デパート新聞 第2681号 – 令和4年2月15日
激震 そごう・西武の売却 - デパート新聞 社主 緊急寄稿
セブンアンドアイが傘下の西武・そごう、両百貨店を売却する方針を固めた。株主である投資ファンドの意向に沿っての苦渋の決断である。市場原理主義を高らかに謳い、利益を荒稼ぎすることで、自らの財産を膨らませることしか考えていないステークホルダーの意向に屈してしまった格好である。
長期にわたる顧客のデパート離れに加え、新型コロナウイルスは小売業の王者を集中的に襲っている。あたかも戦艦大和に大量の戦闘機が群がって爆撃を続けているが如くである。海外からの観光客の消失ばかりか、密になる中心的存在というレッテルを貼られ、多くの顧客の来店を遠ざけなければならない状況に陥ってしまった。
デパートにとっては、あまりにも辛苦を味わされたこの2年間ではあった。しかし、こうした社会のやむを得ざる環境の中で、少しでも長い目でデパートの再生の時期を待とうという思いやりのある配慮は、投資ファンドにはないようだ。デパートの社員、関連業者、地域の人々、そして何よりも永年の顧客がどれだけ悲しい目にあうのか、同じ利害関係者の立場として一片の感情もないのであろうか。
資本主義は、不特定多数の者の幸せを願い、公益的観点で経営を行なうべきであるという思想へと世界的に浸透しつつある。今回飛び込んできたニュースはそうした世界が目指そうという事業の在り方を体現するのに、最も相応しいデパートの立ち位置に水を差す、悲しい話である。
業界の存続を揺るがしかねない大事件を受け、私たちは公益事業として重大な役割のあるデパートの存在を徹底的に応援していく覚悟をもちたい。新しい資本主義を掲げる岸田総理の声を聞きたいものである。
百貨店データ
- 令和3 年12 月全国百貨店売上高
- 都市規模別・地域別 売上高伸長率
- 神奈川各店令和三年12月商品別売上高
- SC販売統計12月
明日を目指す百貨店探訪 第9回 藤崎
今回は、藤崎 阿部和彦本店長 直撃インタビュー!
株式会社藤崎は、城下町・仙台の繁華街・一番町に本店を置き、東北地方で最大の売上高を誇る百貨店。
- まずは、藤崎の現状についてお聞かせください。
- 商圏について
- 顧客特性について
- 取材当日は、バレンタインデーチョコレートの商戦のスタート直前です。これから始まる商戦についてお聞かせください。
- 外商のテリトリーとして
- 地域との取り組み
- 型店の戦略について
- ECについて - クリスマスケーキのカタログはDX化
- お客様と商品を繋ぐ、売場を支えるのはヒト
- 藤崎のイチオシ商品 - <藤崎オリジナル> やわらか塩麹牛たん
- 活躍する社員さんご紹介 - 食品部 バイヤー 佐々木 修(ささき おさむ)さん
- 伊達CRAFT
- 好評イベント - 2021年12月4日(土)テロワージュAKIU at ケヤキカフェ
- 企業データ
- 地域への貢献の歴史
詳しくは 藤崎 阿部和彦本店長 直撃インタビュー - 明日を目指す百貨店探訪 第9回 を御覧ください。
地方百貨店の時代 その33 - 食堂
デパート新聞社 社主
田中 潤
時代遅れのテナント化
デパートの最上フロアには、直営の大食堂が不動の構えを見せているというのが昭和の時代の光景であった。当時のあらゆる食事、まさに百食をメニューとして提供し、他のフロアからでは味わえないそのデパート最上階からの展望を楽しませ、存在感を見せつけた。大いに満足した顧客はまさにシャワー効果によって階下のフロアでついで買いをして帰っていく。―こうした素晴しいマーチャンダイジングをなぜ放棄したのかといえば、経営の合理化という将来性のないビジョンを日本中のデパート経営者が共有したために他ならない。
顧客を楽しませるというシンプルな思考を愚直に貫いていれば、答えは不変である。もちろん、食文化は時代とともに大きく動いている。昔のように総花的なメニューを提案しても、顧客は納得しないだろう。また、日本中で展開するチェーン店にテナントとして任せるようなやり方は、少なくとも地方百貨店においては時代遅れであることは明確である。
自主的な店づくりが求められるデパート
その地域の名物店、或いは独立店主が意欲的に創作料理を提案発信している個性ある店を、積極的に紹介する場としての食堂フロアを作っていくことが将来につながる方法だろう。あくまでデパート側が責任をもってフロアを仕切り、出店者の負担を最小限に止めつつ、自主的な店づくりを担ってもらうのである。もちろん、フロア全体のプレゼンテーションについては創造性・革新性をもってデパート自身が思いきって投資する覚悟が必要である。
ラーメンの世界的発信を企図した横浜のラーメン博物館は、ラーメンだけでなく昭和の街並みを楽しみながら、目指すラーメン店を探すというような遊び感覚を満載した場を提供している。地域の文化や歴史を盛り込んだ場づくりなどは、おもしろい提案になるだろう。そうした取り組みは、レストランのリピーター、更にデパートの固定客づくり、ひいては繰り返し提言している地域のコミュニケーションの場づくりの一助になっていくはずである。食堂フロアはデパート自身が責任をもって仕切るべきである、というのがこの項の結論である。
朧
今年は太平洋側でも寒い日が多い気がしているが、日本海側や内陸部は例年にない大降雪が何度も起きている。雪下ろしを始め、雪が降らなければしなくて良いことが日常生活に大きな負担をかけている。
新型コロナウイルスの発生後、世界中の人々が今までの生活になかった様々なルーチンを課せられるようになった。慣れてはきたものの、これがいつまでも続くのかと考えるだに、心が重くなる。
花粉症を抱える方々は、既に春に行なわれなければならない日々の労務を余儀なくされている。やらなければならないことが、どんどん増えていくことでストレスによる心の摩耗が心配である。
連載小説 英雄たちの経営力 第1回 織田信長 その3
連載:デパートのルネッサンはどこにある 42
今回は、三部構成となっております。
第一部「衝撃」
そごう・西武をついに売却へセブン&アイはコンビニに集中
節分や立春といった歳時記を気にする間もなく、2月に入ってデパート業界を震撼させるビッグニュースが飛び込んで来た。
オミクロン株のピークアウトも待たずに、百貨店業界に波紋が広がっている。
セブン&アイHD、鈴木路線の見直しに舵
セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店、そごう・西武を売却する検討に入った。
2月中にも入札を実施する方向で、複数の投資ファンドなどが興味を示しているとも、伝えられている。
セブン&アイとしては、不振の百貨店事業を切り離し、コロナ禍も順調に推移する、主力のコンビニエンスストア事業に集中する狙いだ。これは、カリスマ経営者であり、グループの中興の祖であった鈴木敏文名誉顧問が、セブン(コンビニ)&アイ(スーパー)の業態に、百貨店、専門店などに拡大した総合小売り路線からの脱却と言える。
続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年02月15日号-43 を御覧ください。