儀なくされた全国のデパート各店は、5月中旬から各社各様の動きをして来た。

都心でも百貨店は続々と営業再開へ 

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月7日に緊急事態宣言が発令された。政府及び各都道府県知事からの要請を受け、百貨店大手各社は翌8日から営業自粛=一斉休業に突入したことは、4月15日発行の本紙号外で伝えた通りだ。

 それから丁度一か月後の5月14日、39県で緊急事態宣言が解除されたことを受けて、全国の百貨店で営業再開や、食品や生活必需品に止まっていた営業範囲を、拡大する動きが広がっている。商業施設や飲食店などでも同様の動きが、首都圏、関西圏、北海道を除いて拡大した。

 営業を再開した百貨店ではいずれの店舗でも、営業時間は短縮する。また、顧客や従業員の手指のアルコール消毒の徹底、飛沫感染防止シートの設置やソーシャルディスタンス表示、混雑時の入店制限などを行うことで徹底的な感染防止を図るのは言うまでもない。

髙島屋の再開判断に顧客から賛否       

 この5月14日時点で、大手百貨店のうち髙島屋は、二子玉川、立川、柏といった、いわゆる郊外立地のショッピングセンター型店舗で、衣料品、身の回り、雑貨売場の営業を再開した。東京都心含め、一部地域では緊急事態宣言が継続していることから、「全社的」な再開には至っていなかった。

 4日後の5月18日、日本橋髙島屋S.C.、新宿のタカシマヤタイムズスクエア、大阪店、横浜店の生活関連売場で営業を再開。これらの店舗では、前日までは食料品など一部フロアを除いて臨時休業していた。岐阜、高崎などの店舗ではすでに全館で営業を再開しており、JR名古屋タカシマヤも5月19日から通常営業での再開となった。

 髙島屋は、これらの地域では緊急事態宣言は解除されていないが、地域の顧客ニーズに加え、「従業員や取引先の雇用を維持するため」再開に踏み切った、としている。

 この髙島屋の営業再開は、世論を二分するほどの話題とはならず、一部の業界人や、ネット民が賛否を表明したに止まった。業界を中心に「勇気ある行動」という意見がある一方、「大手百貨店なのに、目先の利益に目が眩んで、パチンコ店と変わらない」という辛辣な意見まで多種多様だ。

大丸松坂屋、西武そごうが追随する

 いずれにしても大手デパート各社は、髙島屋が先鞭をつけたおかげで自粛終了への道筋が整ったと判断し、次々に営業再開の方向性を打ち出した。

 大丸松坂屋百貨店は、各自治体からの休業要請の解除を受けて、5月19日から10店舗の全館営業を再開。大丸心斎橋店、梅田店、京都店、松坂屋名古屋店などで、平日のみ営業する。一方、大丸東京店、松坂屋上野店、大丸札幌店については、食料品売場のみの営業を続ける、としていたが、26日からの全館営業再開を発表した。先行再開店舗同様、時短で土日は休業としている。

 39県で緊急事態宣言が解除された一週間後の5月21日、大阪府、京都府、兵庫県の関西圏が解除の対象となり、阪急阪神、近鉄などの関西資本の百貨店も次々と営業再開の列に加わった。

 次に西武・そごうグループだ。西武秋田店、そごう徳島店を5月15日から、西武大津店、そごう広島店を5月20日から、西武福井店を5月21日から全館営業を再開。

 5月22日まで食品売場を除き臨時休業していた主要各店は、5月23日から生活必需品を扱う売場を中心に営業範囲拡大した。西武では池袋本店、渋谷店、所沢S.C.、東戸塚S.C.。そごうでは横浜店、千葉店、大宮店、川口店の各店だ。いずれも時間を短縮しての営業ではあるが、一都三県の解除前であり、なし崩し的な営業再開に歯止めが掛からない印象だ。

松屋と三越伊勢丹は最後まで慎重姿勢

 松屋銀座は5月25日に地下の食品を、6月1日に全館をと、段階的に営業再開のステップを踏んでいるが、松屋浅草は継続して全館休業を続けている。

 最後に残ったのは三越伊勢丹ホールディングスだ。緊急事態宣言が解除された地域を中心に、仙台三越、名古屋栄三越、広島三越、静岡伊勢丹などで営業を再開した一方、首都圏の6店舗(日本橋三越本店、伊勢丹新宿店、銀座三越、伊勢丹立川店、恵比寿三越、伊勢丹浦和店)では引き続き「頑なに」食料品を含む全館で臨時休業を続けていた。只それも今回の解除を受け、首都圏6店舗の30日土曜日再開を5月26日に発表した。

デパート以外の商業施設の葛藤

 郊外拠点のイオンは、5月28日から全国展開するSCイオンモールの全142店舗で全館営業を再開する。現在も緊急事態宣言下で休止している、北海道や首都圏の26店舗を含め、ほぼ2カ月ぶり営業再開となる。

 住友系SCテラスモールは5月25日より食物販のみ先行再開。三井系のららぽーとも態度を保留しており、中々慎重だ。

 パルコは広島店と福岡店を20日から、名古屋店を22日から営業再開した。緊急事態宣言の解除に伴い、14日からすでに仙台と松本、静岡各店の営業を再開していた。その他、首都圏に点在するパルコ10店舗は、6月1日を目途にテナントへの再開の打診を始めたと聞く。新宿アルタや109も同様だ。だが、皆が気にするのはJR系のルミネだ。王者の貫禄なのか「動かざること山のごとし」で中々手の内を見せない。

 各SCとも、解除一歩手前のここまで来て、「勇み足」の再開によって、自粛クレームの餌食にはなりたくない、というのが本音のようだ。

地獄への道は善意で敷き詰められている

 コロナ禍という残酷な「踏み絵」により、好むと好まざるとにかかわらず、営業再開と自粛継続という二色に塗り分けられてしまったデパートの従業員やテナントスタッフ達はどう考えているのだろうか。 会社の上層部からは「あなた達の雇用を守るため」という大義名分は与えられた。さりとて、実際に顧客(当然自粛警察も含まれる)の「本当に安全なの?」、という問い(クレーム)を受けるのは、紛れもなく現場のスタッフであり、社長や重役が矢面に立つことは決してない。

 同じ様な理不尽さは、コロナ関連のニュースで、毎日のように目にする。総理や担当大臣は国民に「自粛生活」を強いるだけで、解除の基準は知事たちに丸投げ。一律10万円の給付金も、「ネットで素早く」と格好の良いことだけ言って、肝心の実務は当然各市区町村役場が担い、結局は「郵送」での対応に切り替わった。例のマスク配布も同様なのは言うまでもない。

レナウン破綻はアパレルの終焉の始まりか

 デパートを取り巻く環境は、更に厳しさを増している。アパレル大手で東証一部上場のレナウンが破綻した。5月15日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は138億円余り。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や百貨店や商業施設の休業などにより売上が激減し、資金繰りに行き詰った。

 リモートワークが増えて、メンズスーツ業界も壊滅的な打撃を受けた、とも聞く。コロナ禍によるアパレル崩壊の始まりなのか。デパートにおける「出口戦略」は、明確な目標設定が見いだせず、暗中模索が続いている。

 コロナで亡くなった方には申し訳ないが、日本における死者数が世界の中で桁違いに少ない、という謎だけが残った。

※営業再開日については、各社の都合により、予告なく変更されることがあります。その場合はご容赦ください。

連載 デパートのルネッサンスはどこにある?

デパート新聞 紙面のロゴ
昭和24年10月創刊
百貨店に特化した業界紙
デパート新聞 購読申し込み