デパート新聞 第2676号 – 令和3年12月1日

10月東京は4.9%増

 日本百貨店協会は、令和3年10月東京地区百貨店(調査対象12社、24店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1048億円余で、前年同月比4・9%増(店舗数調整後/2か月連続増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭6.8%増(91.7%)、非店頭マイナス12.3%(8.3%)となった。

百貨店データ

  • 3社商況10月
  • 10月店別売上前年比(%)
  • 都内各店令和3年10月商品別売上高
  • 関東各店令和3年10月商品別売上高

明日を目指す百貨店探訪 第7回 ㈱ながの東急百貨店

今回は、㈱東武百貨店船橋店 田中尚店長を直撃インタビュー!

  • 「先ず、ながの東急の現状についてお聞かせください」
  • 事業ビジョン「共に暮らしを育む」とはどのようなものですか」
  • 「構造改革の具体的な内容はどのようなものですか」
  • ECについて
  • 顧客の特性について
  • 地域との取り組みについて
  • 外商について
  • 店頭について
  • 地場産業の育成を目指す長野県ならではの農産物や加工品、伝統工芸などの地域の魅力を発信する「しなのづくり」プロジェクトの発足
  • 「貴社のイチオシ教えてください。」

続きは ㈱ながの東急百貨店 平石直哉社長 直撃インタビュー – 明日を目指す百貨店探訪 第7回 を御覧ください。

地方百貨店の時代 その28 – 固定客づくり

デパート新聞社 社主
田中 潤

ロックイン効果

 固定客をいかに増やしていくかはデパートの営業上、最大のテーマである。そのための一つの方策として、ロックイン効果というものがある。これは、消費者がある店や ある商品を使い慣れると、継続的にその店を使い続ける現象をいう。見方を変えれば、それを称して固定客というわけなので、特別新しい話ではないと思われる方も多いだろう。しかし、デパートが現実にロックイン効果を起こすノウハウを持つことができれば固定客を作ることが容易になることは、確かである。

 たとえば、パソコンやケータイ電話などは、使っていた機種を別の機種に替える際には
①使い方を改めて勉強しなければならない
②買換え手続が面倒
③その後の支払いも含め金額(コスト)が不安
など、いくつかの縛りがあり、中々乗りかえる踏ん切りがつかないものである。メーカー側も金額設定を複雑にするなどいろいろ仕掛けをして、顧客を手離さないよう力を 注ぐ。まさにこれはロックイン効果を実践しているといえよう。

デパートでの活用

 では、デパートがロックイン効果を活かすために具体的に行うべきことは何だろう。販売員の商品知識、その店にしかない希少商品、大量の品揃えといったハード部分の 充実と、接客が心地良い、店がきれい、商品をすぐ自宅に届けてくれるといったサービス部分の環境整備が挙げられる。そして、ロックイン出来る最大の決め手は、その店に「行きたい、そして、居続けたい」という欲求を顧客に持ってもらうこと尽きる。むろん、行きたくなる動機は前述したハード部分、サービス部分の集積であるが、視野を拡げてデパートとその周辺も含めてデパートに居続けたくなるための環境づくりを考えたい。そこでは、デパートだけでなく地域のステークホルダーを巻き込んだ公益性が重要なキーワードになるはずだ。

 デパートとその周辺も含めたエリアが、居続けたい場所という形で様々な環境向上の具体案を実行して顧客をロックインすることが地方百貨店の目指すべき目標である。

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 11月になり、コロナウイルス感染リスクが減退したため、飲食店の営業が通常通りの形に戻ったが、客足は一向に回復していないようだ。一度、店に立ち寄らない習慣がつくと、お金を遣うことを伴う行動にはかなりブレーキがかかるようである。

 心配なのが、体力のない飲食店の廃業ラッシュである。この1年間多額の感染協力金を得た事業主は、営業再開後の厳しさに相当のショックを受けている。そもそも、普 通に営業していても大した利益はないのに、ほとんど来店客のない現状では「とても先が見えない」と閉店を決断してしまう懸念がある。

 思いがけない協力金バブルが、結果的に店じまいを後押ししたとしたら、なんと切ないことだろう。

無駄の物語 part23 – 俳句から無駄を学ぶ

犬懸坂祇園
作詞、作曲などをしております

電車内の風景 合理性の養成所

メールの弊害

 電車に乗っていると、ほとんどの人が携帯電話を触っていることに気づく。
20世紀にはまったくなかった光景が日本中で当然のように繰り広げられているのだが、これはどのくらいその人たちの生活、あるいは人生に影響を与えるようになったのであろうか。

 筆者の価値観から言うと、ゲームをしている人は初めから無駄なことをしていると認識しているという意味で、まだリスクは少ない。しかし、誰かとの伝達手段として積 極的な思考でメールを打っている場合は、かなりマイナスな活動になっているように感じる。メールは、最短の情報交換以外は、その内容にかかわらず、相手とのコミュニケーションに不調を生じさせる原因となる可能性が少なくないからである。

 ずっと携帯をいじっているということは、そのリスクが大きくなる。そもそも、昔はそんなことをする必要はなかったわけで、いつでも相手に連絡できるようになったら 急に用事が増えるというものでもあるまいし、メールを打つことで何かが大きく良い方に変わるはずもない。電車内でのメールには、自分の暇つぶしのために送っているという自分本位の合理的思考が色濃く出ているのである。

 メールにより様々な場面で相手とつながりやすくなってはいても、本来顔を合わせて行うべきコミュニケーションがより豊かになる可能性は極めて低い。何度も言うが、 人はメールで自らの言葉を正確に、かつ相手の立場に立って伝達するための訓練がなされていない。

 メールを打てば打つほど、やりとりのどこかで相手との関係にトラブルを起こす可能性があるにも関わらず、自分の心にひととき安心をもたらすためだけにメールを送信 し続けて良いのだろうか。また、メールを打ち、送信して一方的に納得し、本来いろいろ考えておくべき送った先の相手の状況について、意識が遠ざかってしまうということもあろう。相手と向き合って「サヨナラ」と言う儀式があるわけではないので当然であるが、自分自身は一方的に相手の顔を脳から消してしまう。相手への気遣いが見えてこないのである。

五感を働かせる

 ところで、ゲームをしたり、メールを打つなど携帯電話に没頭することは、乗車時間を合理的に使っているようでいて、実は時間の使い方としては決して安心できるもの ではない。世の中はそれほど安全ではない。見知らぬ人たちの中で過す時は、自己をフリーな状態にして置くことで周りの異変に対して五感を働かせることが必要である。つまり、ただ電車に乗って周りを見ているという無駄な時間を持つだけでも、状況の変化に応じた次への備えができるわけである。携帯電話に没頭することは、安全性という面からもリスクがあると言えるだろう。

連載:デパートのルネッサンはどこにある – 生き残りをかけ模索続く百貨店(前編)

SDGsOMO (前編)

 本紙11月1日号で、筆者は「百貨店の変革」を唱えた。ビジネスモデルの転換や「脱百貨店」の一例として、リアルとデジタルの融合と、それによる百貨店の「ECシフト」を語った。 続く11月15日号では、もうひとつの柱として「富裕層シフト」を取り上げた。以下整理してみた。

○デジタルシフト

 もはや「ネット社会」という言葉を聞かなくなるほど、デジタルの進歩が我々の生活のバックボーンとなった現在。百貨店の商売がDX化、OMO化するのは至極当然のことである。
※OMOは後述

 それに応じて、館の来店客が減り、結果として宅配シェアが増えるのも自明の理だ。予想外なのはコロナによって4~5年その変化のスピードが速まったコトだけである。帰結は変わらないのだ。

 これは科学の進歩により、半世紀前には「SFの世界」だった話が、具現化した「だけ」である。
この間、仮想空間という「もう一つの世界」もVR、ARからメタバースへと進化し、それに伴う販売手法もネット課金やサブスクリプション(定額制)へと、変化を続け ていかざるを得ない。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年12月1日号-37 を御覧ください。

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