ヨドバシカメラの素質と資質

 本紙連載コラム「デパートのルネッサンスはどこにある?」で度々言及し、筆者が注目している、ある企業のニュースを取り上げたいと思う。ヨドバシホールディングスによる、いわゆる「下請けいじめ」のニュースだ。

 言うまでもなく、ヨドバシはセブン&アイの井阪隆一社長(当時)が「そごう・西武」を実質「売却」した先であり(実態は外資ファンド経由だったが)、今リニューアルの真っ最中の西武百貨店池袋本店の面積を半減させ、同ビルでの同居を予定している企業である。

 拙著「セブン&アイはなぜ池袋西武を売ってしまったのだろう」を読まれた方は、理解されていると思うが、ヨドバシはビックカメラとヤマダ電機がしのぎを削っていた池袋の街の「駅中の一等地」を手中にするため、結果として池袋西武を半減させた。

 売ってしまったセブン&アイは、と言うと井阪社長は既に退陣した。逆に、2年前の夏にオーナーである井阪社長に「異を唱え」池袋西武のストライキを主導した労組委員長の寺岡氏が、現在は西武百貨店池袋本店の店長として、リニューアルに取り組んでいる。

 皮肉な事なのか必然なのか、こうした「企業の論理」は筆者の想像を超えているので判らないが。

 西武百貨店については、7月の3階化粧品フロアのリニューアルに続き、今月から、いわゆる「デパ地下」の五月雨オープンが始まった事については、池西ウォッチャーを自任する筆者がこの後も詳しくお伝えしていくつもりだ。

 さて、いつもの様に前段が長くなってしまったが、今回俎上に載っているのは、池袋西武を買ったヨドバシである。

 それではかつて売上日本一を誇ったデパート、池袋西武の建物の半分を手に入れ、家電量販店業界で1位を目指すヨドバシホールディングスはどうなっているのだろう。思わぬところで今、話題になってしまった。

ヨドバシカメラに公取委勧告、PB家電の製造代金など不当に減額下請け6社に計1349万円支払い

※2025年9月8日のニュースから

 家電のプライベートブランド製品の製造を委託する下請け業者への納入代金などを不当に引き下げたとして、公正取引委員会は8日、家電量販大手「ヨドバシカメラ」の下請法違反(減額の禁止)を認定し、再発防止などを求める勧告を行った。

 ヨドバシカメラは昨年1月~今年3月、自社で販売する家電PB製品の製造を委託する下請け業者に対し、決められた納入代金から不当に減額した代金を支払っていた。また、顧客から依頼された家電の修理を下請け業者に委託した際の費用なども減額していた。同社は、不当に減額していた計1349万円を既に下請け業者6社に支払ったという。

 家電業界では、売上に応じたリベート(販売奨励金)などの慣習が残っており、今回の減額も「売上リベート」や「協賛金」など複数の名目で行われていた。

 現行の下請法は、発注側の企業が下請け業者側と決めた納入代金について、不良品の製造など業者側に原因がある場合を除き、決定後の減額は合意があっても禁じられている。

 家電量販大手を巡っては、下請法違反の事案が相次いでいる。公取委は今年2月、「ビックカメラ」がPB製品の製造を委託する約50の業者に対し、リベート名目などで総額計約5億円を減額していたとして勧告を出した。2023年6月には「ノジマ」も同様の事案で勧告を受けた。

 PB製品の販売に乗り出した家電量販店の一部では、下請法の認識不足が原因で、違法となる減額を慣習として下請け業者に行っていたとみられ、公取委と中小企業庁が今後、業界全体に対して注意喚起を行う。

 ヨドバシカメラの藤沢社長は9月8日付けで、「法令に抵触すると判断された協賛金等の受け取りを廃止した」とし、「勧告を真摯に受け止め、再発防止の徹底に努める」とのコメントを出した。

 ヨドバシカメラに関しては、本紙2024年7月15日号の4面のコラムに「天国と地獄」と言うタイトルで「大手百貨店3社はインバウンドで絶好調、一方西武池袋はヨドバシ化で面積半減」という記事を掲載した。 その後半の小見出しで、ヨドバシの別の不名誉な状況を伝えている。
※以下再掲載

ブランドイメージ

 2024年2月に発表されたあるランキングを紹介したい。

 インターネット上にあふれる勤務先の給料や待遇などの不満を、企業の与信管理を支援するベンチャー企業が集めた大量の口コミデータを基に、働き方に関する従業員の不満が多い企業をランキングしている。

 対象期間は2023年1月から12月までの1年間。上位には金融、不動産、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた。働き方に関するネガティブ情報は9230件で、1社当たりの平均は約3件だが、ランキング上位の企業は平均をかなり上回るネガティブ投稿を集めた。従業員の不満投稿が多い企業ランキング

順位企業名件数
1位JR東日本84件
2位日本生命79件
3位イオンリテール54件
4位アウトソーシングテクノロジー41件
5位トランスコスモス40件
6位ヨドバシカメラ39件

イオンと並び、小売り部門の不名誉な代表がヨドバシだ。

6位 ヨドバシカメラ

残業に関する不満

「残業はマックスまでさせられることが多く、予定が全く立てられない」
「1日の労働時間が12時間と非常に長いため、休日があっても疲れを取るだけで終わる。ワークバランスが全くない」
「サービス残業が多すぎてプライベートはほぼない」
「残業が多く、体力的にきつい。実際体調やメンタルを崩して、休職する人や退職していく人は少なくない」
「残業ありきの人員配置。定時に上がると店が回らなくなる」

組織や社風に関する不満

「基本トップダウン。下からの意見を吸い上げる気はない。非上場のため、それを直す気もない」
「経営トップや店長の言うことが絶対なので、現場にとって合わないこと、非効率なことでもやらなきゃいけない」
「管理職の言い方がキツかったりするので人が結構辞める。昭和のやり方が残っている」

ハラスメント関連

「『利益が出るもの』に対してノルマを課すことが多く、これが達成できないと、パワハラ一歩手前の叱責を受ける」
「客からのセクハラ等は日常茶飯事」
ヨドバシで働く従業員からのクレームは切実なものが多い事に驚く。
これをもって「ヨドバシはブラック企業だ」と騒ぐ気はない。只、少なくとも働く人間にとって「優良企業」であるとは決して言えないことだけは確かだ。
※以上再掲載

公取の勧告 

 こうしてみると、ヨドバシは、勤めている従業員にとっても、取引先にとっても、優良企業とは呼べず、「不良企業」とでも分類される企業の様だ。
「同じ家電量販店では、ビックカメラもノジマもやっているのでは」と思う方もおられるかもしれないが、筆者はこう思う。同業他社の起こした問題を見て「自ら襟を正す」事を怠った、と。以下に今回の不祥事に関して公取が公おおやけにした勧告を示す。

株式会社ヨドバシカメラに対する勧告について

令和7年9月8日公正取引委員会中小企業庁

 公正取引委員会は、株式会社ヨドバシカメラ(以下「ヨドバシカメラ」という。)に対して調査を行ってきたところ、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反する事実が認められたので、本日、下請法第7条第2項の規定に基づき、ヨドバシカメラに対して勧告を行った。

 本件は、関東経済産業局がヨドバシカメラに対して調査を行い、令和7年7月31日に、中小企業庁長官が下請法第6条の規定に基づき公正取引委員会に対して措置請求(注)を行った事案である。

 (注)中小企業庁長官が、下請法第4条に違反する事実があるかどうかを調査し、その事実があると認めるときに、公正取引委員会に対し、下請法の規定に従い適当な措置を採るべきことを求めること。

1 違反行為者の概要

法人番号 11101021978
名称 株式会社ヨドバシカメラ
本店所在地 東京都新宿区新宿五丁目3番1号
代表者 代表取締役 藤沢 和則
事業の概要 家庭用電気製品等の販売等
資本金 3000万円

2 違反事実の概要

⑴ ヨドバシカメラは、資本金の額が1000万円以下の法人たる事業者に対し
ア 自社の店舗等で販売する家庭用電気製品等の製造
イ 自社が請け負う家庭用電気製品等の修理
ウ 自社が請け負う家庭用電気製品等の設定等の役務の提供
をそれぞれ委託している
(以下これらの受託事業者を「下請事業者」という。)。

⑵ ヨドバシカメラは、令和6年1月から令和7年3月までの間、リベート等の名目で、下請代金の額に一定率を乗じて得た額又は一定額を下請代金の額から差し引くことにより、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じていた。

 減額した金額は、総額1349万2930円である(下請事業者6名)。

⑶ヨドバシカメラは、令和7年8月22日に、下請事業者に対し、前記⑵の行為により減額した金額を支払っている。

3 勧告の概要

⑴ヨドバシカメラは、次の事項を取締役会の決議により確認すること。

ア 前記2⑵の行為が下請法第4条第1項第3号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反するものであること

イ 今後、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じないこと

⑵ヨドバシカメラは、今後、下請法第4条第1項第3号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反する行為を行うことがないよう、自社の発注担当者に対する下請法の研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講ずること。

⑶ヨドバシカメラは、次の事項を自社の役員及び従業員に周知徹底すること。

ア 減額した金額を下請事業者に支払ったこと 
イ 前記⑴及び⑵に基づいて採った措置

⑷ヨドバシカメラは、次の事項を取引先下請事業者に通知すること。
ア 減額した金額を下請事業者に支払ったこと 
イ 前記⑴から⑶までに基づいて採った措置

⑸ヨドバシカメラは、前記⑴から⑷までに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること。
以上

ヨドバシカメラの素質と資質 - ステークスホルダーの幸福

 筆者は、半減された西武百貨店が被害者、半減した部分を取得したヨドバシが加害者、といったステレオタイプの勧善懲悪論を説いている訳ではない。

 客商売に「善悪」の判断を持ち込む事は単なる「勘違い」であろう。であるから、百貨店という商売は「文化の創出」の一面を持っている、とか、家電量販店は単なるディスカウンター、などと言う二元論も間違いだ。
※そもそもヨドバシは(それを言ったらビックもヤマダも)家電以外のアイテムの比率を高め、総合小売り業種(百貨店?)と見まごうばかりである。大阪の梅田や秋葉原のヨドバシマルチメディア館を見れば一目瞭然だ。

 客商売は、客が買物を通じて満足を得、幸せならば良いのだ。但し、同時に社員(従業員)や取引先やステークホルダー(利害関係者)の幸福も目指さなければならない。それが大企業として、公器としての役割であろう。この一点を疎(おろそ)かにしてはならないのだ。

 ヨドバシには、この一点において、猛反省して貰いたい。池袋駅を利用する一消費者としてお願いしたい。

優良企業

 ヨドバシは優良企業か?という本コラムの内容は、いささか失礼ではあるが、では、果たして優良な企業としての要件とは何だろう。公正さであろうか。であるとすればそれは誰が判断するのか。

 答えは当然顧客である。客商売は人気商売であるから、一度何か問題があれば、来客数と売上のマイナスに直結するのだ。

 であれば、今回の様な取引先への不正を公取から注意されたり、社員が「働き難い」と感じたりすれば、すぐさま売上そして利益に跳ね返って来るはずなのだ。

 それが客商売の怖いところであり、公正さを担保するバランサーでもあるのだ。

 では、もしも客が「安ければ良い」という価値観だけで商売の良し悪しを判断していたらどうなるのか。商道徳やビジネス倫理は、適正に制御されているのか、が問題となる。

 であれば、今回のヨドバシへの公取勧告事案は、もっと大きくメディアが取り上げなくてはいけないのでは、と筆者は思う。「これは大問題だ」と声高に叫んで欲しいのだ。
ヨドバシ社長の謝罪会見とか、テレビで見ましたか、という話なのだ。

 それが、大マスコミの役割なのではないだろうか。もしヨドバシが広告主(スポンサー)である事により、少なからず不正や犯罪への追及の矛先が鈍ったりするのであれば、それこそ大問題だ。それも報道するメディア側の問題だ。

 我々消費者が、賢い消費者であり、この店はインチキ(不正)をしたのだな、と買物の度に思い出さなくてはいけないのだ。

「それでも安けりゃ良い」

という人もいるだろう。筆者にはその人を揶揄したり非難する権利も術すべもない。

 だが、賢い消費者がいなくなれば、そして不正を不正としてきちんと報道するメディアがいなければ、そこは少なくとも「住みよい社会」とは言えないだろう。

 筆者の言っていることは大げさであろうか? メディアだけでなく、消費者にも、もう一度良く考えて欲しい。お願いする。