デパートのルネッサンスはどこにある? 2025年12月01 日号-第127回「モノ消費からコト消費」のその先は

「モノ消費からコト消費」のその先は 

CAプロジェクトにおけるトキ消費、イミ消費、エモ消費

 本コラム「デパートのルネッサンスはどこにある?」では「これからの百貨は、モノを売るだけでなく、体験価値を提供する『コト消費』に注力すべき」等と、聞いた風なコトを良く述べている。※情報というモノはすべからく鵜呑みにしない様に反省を込めて。もちろん一般論としては間違っていない。前号でお伝えした松屋銀座の招福袋やお化け屋敷企画の記事でも、体験やエンターテインメント性重視の方向性は明確だ。

 当然松屋以外の百貨店もそうであるし、小売り、販売に関わるヒトは皆が「只、モノを売るだけではいけない!」という天からの大号令を聞いたかの様だ。因みに、ここでいう天とは、もはや神様とは呼ばれなくなったものの、まだ「お客様」と様をつけて敬うやまわれる顧客、消費者のコトである。

 特に現代は、百貨店のライバルは駅ビルや郊外型の大型ショッピングセンターではなく、アマゾンだという事が判ったからだ。ネット通販(EC)に対抗するには、モノ消費よりもコト消費に於いてこそ、デパートに差別化という恩恵をもたらすコトは明白だからだ。もちろんデパートに限らずだが。ネット上で「実体験」を提供するのは、さすがにまだまだ無理だろう。バーチャルリアリティに大金を出すのなら、店頭まで足を運んだ方がベターだからだ。

※因みにコンビニは、もしかしたらデパートとECの中間地帯かもしれない。これはまた別の機会に議論したいと思う。
用語解説:ECE C とは、ElectronicCommerce(エレクトロニック・コマース)の略で、インターネットを介して行われる物やサービスの取引。eコマース(イー・コマース)と呼ばれたり、日本語で「電子商取引」と呼ばれたりもする。一般的にはネットショッピングやオンラインショッピングなどと呼ばれ、ECサイトを通じてさまざまな商品が売買される。

西洋占星術では

 さて、このモノからコトへの消費シフトはいつから始まったのだろう。 ここからは少しだけ脱線するが、実は家内に聞いた話なのだが、西洋占星術、いわゆる占いの世界では、今現在を「風の時代」と呼び、これは2020年に始まったそうだ。
丁度新型コロナウイルスによる、世界的なパンデミックのタイミングだ。

 それまでは、物質中心の価値観から「地の時代」と呼ばれていたが、それが「風の時代」となり情報・精神性・体験重視の価値観へと移行したのだという。地から風への移行が、正に「モノ消費からコト消費へ」のシフトを象徴しているというのだ。風の時代が始まったのは2020年12月22日で、木星と土星が水瓶座で重なることにより時代が変化したという。
※これを「グレート・コンジャンクション」と呼ぶらしい。

 特徴として、情報、コミュニケーション、柔軟性、精神的な豊かさが重視される時代であり、所有より共有、物質より精神、固定より多様性への、価値観の変化を表す。
※コロナ禍を経て、色々な価値観が転換した事が偶然なのか、必然だったのか、もちろん筆者には不明だ、申し訳ないが。時間があればもう少し勉強したい。

 只、空気感というか、その時代の人々の「集合知」みたいなモノが変わる、転換する、という現象は常に起こっているのではないか、とも思う。バイブスとでも言うのか?

コト消費への契機

地の時代(1842年から約200年以上続いた)

 物質的成功、所有、地位や肩書きが重視され、「持つこと」が豊かさの象徴である資本主義経済の時代」を指す。

風の時代(2020年から約2 0 0 年続く予定?)

 情報や体験、つながり、精神的充足が価値の中心となり、「使う・共有する・体験すること」に価値が移る、とされる。サステナブルや多様性の尊重が広がり、消費も「コト消費」へシフトする。

 具体的には、旅行や体験型サービスを指し、モノを買うより「思い出」を重視した、サブスクリプションやシェアリングエコノミーといった、所有せずに利用することが一般的だ。風の時代になって「目に見えない価値」が重要視される様になったのだ。

 「風の時代」は、西洋占星術的には 240年ぶりの大転換であり、物質的な「モノ消費」から、情報・体験・精神性を重視する「コト消費」への移行は、この時代の象徴的な現象だ。

 つまり、これからの豊かさの尺度は「何(富?)をどれだけ持っているか」ではなく「(自分が)どんな体験をし、誰とつながるか」で測られるようになる、ということだ。なるほど、我々はグローバル時代に突入したのだな、と思う一方、アメリカでも我が国でも「○○ファースト」という自分達さえ良ければそれで良い、という反グローバル主義的な動きも強まっている様に感じる。一時の反動(揺り戻し)なのかどうかは、筆者にも家内にも占星術でも判らないが。

モノ→コト→トキ

 さて、ここからが本題だ。我々小売りに携わる者は「モノ消費」から「コト消費」、だけで満足していてはいけない。時代は更に「トキ消費」」の時代へ突入しているというからだ。そして特にZ世代では「イミ消費」「エモ消費」への興味が高まっているのだという。

 本コラムでは、○○消費それぞれの消費行動の特徴や事例、そして顧客の変化に対し、百貨店含め全小売り企業が今、対応するべきことについて考える。
先ずはそれぞれの○○消費を説明しよう。

1.モノ消費(物的価値の消費)

定義:商品やサービスそのものを購入し、所有することに価値を見出す消費。
具体例:・ブランドバッグや高級時計や最新のスマートフォンを購入する、等々。
特徴:所有欲を満たす。物質的な価値が中心。

2.コト消費(体験価値の消費)

定義:商品やサービスを通じた体験や出来事に価値を見出す消費。
具体例:• ワイナリーツアーに参加して、ワインの製造工程を体験する。・着物を着て京都を散策したり料理教室や陶芸体験に参加する、等々。
特徴:思い出や経験が重視される。SNSとの親和性が高い。

3.トキ消費(時間共有型の消費)

定義:「今、ここでしか体験できない」時間や空間を共有することに価値を置く消費。
具体例:• 限定開催のポップアップストアや地元の夏祭りや花火大会に足を運ぶ。
・ライブ配信イベントにリアルタイムで参加する、等々。
特徴:一期一会の価値や同時性、共時性が重要。

4.イミ消費(意味・共感型の消費)

定義:商品やサービスの背後にある「理念」や「社会的意義」に共感して行う消費。
具体例:• サステナブルな素材を選択したり地元の伝統工芸品を応援購入する。・売上の一部が寄付される商品を選ぶ、等々。
特徴:自己表現や価値観の反映。社会貢献や倫理性を重視。

5.エモ消費(感情共鳴型の消費)

定義:感情的なつながりや「推し活」など、心の動きに基づく消費。
具体例: • 応援したいクリエイターのクラウドファンディングに参加する。・推しのアイドルのグッズを大量購入する、等々。
特徴:感情の高まりが購買動機となる。「好き」「応援したい」という気持ち

※以前は「オタク」と呼ばれ、気持ち悪がられたが、この20~30年で完全に市民権を得たかの様だ。アイドルオタクは「推し活」として認知されたのだろう。但し「推しは尊(とうと)い」と言うと、果ては「宗教への傾倒」という大昔からの難問に突き当たる。当然筆者にはそんな「大それた」問題を論じる、資格も見識もな
いので、ここで一旦話を終える。

消費の進化は続く

 このように、現代の消費は「買う」こと自体よりも、「なぜ買うのか」「誰と、どんな気持ちで体験するのか」といった物語や感情が重視される様になっている。
 であれば、デパートにとってのラスボスであるアマゾンや楽天に代表されるEC ( ネット通販)に対し、これらのコト消費、トキ消費、イミ消費、エモ消費は、地方百貨店がECとの差別化を図る上で非常に有効なアプローチなのではないだろうか。

 これらの消費スタイルは、単なる「モノ」の購入ではなく、体験や時間の共有、意味や共感、感情的なつながりを重視するため、地方百貨店がその地域でのリアルな「場」の強みを活かせるからだ。

 例えば、地域の伝統や文化を体験できるワークショップやイベント(コト消費・トキ消費)、地元産品やサステナブル商品を通じた共感(イミ消費)、ファン活動や感情的なつながりを促す限定グッズ販売やイベント(エモ消費)などが考えられる。

 こうした消費体験はECではほぼ提供出来ない「場の価値」や「人とのつながり」を生み出し、地方百貨店の魅力を高めることが可能なのだ。

消費の進化とCAプロジェクト →「意味」と「共感」へ

CAプロジェクト

 さて、ここからは「我田引水」の誹(そ し)りを甘んじて受けるが、こうした取り組みを推進しているのが、デパート新聞社による、地方デパート逆襲(カウンターアタック、CA)プロジェクトである。

 特に津の松菱百貨店からスタートした「選べるガチャガチャランド」の開催は、同店7階の遊休スペース活用から始まったイベントを、2025年夏から全国の地方百貨店に波及している。

 その特徴は、ガチャガチャマシンに入れず、むき出しのままのカプセルトイ3000種類を顧客が手に取って選べる状態で販売していることだ。
※当然カプセルの中身は確認出来る状態だ。因みに松菱百貨店には、SNSで情報を得たお客様が近畿、東海地方の10府県からこの催事を目的に来場されている。

「選べるガチャガチャランド」は2025年末までに以下の地方デパートで開催する予定だ。

  • 鳥取県米子市:JU米子髙島屋
  • 兵庫県姫路市:山陽百貨店
  • 埼玉県熊谷市:八木橋百貨店
  • 秋田県秋田市:秋田西武
  • 山口県山口市:山口井筒屋
  • 石川県金沢市:金沢エムザ
  • 埼玉県川越市:丸広百貨店

※日程・場所の詳細は「選べるガチャガチャランド」をご確認ください。

 弊社は会場のセット、販売指導から集客ノウハウ、カプセルトイの在庫管理まで、全てのオペレーションを百貨店に伝授し、企画を成功させている。我々デパート新聞社は、今後も有志の地方デパートに、こういった取組みを拡大して行きたい意向だ。

CAは脱モノ消費

 図で示した様に「選べるガチャガチャランド」:モノ消費 だけでなく、「ライブペインティング」:コト消費、「お化か屋敷、マッピー号」:トキ消費、「つながるデパートカーニバル、相続無料相談会」:イミ消費、「食べる本屋さん」:エモ消費と言った、あらゆる消費フェイズで地方デパートを応援していく所存だ。

 もう一つだけ付け加えておきたいのだが、「選べるガチャガチャランド」は単なるモノ消費ではない。それはお客様の店舗滞在時間が驚くほど長いコトが証明している。

 会場には何百種類のカプセルトイが何千個もあり、その中から「宝探し」を体験しているのだから、当然といえば当然だ。買う楽しみ、保有する充実感だけでなく、欲しいものを探す事自体が、顧客にとって「至福の時間」なのである。

 従って選べるガチャガチャは、コト消費(体験価値)やトキ消費(限定性共時性)、エモ消費(推し活)の側面も持っているというコトは容易に想像できるだろう。

 そして選べるガチャガチャは、イミ消費(エシカル消費)でもある。
用語解説:エシカル(消費)「エシカル」とは、一般的に「倫理的な」や「道徳的な」という意味を持つ言葉。具体的には、人や社会、地球環境に配慮した行動(消費)や考え方を指す。

当たりはずれ

 そもそも従来のガチャは、マシンを介して購入するため、「何が出てくるかわからない」システムだ。前払いしたけど、お目当てのカプセルトイをゲット出来るかどうかは、確率の問題だからだ。敢えて言うが「ギャンブル」の要素はけして小さ
くない。小さな子供達相手に公然と「はずれありき」で販売をするのは問題だと筆者は考える。
※クレーンゲームの様な「体験」を伴うモノとは明らかに異なる。

 いやいや、購買者はそんなことは事前に理解しているのだから「違法性」はない、という反論はあるだろう。只、違法ではなくても、仮にも1400億円を超える市場規模となった現在、もう少し議論がなされても良いのではないだろうか。ガ
チャの市場規模は直近2年間で2倍になったのだから尚更だ。

 筆者がテレビを見ていたら、ガチャガチャを買う人の「何が出で来るか判らないから楽しい」というセリフを、ニュースキャスターがオウム返しにして肯定的に伝えていた。本当にそうなのだろうか、1個300円も500円もするのに、欲しくない物が出て来て「楽しい」なんてことがあるだろうか。
※もちろん、全種類コレクションしていて、コンプリートしたい、という客もいるではあろうが。

ギャンブル?

 一時、お菓子のおまけについて来る「食玩」目当ての子供が、お菓子を大量に捨てて問題になった事案があったが、それに近い状況がガチャガチャ界隈で起きているのではないのだろうか。
※因みに「選べるガチャガチャランド」では、食玩もお菓子抜きの単体で販売しているので、お伝えしておく。

 もし仮に、購買者が5種類の中からお目当てのトイ欲しさに、4個のトイを廃棄していたとすると、購買者は5倍の金額を支払っている事になる。逆に売り手(メーカー)はガチャガチャマシンというランダムな販売手法を導入した事により、人件費を大幅にカットした上に、通常の販売手法に比べ5倍の利益を手にしている、と考えるのは、筆者の妄想なのであろうか。是非、筆者より数倍頭の良い先生方に、このコトを考えて貰いたい。

 普通に販売する「選べるガチャガチャランド」に対し、ガチャガチャマシンは「ギャンブル」とは言わないまでも、客の射幸心を煽る可能性があるのではないかと。
※用語解説:射幸心を煽る
思いがけない幸運によって利益を得たい、苦労なくいい思いをしたい、といった心理を助長すること。くじ、賭博、稀にレアアイテムが当る販売方式、などが「射幸心を煽る」と形容される場合が多い。

弊社による、地方デパートCAプロジェクトは、地方で孤軍奮闘する百貨店が、その地域の「公益」拠点である事に着目し、それを支援することがミッションである。

 ガチャガチャの市場規模を考えれば、大変小さなカウンターアタック(逆襲)ではあるが、弊社は「選べるガチャガチャランド」を足掛かりに、今後も地方百貨店を活性化させていく。
もし、デパート新聞社のCAプロジェクトに興味があれば、いつでも連絡して欲しい。

 また、是非この機会に、弊紙の購読も併せて検討して貰いたいと思う。

※問い合わせについては、こちらを参照願いたい。

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