昭和24年10月創刊

デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年11月15日号-57

そごう・西武、小田急百貨店、松屋の百貨店3社が、不適切な免税により国税から追徴課税

 百貨店による不正のニュースである。
10月15日号の旭川のマルカツデパートによる、コロナ支援金詐欺とそう遠くない内容だ、といったら言い過ぎかもしれないが・・・

 旭川市民には、ちょっとだけ失礼な表現だが、驚くべきは、今回の当事者が、れっきとした大手デパートであった事だろう。

追徴課税

 百貨店「そごう・西武」「小田急百貨店」「松屋」の3社が、東京国税局から消費税計約1億1000万円を追徴課税された。

 上記3社への税務調査により、消費税の免税販売の要件を満たさない取引などが見つかったのだ。

 関係者の話でわかった、と記事には綴られているが、筆者は、多分に「見せしめ」の要素が強いのでは?と思っている。

 実際には、東京国税局は「今年6月」に百貨店3社に対し、適正な免税販売を求める行政指導を行ったのであるが、インバウンドが戻り始めた、この10月のこのタイミングでの「関係者の話」であるからだ。どうも他の百貨店への注意喚起( =戒め) の様に感じるのだ。

 百貨店への「一罰百戒」については、1年4ヶ月前、本コラムの7月1日号で取り上げた、小池都知事の「要請」が思い起こされる。ちょっと長くなるが以下引用する。そして小売業の中でも、とりわけ大変なのが、百貨店業界だ。食品スーパーや量販店は「ライフライン」という免罪符を貰っているが、百貨店とそこに出店するラグジュアリーブランドは、「豪奢品」という耳慣れないレッテルまで貼られ、都知事の追求を受け、休業に追い込まれた。デパ地下や食品スーパーと異なり、ブランドショップは密や混雑とは無縁のゾーンなのにだ。何のエビデンスも示さずに、飲食店での酒の提供を禁止し「禁酒法」と揶揄された、コロナ禍のスケープゴートがまた一つ増えた勘定だ。

コロナ禍は戦時下?

 政府による自粛要請は、飲食店や百貨店への時短、休業要請に進んだ。そして遂に「要請=お願い」という枠を超えて、コロナ特措法による休業「命令」にまで行き着いた。

 百貨店の豪奢品扱い店舗への休業示唆は、80年前の戦時中に「贅沢は敵だ」と叫んだ、軍国主義政府の様だ。
※当時はまだ、コロナの感染防止が第一優先であり、行政は「ワクチンと人流抑制」に頼るしか道が無かったのかもしれない。と、あらかじめフォローしておこう。

 コロナ禍真っただ中の当時、百貨店は都知事( 為政者) の外圧により、自粛=営業休止に追い込まれたのだ。ある意味「人気商売」でもある百貨店は、品行方正という「ブランド」を最も大事にしている企業( 業種) なのだ。まるで清純派アイドルの様に。※例えが古いが。

百貨店は優等生?

 賢明なる購読者諸氏なら既にご存知の様に、百貨店業は他の業種に比べ、犯罪や不祥事を極端に嫌う。「有名企業ならどこもそうだろう」という声も聞こえて来るが、純然たる犯罪は言うに及ばず、百貨店( 小売全般そうだが) は裁判沙汰や悪評を「異常なくらい」恐れている。それは直接顧客と接し、一般消費者の購買に依存し、その一挙手一投足に大きく左右される「商売」をしているからだ。どんな小さな悪評であっても、それは売上マイナスに直結することを、デパートは身に染みて知っているのだ。もちろん、百貨店による不祥事が無かった訳ではないが・・・ ※こういった事の下地には、「お客様は神様」という誤った認識が、百貨店業界に残っており、転売ヤーやクレーマーの対応をなおざりにして来た黒歴史があるのだが、紙面の関係でそれはまた別の機会に譲る。

 普通の企業であれば、ちょっとした不祥事があったからと言って、取引先相手の企業は、翌日から取引を停止したり、即関係を断ったりはしない。

 但し小売、特に有名ブランドを擁するデパートであれば余計に、悪評が出回った瞬間から、顧客が当該店舗( 企業) を避けるのは必然なのだ。そして、隣の( あるいは隣町の) 別の百貨店に、容易に鞍替えする事が可能だ。暖簾( のれん) =ブランドにより「安心」を提供するというのは、そういうコトであろう。

 皆に信頼されている者は、反面、裏切った時の「罪」は倍増するのである。

 これは、食品や飲食業にも通じる考え方で、最近では7月にスシローの「おとり広告」が批判を受け、結果的に消費者庁から措置命令を受けた。

スシロー業績悪化

 回転ずしチェーン「スシロー」を展開するフード&ライフカンパニーズは4日発表した2022年9 月期連結決算で、68億円の減損損失を計上した。相次ぐ不祥事による客足減で店舗の収益が想定より悪化したため。損失計上により、最終利益は前期比72.6%減の36億円となった。

 不祥事により信用が失墜し業績が悪化した、良い( 悪い) 例だ。

国税の思惑

 免税販売に関する、国税当局による特定の業界への行政指導は、極めて異例な事態だ。コロナ禍が収まり、本格的にインバウンド需要が回帰する前に、お上は免税販売の適正化を急ぐ必要があると考えたのだろう。
※それ自体は間違ってはいないが。

 関係者によると、いずれも都内に本社を置くそごう・西武、小田急百貨店、松屋の3社が昨年以降に受けた税務調査で、来日から6か月以上経過した免税対象外の外国人に販売したり、購入誓約書などの書類が保管されていなかったりするなど、免税要件を満たさない取引が見つかった、ということの様だ。

 調査では、同一人物が転売目的で同じ化粧品の大量購入を繰り返している可能性が疑われ、何件か不審な取引なども確認されたという。免税販売は本来、土産物や、帰国後に自ら使う物などを買う場合に消費税を免除する仕組みである。当然「転売ヤー」による日本国内での消費や転売は認められない。

 国税局は、免税要件を満たさない取引などについて、そごう・西武に2021年2月期までの2年間で、約1億円の追徴課税を課したという。最近は親会社であるセブン&アイホールディングスによる「身売り」のニュースにより、只でさえ先行き不安なそごう・西武にとって、「泣きっ面に蜂」とはこのことだろう。

 小田急百貨店と松屋もそれぞれ数百万円の追徴を受け( こちらは、そごう・西武に比べるとほんのお付き合い程度の金額だが)、修正申告と納付を済ませたとみられる。新聞の取材に対し、そごう・西武は「指摘を真摯に受け止め、より厳格な免税販売に努める」と回答。小田急百貨店は「正確なオペレーションに努める」、松屋は「適正な免税販売を進める」と、答えた。

白昼堂々

 百貨店の免税販売を巡っては、以前から「ブローカー=転売ヤー」とみられる人物が店舗周辺で購入者から大量の商品を買い取る姿が目撃されており、転売目的の購入があると指摘されている。消費税分が「利ざや」になるため、ネットなどで定価より安く転売し、不当に利益を得る、という構図だ。

 2020年4月には、免税店が客の情報や購入記録を電子データで国税庁に送る制度が始まり、不審な大量購入を国税当局が把握しやすくなったことが、事件発覚に寄与している。

 例えば、20歳代の中国人留学生は20年秋、来日直後の約1か月間で同じ化粧品など49万円台の免税購入を10回繰り返した。化粧品などの消耗品は一度の購入額が50万円までに制限されていることを逆手に取ったのだ。シロウトが見ても「見え見え」の犯罪行為だ。

 こうした実態も踏まえ、東京国税局幹部が今年6月、百貨店各社の担当者会議に出席し、土産物とは考えづらい大量購入や、購入者とクレジットカードの名義が異なる場合など、不正が疑われる場合は免税販売を行わないよう要請した。

 指導を受け、そごう・西武は9月から免税カウンターで免税手続きを録画し、国税当局に映像を提供する場合がある、という注意書きを日本語、英語、中国語で掲示した。10月11日にはコロナ禍の水際対策が大幅緩和され、訪日客の個人旅行も解禁された。百貨店73社でつくる日本百貨店協会は「適正な免税販売の手続きを浸透させる」としている。

富裕層の欲望

 前号の「富裕層シフト」コラムの中で、大手百貨店が一般大衆(マス)から大口客、上顧客を含めたいわゆる「富裕層」相手へと、大きく舵を切っていると記した。百貨店を巡るトラブル、例えば万引きやクレームなど、「問題客」への対応も、今後は詐欺や税金逃れといった(金持ち特有の)新たな課題に直面せざるを得ないだろう。

 高級ブランドや宝飾・時計やアート作品には、「贋作」がつきものだ。顧客が、高額品の扱いを「安心して」任せられる、と言う事は、顧客が百貨店ブランドを信頼しているから成り立つのである。(陳腐なセリフだが)だからこそ一度傷ついたブランド=信頼を回復するのは、並大抵の事ではない。デパートが「不評」を嫌うのには、こうした訳があるのだ。

 大手百貨店による富裕層シフトは、今までは彼らが「欲しい物」例えばブランドのバッグ、宝飾・時計、果ては外車や現代アート等々、を取り揃えれば良かった。但し、これからの時代は、モノ消費からコト消費に向かっている。人びとは、とりわけ富裕層は、モノを買うだけでなく、良い時間消費=体験、経験することを欲しているのだ。それは、特別な旅行であったり、食のデリバリーサービスであったり、ファッションのサブスクや、プロデュースされたイベントにまで及ぶ。顧客の望むことは何でも叶えてくれる、百貨店は魔法使いなのである。但し魔法がいささか高額なのは勘弁して欲しい。
資本主義の世の中なので。

連載 デパートのルネッサンスはどこにある?

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