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デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年07月01日号

コロナ禍の上半期を総括する 緊急急事態宣言再延長 翻弄される百貨店

半年間で7割超が「緊急事態」の異常

政府は東京などの緊急事態宣言を解除し、まん延防止等重点措置に移行することを決めた。

 10都道府県に出されている緊急事態宣言については、沖縄を除く9都道府県は、期限となる6月20日に解除し、東京や大阪など7都道府県は、7月11日までの期間、まん延防止等重点措置に移行する。

 本紙デパート新聞の直近2号の4面を振り返る。

 6月1日号 「緊急事態宣言の再延長は不可避」

 6月15日号 「デパートの経営を蝕む緊急事態宣言の呪い」

 本連載コラムのタイトルは「デパートのルネッサンスはどこにある?」であり、都心の大手百貨店だけでなく、地方で苦闘する独立系百貨店の「再生・復活」を追いかけるのが本来の主旨である。しかし、2020年から引き続き、百貨店を含めた小売業界全体にとって「コロナ禍」は一様に暗い影を落としている。新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う「度重なる」政府の緊急事態宣言の発出。「百貨店の今」をコロナ抜きに語ることは、もはや不可能だ。残念ながら7月1日号も、三度、緊急事態宣言がテーマとなる。どうかお許し願いたい。

緊急事態宣言の期間を「おさらい」しておこう。

1回目: 2020年4月7日~5月25日期間: 1ヶ月半余り
2回目: 2021年1月8日~3月21日期間: 2ヶ月半
3回目: 2021年4月25日~5月11日→5月31日まで延長→6月20日まで再延長期間: 2ヶ月弱

 賢明なる購読者諸氏はここまで読んで、百貨店の運営に限らず、緊急事態宣言が我々の生活に及ぼしたマイナス影響に、既に「うんざり」しておられると思うが、更にちょっとした計算に付き合っていただきたい。

半年続けばもはや日常

 2021年がスタートしてこの7月1日号が発行されるまでの半年( 6ヶ月) の間に、緊急事態宣言が実施されたのは何日間か。いや、逆だ。宣言が発出されて無かった期間の方が短いのだから、ここは百歩譲って、まん延防止等重点措置は勘定に入れないで計算してみよう。

1月1~7日の7日間、
3月22~31日の10日間、
4月1~24日の24日間、
6月21~30日の10日間

で、合計51日間となる。

もう五十歩譲って、6月21日以降の再々延長はなし、と仮定する。

 さて1月1日~6月30日までの半年は181日間なので、181-51=130で、緊急事態宣言の発出されていた期間は合計130日間。181分の130は71.8%となる。

 何と、我々は2021年の前半の半年間の内、7割以上を緊急事態宣言下で過ごしていた勘定になる。
正直驚いた。半年間にわたり、緊急事態が続くと、誰か予想しただろうか?

  6ヶ月続いているなら、それは緊急事態でも、非常事態でもなく、もはや「日常」ではないだろうか。何と!!これが「ニューノーマル」、新しい日常なのであろうか。1年前と半年後

 その前の半年間、2020年7/1~12/31までは、GoToキャンペーンの是非などで騒いでいた事が、同じコロナ禍とは言え、今となれば夢の様に平和な時間だったなぁ、と感慨深い。そんな、緊急事態宣言に 明け暮れている2021年。もちろん、このままでは、この後の半年も、オリパラの強行によって4度目の緊急事態宣言発出が、増々現実味を増している。ここからはコロナとワクチン接種との「マラソン」競技なのだろうか。日本国民の生命と健康というメダルを賭けた、いやいや参加せざるを得ない、悪夢のオリンピックなのだろうか。

 政府、厚労省、医師会、はただ「自粛」を叫ぶだけで、飲食店、旅行業、エンターテインメント、そしてもちろん医療従事者や介護従事者をはじめとする、エッセンシャルワーカーの苦境はまだまだ続く。そして小売業の中でも、とりわけ大変なのが、百貨店業界だ。

 食品スーパーや量販店は「ライフライン」という免罪符をもらっているが、百貨店とそこに出店するラグジュアリーブランドは、「豪奢品」という耳慣れないレッテルまで貼られ、都知事の追求を受け、休業に追い込まれた。デパ地下や食品スーパーと異なり、ブランドショップは密や混雑とは無縁のゾーンなのにだ。

 何のエビデンスも示さずに、飲食店での酒の提供を禁止し「禁酒法」と揶揄された。コロナ禍のスケープゴートがまた一つ増えた勘定だ。

コロナ禍は戦時下?

 政府による自粛要請は、飲食店や百貨店への時短、休業要請に進んだ。そして遂に「要請= お願い」という枠を超えて、コロナ特措法による休業「命令」にまで行き着いた。

 百貨店の豪奢品扱い店舗への休業示唆は、80年ほど前の戦時中に「贅沢は敵だ」と叫んだ、軍国主義政府の様だ。感染予防を「錦の御旗」に見立て、その後はご存知の様に「1億玉砕」へと続くのだ。とすれば、日本はコロナとの戦争に完敗する、というストーリーしか考えられなくなってくる。

 まさか、そんなことはないだろう。筆者の心配症はもはや病気のレベルなのだろう。只、笑って済ませてしまう勇気はない。昨今の香港やミャンマーの現状を見ていると、「日本の民主主義は大丈夫」と言える根拠を、筆者は今、持ち合わせていない。

デパート(贅沢) は敵なのか?

多大なマイナス影響

 さて、デパート新聞としての本題に戻ろう。
三越伊勢丹ホールディングス、J.フロントリテイリング、高島屋、そごう・西武、エイチ・ツー・オーリテイリングは6月1日、5月の売上速報を発表した。

 各社とも前年実績を上回ったものの、コロナ禍の影響による売場の臨時休業・営業時間短縮などにより、2019年実績に比べると大幅な落ち込みとなっている。

 どの企業も、2020年は約1ヵ月の休業とその後の消費低迷が響いて、大幅な赤字決算を発表したばかりだ。そして今回の3回目の緊急事態宣言で大打撃を受けた百貨店にとって、2年連続の赤字決算は避けたいところだろう。

 少し時を遡り、緊急事態宣言に翻弄される百貨店の苦闘の日々を追う。

 4月12日、政府は東京都に対して「まん延防止等重点措置」適用を決めた。但し、その効果が薄いと見るや「短期集中」として、4月25日から3回目となる緊急事態宣言を発令。その後は皆さまご存知の様に、6月 20日までの期間延長が決まった、という経緯だ。

 ゴールデンウイーク( 大型連休) に向かって人流を減らすべく、不要不急の外出の自粛、都道府県をまたぐ移動を控えるように呼びかけられ、1000平方メートルを超える大型商業施設への休業要請が行われた。そしてその時に、最も煽りを受けたのが百貨店だ。

生活必需品と豪奢品のボーダーライン

 当初から、百貨店などの大型商業施設に対する休業補償額の低さや、緊急事態宣言下における「生活必需品」の定義の曖昧さに疑問の声があがっていた。そのためGW期間中も一部営業する店舗もあれば、臨時休業 を決めた店舗もあり、百貨店でも対応が分かれた。

 休業に応じた店と営業していた店との不公平感は拭えないまま、GW明けに緊急事態宣言を5月31日まで再延長したところで、休業していた百貨店のほとんどが営業再開を決断した。

 すると、5月12日に東京都の小池知事は日本百貨店協会に対して、食料品など生活必需品を除いて売場を休業するよう要請し、高額品の販売自粛(休業)を求めた。

 6月1日号より再掲〝東京都の小池知事は、ラグジュアリーブランドを生活必需品に加えた百貨店の対応を問題視。都が日本百貨店協会に対して12日に提出した要望書では「豪奢品( ごうしゃひん=並外れてぜいたくな品)」の販売、をやり玉にあげ、14日には小池知事が会見で「高級衣料品は生活必需品に当たらない」と、名指しで非難した。さらに都は百貨店に文書を送るだけでなく、場合によっては都の担当者が直接百貨店やブランド本社を訪ね、休業を求めるという「実力行使」に出た。これを受け、西武池袋本店、三越伊勢丹の都内4店舗、松屋と、相次いで店内のラグジュアリーブランドを休業した。

 5月28日には、イギリス型やインド型という新たな変異株による新規感染者の増加と病床逼迫によって、政府は緊急事態宣言をさらに6月20日まで延長することを決めた。それに対し、百貨店協会も9都道府県知事宛に「百貨店への休業要請への回避」の要望書を提出、営業再開の許可を求めた。

 東京都は、土日は引き続き生活必需品を除く売場の休業を要請するが、平日は20時までの営業時間短縮の要請に内容を緩和することとした。しかし、この生活必需品という判断も9都道府県で統一された定義はない。

 例えば東京では靴、衣料品、雑貨屋、文房具屋は生活必需品でも、大阪では休業要請対象に靴屋、衣料品店、かばん、袋物小売業、雑貨屋などが入る。土地柄では済ませられないこの区分けは、要請に対応する百貨店にとっても悩みの種となった。

デパ地下=高級食材

 百貨店で一番「密」になっているのは、どう考えても食料品売場= デパ地下だろう。そもそも、街場の食品スーパーと違い、実際は「豪奢」な食品のオンパレードであり、「不要不急」の代表格と言えるだろう。もちろん安価な食品も混在しているので「食品」だから営業可、という免罪符は手に入れている。当初は、建前上、百貨店は都の休業要請に応じ、食品を含む生活必需品エリアだけを営業していた。

 そもそも、百貨店の食品は「集客装置」の役割を担ってはいるが、売上や利益貢献はどうなのか。そこで昨年一年間の主要6都市における、百貨店の商品分類別の売上額を見てみよう。

 注目して欲しいのは、デパ地下= 食料品売上シェアだ。都市別にみて一番構成比の高い札幌、大阪で37%、広島、東京で35%前後、名古屋、福岡で30%弱といった割合だ。百貨店売上のおよそ3分の1が食品売上であり、もちろん少ないシェアではないが、それだけでは商売にならないのがわかる。

 ちなみに食品スーパーなどの量販店からなる「チェーンストア協会」での同年の食料品売上構成比は70%近い。食品スーパーは増加傾向にあるので( イトーヨーカドーではなくヨークマート) 単純比較とはいかないものの、百貨店とスーパーの売上シェアの差は明解だ。

 ここでは、利益率までは踏み込んでいないが、消費期限の短い食品の原価率が、衣料品や雑貨より高いのは、自明である。繰り返しになって恐縮だが、デパ地下は集客装置であり、デパートは上層階に行くほど、利益率は高くなるのが実態だ。

雑貨と身の回り品

 コロナ前はインバウンド需要の追い風も加わって絶好調で、百貨店のメインアイテムのひとつとなった化粧品は「雑貨」に分類される。一方、ラグジュアリーブランドの中心アイテムとなるアクセサリー、ハンドバッグ、靴、ベルト、財布は「身のまわり品」に分類されている。どの都市のどんな百貨店でも、1割以上の売上構成比を占め、衣料品と雑貨を含めた非食料品として考えると、売上シェアは50%以上となる。「不要不急の生活必需品」という、あいまいな分類では済ませられない、と言うのが百貨店の本音だ。

 そもそも「人流を抑える」ことを目的として、百貨店の生活必需品を除く売場の休業要請が行われたが、食品フロアを除けば、現在の百貨店で密を感じられてしまうくらい混雑することがあるのだろうか。出入口のアルコール消毒、検温設備は完璧で、百貨店内で大声を発する機会などないし本当に必要な措置なのか、大いに疑問が残る。

デパートの社会的存在意義が問われている

社会的な存在意義

 百貨店のみならず、取引先各社の雇用維持や事業継続といった、百貨店が担うべき社会的な責務は正直、随分と軽んじられているのでは、と考えるのは筆者だけではないだろう。

 本当に「人流を抑える」以外に、もっと科学的な根拠に基づいた、的確な施策は考えられないのだろうか。

 一年前と全く同じことの繰り返しでは、説得力がますます無くなってしまうのは明白だ。「GoToで感染拡大したというエビデンスはない」とうそぶき、それを恥ともしない与党幹部の言葉を聞いた時の、虚しさ、やりきれなさを思い出す。

 6月24日のニュースでも、天皇陛下がオリンピックによる新型コロナウイルスの感染拡大に「ご懸念」を示すと、直ちに加藤官房長官は「発言は、宮内庁長官自身の考えだ」との見解を示し、陛下の国民に「寄りそう」お気持ちを無下にした。10万円の給付金以降、前述のGoToキャンペーン含め、大多数の国民はこの一年の為政者の対応に、全く納得していない。
※アベノマスクは論外なので付け加えない。
また、自分達の既得権益しか考えていない医師会も政府と同罪だ。

 それでも否応なく、コロナとの闘いは続く。顧客=消費者=国民全体の、日常生活の復活(ルネッサンス)に向け、百貨店は五里霧中の中に居る。

加速する淘汰

 冒頭にも述べた様に「百貨店の今」をコロナ抜きに語ることは、もはや不可能となってしまった。残念ながらしばらくの間、コロナ禍の百貨店を語ることは避けられそうもない。

 但し、本稿では度々言及しているが、百貨店の( 特に地方百貨店の) 苦境は、コロナだけか原因ではない。アフターコロナの時代は、益々百貨店への逆風は強くなる。

 人びとは、都心に買い物に行かない、なぜならECの便利さを知ってしまったからだ。都心に通勤せずとも、自宅でのリモートワークの気軽さを知ってしまったのだ。

 もちろん、すべての顧客ではない。只、デパートの主要顧客であるシニア層にまで、そう言った風潮が広がっていることは否めないのだ。大手百貨店が一様に掲げる「富裕層シフト」やEC、DX対応の強化というお題目だけで生き残っていけるのか。
コロナにより淘汰が加速したことだけが、確かなことの様だ。

連載 デパートのルネッサンスはどこにある?

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