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デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年02月15日号-43

今回は三部構成となっております。

第一部「衝撃」

そごう・西武をついに売却へセブン&アイはコンビニに集中

 節分や立春といった歳時記を気にする間もなく、2月に入ってデパート業界を震撼させるビッグニュースが飛び込んで来た。
オミクロン株のピークアウトも待たずに、百貨店業界に波紋が広がっている。

セブン&アイHD、鈴木路線の見直しに舵

 セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店、そごう・西武を売却する検討に入った。

 2月中にも入札を実施する方向で、複数の投資ファンドなどが興味を示しているとも、伝えられている。

 セブン&アイとしては、不振の百貨店事業を切り離し、コロナ禍も順調に推移する、主力のコンビニエンスストア事業に集中する狙いだ。これは、カリスマ経営者であり、グループの中興の祖であった鈴木敏文名誉顧問が、セブン(コンビニ)&アイ(スーパー)の業態に、百貨店、専門店などに拡大した総合小売り路線からの脱却と言える。

年初来高値を更新

 セブン&アイは2月1日「そごう・西武の株式売却を含め、あらゆる可能性を排除せずに検討を行っている」とのコメントを発表。これを受け、東京株式市場では、セブン&アイの構造改革が加速し、収益力が高まるとの思惑から同社の株が買われ、一時は前日比490円高まで急伸し
た。終値は前日比245円高の5838円となり、年初来高値を更新した。投資家というのは、余程リストラがお好きとみえる。

 但し、セブン&アイによる「そごう・西武」の売却検討は、誰にとっても「寝耳に水」の話ではない様だ。同社がミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を完全子会社化したのは2006年。当時会長(CEO)だった鈴木名誉顧問の決断だ。15年前当時、名実ともにセブン&アイHDのトップであった鈴木会長の思惑は、インターネットと多様な業態の店舗を傘下に治めた、新たな一大流通網を構築することだった。

百貨店事業はリストラ

 鈴木氏は日本で初めてコンビニ事業を軌道に乗せ、正にカリスマ経営者として知られたが、2016年に創業家一族との「内紛」で追われるように退任した。その後、創業家の意を得て実権を握った井阪隆一社長が経営の舵を取ったのは記憶に新しい。今回はその鈴木氏の「負の遺産」を整理するという建前だ。

 井坂氏はその翌年の2017年には、阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリングに、そごう・西武の関西2店舗を譲渡している。その後も不採算店の閉店や縮小を進め、完全子会社化したときに28店あった「百貨店」は既に10店舗まで縮小している。

 一方で井阪氏は昨年2020年に、米コンビニ運営会社スピードウェイの大型買収を実現させており、明確にコンビニ事業への集中を進めていた。

 同年発表した中期経営計画では、海外コンビニ事業を成長のエンジンと位置づけ、百貨店(そごう・西武)などの大型商業施設運営に関しては、「抜本的な構造改革」の対象とするとしていた。流通業界に詳しい学識者からは「そごう・西武の売却については、それほど驚きはない。経営資源をコンビニ事業に集中するわけで、むしろ好判断だといえるだろう」と指摘した。

 セブン&アイというか、当時の鈴木会長の思い描いた様な、百貨店とコンビニ事業のシナジーを、充分に生み出せていなかった、と言うのは、残念ながら事実なのだろう。

物言う株主の圧力

 結果的に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響や「物言う株主=投資家」からの売却圧力も、セブン&アイの背中を押した。緊急事態宣言で臨時休業や営業時間短縮を強いられ、そごう・西武に限らないが、百貨店各社は業績が悪化。セブン&アイの百貨店・専門店事業も2022年2月期の営業損益は88億円の赤字を見込んでいる。

 百貨店業界は、新型コロナ感染が落ち着き始めた昨年末ごろから高額品を中心に持ち直しつつあるが、外出が減ったことで主力の衣料品が苦戦。インバウンド(訪日客需要)も回復が見込めず、まったく先行きが見通せない。「ファストファッション」やネット通販の台頭などで、1991年をピークに市場規模が大幅に縮小するなど、構造的な課題も抱えている。従って、ビジネスモデルの転換は百貨店各社共通の課題と言える。デパートは皆、悩んでいるのだ。

第二部「過去」

 さて、ここで時間を8か月程遡る。2021年6月15日号のルネッサンスで「そごう・西武」に言及している。いささか長い引用となるが、その実態に迫りたい。
以下再掲する。

 苦戦を強いられている、大手百貨店の中で、そごう・西武は、もはや「周回遅れ」の感がある。

 親会社であるセブン&アイの決算から読み解く。そごう・西武2020年度(コロナ禍)
 営業収益は4404億円( 前期比26・6 %減)、営業損益にいたっては67億円の赤字(前期は1・7億円の黒字)に転落した。経営不振は前年より更に深刻化している。
 コロナ禍で客数が大きく減り、主要店舗は軒並み減収。旗艦店の「西武池袋本店」も、外出自粛の影響により売上高が前期比24%減の1385億円に激減した。特に落ち込み幅が大きかったのが、売上高が4割減となった「西武渋谷店」だ。渋谷店はコロナ禍以前、店舗売上高のインバウンド比率が1割を超えていたため、訪日客需要の蒸発による打撃が大きかった。
 そごう・西武の2021年2月期の既存店売上高は、2019年に消費税増税後の反動減があった10月を除き、すべての月で前年実績を大きく下回った。
 宣伝費や陳列装飾などの経費削減のほか「そごう徳島店」をはじめ不採算となった5店舗を閉店したものの、売上高の激減には抗えなかった。
 もはやリストラの余地も乏しく、長引く経営不振で店舗のスクラップを続けた結果、現在のそごう・西武の国内店舗数は10店と、2006年のセブン&アイHDによる買収時から3分の1にまで縮小した。
 コロナ禍での外出自粛が打撃となり、そごう・西武の旗艦店「西武池袋本店」の前期売上高は2割以上減った。
 売上の減少が続く「西武秋田店」と「西武福井店」は、店舗面積を縮小して改装を進めている。もはやリストラでの収益改善余地も限られるだけに、コロナ禍でも堅調な販売を見せる富裕層向けビジネスの拡大など、具体的な売り上げ確保策の打ち出しが急務だ。この「富裕層シフト」については、前々号の三越伊勢丹、前号の大丸松坂屋の回でも、両グループのトップが言及している。
 セブン&アイHDは、アメリカのスピードウェイ事業買収をこの6月までに完了させ、その後に新たな中期経営計画の発表を予定している。
 2020年2月期を最終年度としていた前回の中計では、イトーヨーカ堂もそごう・西武も、掲げた利益目標を大きく下回る結果となった。成長事業の見通しだけでなく「お荷物事業」の再建の道筋をどう示すのか。中計発表時に開かれる会見での、経営陣の説明に注目が集まる。

 以上は2021年2月期の発表であり、当然スタートからコロナに明け暮れた2020年度の「不振、苦境」である。しかし、そごう・西武は他の大手百貨店グループ(三越伊勢丹、大丸松坂屋、髙島屋、阪神阪急)とはいささか事情が異なる。インバウンド売上が蒸発し、非常事態宣言によりやむなく休業した「コロナ禍」の以前から、そごう・西武のセブン&アイグループ内での「お荷物状態」は始まっていたのだ。

 1年前(コロナ前)に遡り、セブン&アイが頭を悩ます、そごう・西武の実態を探る。
 2019年度(コロナ前)
 そごう・西武は2020年2月期の営業収益が6001億円(前期比2・5%減)、営業利益が1・7億円(同94・7%減)にとどまり、目標とした2020年2月期の営業利益130億円の1%程度でしかない。
地方店舗
 そごう・西武については、2021年2月期に西武大津店(滋賀県大津市)など、関西を中心に5 店舗を閉鎖した。2005年に30店あった店舗網は、2021年2月末には10店舗まで減少した。秋田県と福井県の2店舗は残すが、店舗面積を縮小する計画だ。
 親会社であるセブン&アイは、もはやそごう・西武にかける余力はないのだ。

都心店舗

 2020年2月期に売上高1823億円を稼いだ旗艦店の西武池袋本店に加え、そごう横浜店や、そごう千葉店は収益性や客数についてグループでも「最上位」の評価を下している。こうした主力店舗では、化粧品や高級品、食品の販売強化のための投資が継続して行われていた。

郊外店のテナント化

 一方、郊外型と呼ばれる西武所沢S.C.や西武東戸塚S.C.では、改装を行いユニクロなどのテナント比率を高めている。
 この西武S.C.については、2020年8月1+15日合併号でも取り上げている。
※以下再掲

百貨店の生き残り策「テナント化」

 ショッピングセンター化とも呼ばれるが、実態としては従来百貨店自身が自主編集していた売場に代わり、その区画にテナントを誘致し、ショップの運営を任せることだ。

 今までも、ブランドショップや飲食店、食品総菜店など、この方式を併用していたが、近年テナントシェアは増大の一途を辿っている。都心一等地の有名百貨店でさえ、ロフト、ユニクロ、無印良品、ニトリ等のメガストアを誘致する例が増えている。
 デパート側は大型の集客核が増え、周辺商品の需要喚起に繋がる上に、大幅な人件費削減の達成が可能である。顧客側も生活必需品が、交通至便な駅前で手に入るのだから、運営側、消費者側ともにWIN―WINな結果と言える。
 2020年6月上旬にリニューアルが完成した西武東戸塚S.C.はテナント化した百貨店の典型例だろう。これは前年11月に一足先にリニューアルを終えた西武所沢S.C.に次ぐ西武・そごうのショッピングセンター型百貨店の2号店だ。
 所沢西武S.C.の目玉は大型家電量販店であるビックカメラの他に、かつては同じ西武セゾングループであったロフトや無印良品をはじめ、GU、ユザワヤ、ABCマート含め120店舗を導入した。これでB1Fの食品から2、3Fのレディスファッションゾーンを除き、館全体の75%をテナントに譲り、定借化した。
 本業である百貨店の自主編成売り場を、4分の1に縮小した西武S.C.は、例え一部マスコミが「ハイブリッド型百貨店」と、もてはやしても、筆者には「もはやデパートとは呼べないのではないか」という思いが強い。
 鳴り物入りで実行されたテナント化だが、業界内からは「視察に行ったが店内はガラガラで、そのうちテナントも出て行くのではないか」との声も上がる。

セブンの試練

 ある小売業界関係者は「イトーヨーカ堂は売上高が大きいだけに、改善すればリターンが大きくなる。しかも、食品など生活必需品を取り扱っており、ターゲットとなる客数も多い。だが、そごう・西武は主力以外の店舗は元々業績が悪く、今後の期待値も低いため、首都圏の店舗の一部を除き、最終的には売却せざるを得ないのではないか」と指摘する。

 アフターコロナの時代には小売業全体が、これまでのビジネスモデルからの脱却を迫られる。リストラ頼みでは、利益成長もいずれ限界を迎える。これまでの「国内のセブンイレブン頼み」という構図を変えることができるのか。セブン&アイHDに新たな試練が待ち受けている。
 そごう・西武にとっては、コロナ前から既に「試練」は始まっていたのだ。それにコロナが追い打ちをかけた格好だ。デパートという海
 量販店である「イトーヨーカドー」から、日本におけるコンビニエンスストアの草分けである「セブンイレブン」で、圧倒的な業界一位の座に君臨したセブン&アイ。彼らが最後に乗りだしたのが百貨店という海原だ。遂にセブン&アイが、高級ブランドまで扱う「小売の王様」の一端を担うこととなったわけだ。しかし、そこは富裕層を顧客とする老舗競合が跋扈(ばっこ)し、元々ブルーオーシャンとは到底呼べない業界だ。彼らはデパート業界という、レッドオーシャンどころか、サルガッソーの様な深みにはまってしまった。加えて、百戦錬磨のセブン&アイであっても「新型コロナ」によるパンデミックの襲来は、さすがに予想出来なかった。もちろん予想していた小売業界人は誰一人居なかったわけだが。

デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年06月15日号-27

 以上、去年の6月15日号の「そごう・西武」の記事を再掲載した。
筆者は、今回の売却を、正直意外だ、とは思わない。来るべきものが来た、というのが率直な感想だ。

第三部「再編」

 本紙はデパート新聞である。感慨にふけっていても何も進まない。
残ったデパートのために分析を続けよう。

そごう・西武の売却額は2000億円規模か

 コンビニエンスストアであるセブンイレブン・ジャパンが利益の大半を稼ぐ一方、そごう・西武は不振脱却のめどが立たず、グループ経営の重荷になっていたわけだが、現在、複数の投資ファンドや事業会社を売却先として検討している。
2月中に選定を始める考えで売却額は2000億円規模に上るとみられる。

 ECの普及や、コロナ禍で休業や時短を繰り返した影響で、そごう・西武の業績は一段と悪化し、2021年2月期の最終利益は172億円の赤字だ。

 セブン&アイの大株主である海外の投資ファンドが、そごう・西武や総合スーパーのイトーヨーカ堂などを切り離すことを念頭に、主力のセブン―イレブンに集中するよう求めているという。

セブン&アイHDの主な事業と売上高(シェア)

セブンイレブン(海外)2兆1913億円38%
セブンイレブン(国内)9208億円16%
イトーヨーカ堂(SM)1兆8108億円31%
そごう・西武(百貨店)4251億円7%
ホールディングス計5兆7667億円
※2021年2月期連結決算

 4千億は巨額な売上であるが、全体で6兆円近い巨大流通グループの7・4%というのは、決して大きな金額ではない。ましてやそれが長い間赤字を垂れ流している、となればなおさらだ。

 コンビニのトップ企業であっても、スーパーマーケット(量販店)としては既にナンバーワンではなく、デパートとしてはもはや2~3流(失礼)だとしたら、セブン&アイの「お荷物」と呼ばれても反論の余地はない。そもそも創業事業であるイトーヨーカ堂でさえ、セブン全体から見れば、もはやお荷物であり、尚更「何の益もない」デパートに執着する理由はないはずだ。

 セブンを半年ほど前に退社した知人は「既定路線」として、売却はかなり前から決まっていた、という。

 筆者が若い時(30年前) 新宿伊勢丹をしのぎ、売上日本一のデパートとして君臨していた「池袋西武」は昔々のお話なのであろう。西武百貨店=堤清二の時代だ。

 当時、そごうが横浜に巨艦店をオープンしたのも、記憶に残っている。両社が合併した時も驚いたが、2006年にセブン&アイの傘下に入ったのは、もっと驚いた。

そごう・西武後の難題

 いくつかの報道を受け、セブン&アイHDは公式には「何も決まっていない」と表明したものの、2月中には投資ファンドや事業会社に向けた入札の準備が始まる。前述した様に想定売却価格は2000億円とも言われている。が、この売却には続きがありそうなのだ。

 何度も繰り返して申し訳ないが、そごう・西武の買収については、当時セブン&アイHDのCEOだった鈴木敏文氏の戦略が前提にあった。 

 2016年に鈴木氏が退任し、脱鈴木路線が進行する中でのそごう・西武売却報道であり、井坂体制下で次に何が起きようとしているのかは、実は明確なのではないか。

売却の意味

 それはセブン&アイHD経営陣にとっては不都合な論点だが「あらゆる可能性を排除せずに検討をしている」という公式コメントを読む限り、水面下では少なくとも議論が行われていると思われる。

 コロナ禍以前、セブン&アイHD傘下でのそごう・西武の利益は黒字だった。
2020年2月期は売上高約5780億円、営業利益約8億円。
かつてそごうが経営破綻した当時とは違い、地方店舗の多くを整理し、営業面積の広い旗艦店中心へと経営資源を集約したことと、海外からのインバウンド需要が増加したことで利益が出る体質になったのだから、単純には経営成果だと言える。

 そごう・西武の旗艦店は全部で6店舗ある。西武池袋本店と渋谷店、そごう横浜店、千葉店、広島店、大宮店だ。

 もちろん黒字になったとはいっても、旗艦店6店舗の売上は2018、19、20年と、他社がインバウンドを享受していた中では、頭打ちが続いていた。そこにコロナが来襲し、2021年2月期に赤字に転落、この後迎える2022年2月期の営業赤字も残念ながら明白だ。

そごう・西武の価値

 親会社のセブン&アイHDから見れば、百貨店事業は「改革を終えた」が一方で、事業としてこの先の成長は見込めない、という判断は、当然の結果だろう。メディア各社の報道を見ても、HD内部ではかなり長い間検討が進んでいたと思われる。

 そごう・西武には多額の有利子負債があることが難点だと言われる一方、旗艦店舗の不動産価値が非常に高いのも事実である。もし再開発が行われれば、西武池袋本店やそごう横浜店は立地と利便性から考えて、駅直結のオフィスやレジデンスが併設されるショッピングモールとして、一大不動産開発物件に生まれ変わる可能性は充分にある。
そう考えた外資系ファンドならば、この案件はほうってはおけない、という見方も出来る。

コンビニにも不満

 セブン&アイHDのコンビニ事業の売上は2022年2月期予想で国内チェーン店売上が約5兆円、海外チェーン店売り上げが6・4兆円を見込む。

 店舗数は国内が2万1000店、海外の連結子会社分が1万4000店これ以外に韓国に1万1000店、タイに1万3000店、台湾に6000店、香港に2600店など、合計で4万3000店のエリアライセンシー店舗を有する。

 エリアライセンシーとは、現地企業に細かい運営は任せ、ライセンス料をもらうビジネス形態である。エリアライセンシー制度として有名なのは、創業時の日本マクドナルドが、独自展開で成功した事例がある。

 順調に見えるコンビニ事業だが、株主から見て物足りない点があるとすれば、他のアジア各国の戦略、と中国本土への展開であろう。

 中国では北京、天津、成都に関しては連結子会社で進出し約570店舗を有する一方で、上海などそれ以外の都市では、エリアライセンシーで進出し約640店舗を有する。合計すれば中国本土は約1200店舗となる勘定だが、トップ企業としてグローバルな展開を目指すにしては、コンビニの中国本土への進出に力が入っていない様に映るのも確かだ。

 海外の投資ファンドが、セブン&アイについて、もどかしさを感じているのも理解は出来る。
「コンビニ事業に経営資源を集中していれば、中国本土にしても、アジアに限らず、未展開の新興国についても、グローバル展開のスピードがもっと上がるはずだ」と投資家は考えるのも、頷ける話ではある。

会社は誰のモノ

 物言う株主は、セブン&アイHDの経営陣が百貨店事業に時間を使うのは、この2月の売却までにして欲しい、と思っているのだ。

 そこには企業=会社は誰のモノか、という問題がある。資本主義社会では単純に「株主」が正答であろう。もちろん日本でも例外ではない。但し、日本では、株主(投資家)以外のステークスホルダーを、けして蔑(ないがし)ろ、にはしない。投資家の顔色しか見ない企業が(特に顧客の大半が日本人であるこの日本で)生き残って行けるのかは、甚(はなは)だ疑問だ。

 セブン&アイHDという巨大企業で、売上高の38%が海外のコンビニでつくられているのであれば、シェア7・4%の国内の百貨店事業に「注力」するのは彼ら投資家の観点からすると「無駄」なのかもしれない。

 但し、無駄なコトをしない代わりに、日本人の支持を失うコトは全く念頭にないのであろう。

 であれば、そごう・西武を今のままの形かどうかはともかく、地域での商売を継続してくれる企業が、引き継いでくれることに異論はない。逆に今まで、あちこちの百貨店を閉店し、不動産価値のありそうな6店舗に絞り込むコトが必要な「工程」だったのか、とも思えてくる。なるべく高値で売却したいのは判るが。

 本紙、デパート新聞社主も1面で言及しているが、公益性より私利私欲を優先して、上手くいくほど、日本の商売は「甘く」は無い。「先義後利や三方良し」を無視した商売人の末路を、我々はまた見ることになるのだろうか。その日が楽しみ、いや憂鬱になって来た。

追記

 最後に、ここ2年の百貨店の閉店状況を振り返る。

コロナ禍での閉店

 ネット販売やサブスクへのトライアルなど、あらゆる時代対応に奮闘するデパート各社ではあるが、それらはまだまだ「次の収益の柱」足りえず、各地で「閉店」が相次いでだ。

直近2年間で閉店した百貨店(2022年1月現在)

20年3月新潟三越
20年8月西武大津店
20年8月西武岡崎店
20年8月そごう西神店
20年8月そごう徳島店
20年8月髙島屋港南台店
21年2月三越恵比寿店
21年2月そごう川口店
21年9月松坂屋豊田店

 9店舗のうち過半数の5店舗がそごう・西武だった勘定になる。
決して偶然ではない。2022年の売却へのカウントダウンだったとすれば、その5店舗で働いていた従業員、取引先、顧客にとっても、「悲しい」結末が待っていた訳だ。ファンドや投資家の目論見とはそうしたモノであり、非情とか強欲とかいう批判は当たらないのであろう。
しかし、筆者は単純に「切ない」と感じる。購読者の皆様はどうだろうか。

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