デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年10月01日号-33
苦境続く百貨店
閉店相次ぐ百貨店 コロナ追い打ちで経営破綻も
百貨店の8割が赤字に転落
百貨店の8割が赤字に転落し、デパート業界にリストラの波が迫る
8月はコロナ禍のオリンピック・パラリンピックの開催に端を発した「感染爆発」と、それに翻弄される百貨店( ショッピングセンター)を時系列で追った。
9月に入りコロナ禍の政治+経済=「日本という国の舵取り」を誤った総理大臣の退任から政局( 自民党総裁選挙というコップの中の嵐) までを伝えた。
本欄は「デパートの復活を担う」という本分に立ち返り、今号より気分も新たに下半期をスタートしたいと思う。
標題に掲げた様に、百貨店の苦境が深刻さを増している。東京商工リサーチによれば、全国の主要百貨店70社の今期( 2 0 2 0 年4 月期~2021年3月期)の売上高は合計5兆円を下回り、前期より1兆5000億円減少した。純利益は合計1500億円超の赤字(前期は88億円の黒字)に転落し、大幅な減収減益となった。
新型コロナの感染拡大により、それまで頼みの綱であったインバウンド需要が消失。加えて、休業要請や時短営業が追い打ちをかけた形だ。百貨店の市場規模は、かつてのバブル期に10兆円にまで達したものの、ここ数年は地方郊外の不採算店舗の閉店が相次ぎ、売上は半減した。
そこにコロナ禍が直撃したこの1年半はかつてない苦戦を強いられた。売上はピーク時の約4割にまで落ち込み、利益も想定以上の売上マイナスにより、費用を吸収できない店舗が続出した。雇用調整助成金の特例など、コロナ関連支援を受けながらも、8割以上が赤字転落という危機的状況に陥っている。
デパート離れが進行し既に6店舗が閉店
コロナ禍にダメージを受けた業種といえば、飲食業や旅行、宿泊業、エンタメ業界などが挙げられる、百貨店もコロナ禍のダメージを大きく受けた業界の一つだ。
相次ぐ緊急事態宣言の発出による、休業+ 時短により、そもそもの営業機会が減少。ブライダルや入学・卒業式などのイベント縮小を受けたギフト需要のマイナスも大きい。さらに在宅勤務や外出自粛で化粧品や、スーツ等のオフィスウェアが主力の百貨店アパレルも、その余波にのみ込まれた。
もちろん、そんな逆風下でも「巣ごもり需要」を背景に、食料品やネット販売は孤軍奮闘した。但し、デパ地下グルメもオンライン販売も、全体の落ち込みのリカバリーには到底及ばなかった。
元々、ライフスタイルの変化に伴い、ここ数年は百貨店離れが加速し、全国的に閉店が相次いでいた。郊外型の大規模SCに客足が流れ、市街中心部に店舗を構える百貨店は空洞化が目立った。特に中小の地方都市でのデパート離れが深刻だ。
本紙でも特集を組んだ山形県の老舗・大沼の破綻( 2020年1月) を皮切りに、主な百貨店だけでも12店舗が閉店した。賢明なる購読者諸氏はお気づきの通り、これはいずれもコロナ前からのリストラの一環として実施されたもので、コロナ禍はたまたま時期が重なっただけだ。もちろん、コロナにより予定が早まった例はあると思われるが・・・
コロナは、結果として「百貨店離れ」に一層拍車をかけた。デパート( 小売り) =対面販売を主軸とした旧来型のビジネスモデルの弱点をあぶりだした。9月末に閉店する松坂屋豊田店を含め、2021年の閉店は6店舗となる。デパート閉店ドミノが止まらない。
百貨店の8割が赤字決算に
冒頭に述べた様に、全国の主要百貨店70社は、期初からコロナ禍の直撃を受け、売上高は前2期と比較し大幅に落ち込んだ。70社のうち、67社が前期比10%以上減収、14社が前期比30%以上の減収となった。損益が判明した68社の利益合計は、2016年度決算以来、4年ぶりの赤字となった。赤字は 54社(79%)に達した。前期は黒字が37社と過半数を維持も、売上の大幅減少でコストを吸収できず、赤字転落が続出した。このうち、2期連続の赤字は28社で(40% )、3期連続の赤字も15社(20% ) を数える。
トップ20社が減収 「地方独立系デパート」も苦戦
百貨店の売上高トップは、髙島屋の5407億円で4年連続売上首位。2 位はセブン& アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武(4404億円)、3位は大丸松坂屋百貨店(4364億円)と続く。4位以降には持ち株会社の下に統合した三越伊勢丹ホールディングス等、全国展開の大手百貨店グループ、阪急阪神、近鉄、東急など電鉄系の百貨店が並ぶ。
8位のジェイアール東海髙島屋(1011億円)までが売上高が1000億円を超えている。それでも、トップ20すべてが減収という、勝者なき決算だった。このうち、18社は前期から売上高が20%以上落ち込み、赤字は17社で業界大手もコロナ禍には抗えなかった。
売上高の最大の落ち込みは、東京・銀座本店と浅草店の2店舗を運営する松屋(15位、473億円)で、前期売上高から42%減少した。銀座、浅草という立地の土地柄、インバウンド需要により業績を引き上げていたが、コロナによる反動が極端なマイナスに繋がった。
一方で、大手百貨店などの流通グループや大手私鉄を親会社としない地方独立系百貨店(34社)の業績も同じ様に厳しい。
地方都市立地34社の売上高合計は、6339億円(前期比25%減、2000億円減)で、集計開始以来、5期連続で減収。また、利益が判明した33社の合計は190億円の赤字で、赤字は3期連続となった。
地方百貨店も、都心の大手同様、大幅減収減益が顕著だ。都心に比べ、コロナ感染者が少ない地方であっても、そこで暮らす人びとは「都心以上に感染に敏感」であり、コロナ禍の影響は決して小さくない。また、地方デパートは、長年地域で信用を得、顧客から○○さんと「さん付け」で呼ばれ、親しまれて来た。だが、老舗ゆえに、設備の老朽化やブランドの陳腐化が表面化し、狭い市場と限られた経営資源の中で、難しいかじ取りが続いている。
またしても山形の老舗百貨店が経営破綻
今年7月、またも地方百貨店の経営破綻が発生した。山形県酒田市の百貨店「マリーン5清水屋」が閉店し、運営会社が破産開始決定を受けた。山形市の大沼破綻から1年半、山形県のデパートは名実ともにゼロとなった。山形は47都道府県の中で人口は上から36番目で、かろうじて( 失礼)人口百万人の県である。同店は、日本百貨店協会の会員ではないため、大沼の破綻時には「山形県は百貨店消滅県」として報道された。もちろんマリーン5は、酒田市において、前身の「清水屋百貨店」の時代から地域に密着した老舗として愛されてきたのだが・・・
地方都市に共通する顧客の高齢化や人口減少は、ここでも例外でなく、市の中心部の空洞化が進行、業績は低迷した。この間、経営母体も変遷したが、コロナ禍に加え、5月に会社の顔だった代表の死去も重なり、事業継続を断念した。
「経営母体の変遷」といった凋落の経緯は、2020年に破綻した、同じ山形の大沼の末期と酷似している。いずれの場合も、残念ながら地元や近隣から「救世主」が現れることはなかった。怪しい投資ファンドまでが介在した大沼の最後に比べ、「潔い最後」だったと言ったら、言い過ぎであろうか。
このほか、大手系列では今年2月、そごう川口店、三越恵比寿店など、長年地域の顔として親しまれた店舗も姿を消した。人口増が著しい埼玉・川口、人気スポットとしてブランド力のある東京・恵比寿。それぞれ特色ある立地を強みに持ちながらも、閉店に追い込まれたところに、百貨店存続の難しさがある。
地方独立系デパートの売上高トップは天満屋
都心の大手資本系列ではない、地方百貨店の売上高トップは、中国地区を地盤とする天満屋(551億円、岡山県)で、前年1位の松屋(473億円、東京都)と入れ替わった。
銀座、浅草のインバウンド需要の消滅に加え、都心ほどコロナ自粛によるマイナスが顕著に表れた結果であろう。以下、3位は井筒屋(439億円、福岡県)、4位は鶴屋百貨店(419億円、熊本県)、5位福屋(404億円、広島県)と西日本の地方百貨店が続く。
売上高上位10社のすべてが、前期比2桁以上の減収率となった。
地方( 独立系) 百貨店の売上ランキング
1位 天満屋( 岡山県)
55151百万円( 前年比▲31.17% )
2 位 松屋( 東京都)
47347百万円( 前年比▲42.01% )
3位 井筒屋( 福岡県)
43960百万円( 前年比▲25.13% )
4位 鶴屋百貨店( 福岡県)
41901百万円( 前年比▲21.19% )
5位 福屋( 広島県)
40471百万円( 前年比▲18.03% )
6位 丸広百貨店( 埼
玉県) 38454百万円
( 前年比▲17.06% )
7位 藤崎( 宮城県)
37471百万円( 前年比▲16.50% )
8位 大和( 石川県)
32654百万円( 前年比▲21.32% )
9位 トキハ( 大分県)
31905百万円( 前年比▲19.30% )
10位 山形屋( 鹿児島県)
31213百万円( 前年比▲25.94% )
閉店相次ぐ百貨店 コロナの追い打ちで経営破綻も
7月の山形県酒田市の「マリーン5清水屋」の閉店については前述したとおりだ。大手系列も、先に述べた川口そごうや恵比寿三越だけではない。
「めいてつ・エムザ」が運営する、金沢名鉄丸越百貨店(石川県)は3月に、親会社の名古屋鉄道がМ&Aを通じて関東地区のディスカウントスーパー経営会社に株式を売却。金沢丸越百貨店に社名を変更し、「金沢エムザ」に店名を変更して再スタートを切った。
新型コロナの影響を受けた2020年度の百貨店業績は、不振に喘ぐ業界にさらに追い打ちをかけ、市場規模は1年で1兆5000億円、前期比で約3割も縮小した。大幅減収と赤字に見舞われ、人員削減や減資などのリストラ策を実施した企業もあったが、多くは「焼け石に水」の状態と言わざるを得ない。また、感染の再拡大に伴い、引き続き時間短縮や入場制限による営業などを余儀なくされ、今期業績もコロナ前まで回復するのは厳しい見通しだ。
百貨店は、かつての地域経済の雄としての存在感が薄れ、閉店や淘汰が続いている。「選択と集中」で不採算部門からの撤退、収益を維持するための業態転換などの模索が続くが、新型コロナの収束が見通せない中で、このままでは更なるドラスティックな改革が避けられない様だ。
新たな消費者行動を見据えた改革は必須
業績回復見通し厳しく リストラは必至か
コロナ禍2年目の今期(2021年度)の業績が注目されるが、最大手の髙島屋の第1四半期決算(2021年3~5月、連結)の売上高は、前年同期比42%増の回復ぶりを見せた。最終損益は赤字ながらも13億円(前年同期は205億円の最終赤字)に止まり、一見すると「薄日が差した」様にもみえる。
だが、前年同期はちょうど1回目の緊急事態宣言の発令で休業措置などにより混乱した時期だ。コロナ前の2019年3~5月と比較すると、売上高やはり70%に止まっている。
今期の百貨店の状況では、残念ながら客足がコロナ前に戻る見通しは正直厳しい。また、最近は都心百貨店を中心に、売場でのクラスターが多発し、ただでさえ厳しいなかで自主的な営業休止も迫られている。感染者数拡大のもと、特に大型店舗のマネジメントの難しさが表面化している。
地域経済と小売業界の雄だった百貨店の存在感は完全に薄れ、閉店や淘汰(とうた)が相次いでいる。「選択と集中」で不採算部門から撤退し、業態転換に乗り出すなど、生き残りをかけた模索は続く。
ワクチン接種は進んでも、百貨店業界には明かりはまだ見えてこない。これは日本経済全体も同様だ。繰り返しになるが、ネット販売への移行や、富裕層シフトといった、各社横並びの「金太郎飴」的な対応だけでなく、新たな消費者行動を見据えて、より踏み込んだ改革が必須だ。
ここで、首都東京のコロナの状況を確認しておこう。(9月20日現在)
現在のコロナ状況
東京都では、 新型コロナの新規感染者が、1週間前より500人減。
東京都内では、新たに565人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、4日連続で1000人を下回った。1週間前の日曜日より502人減り、前の週の同じ曜日を下回るのは28日連続だ。7日間平均は815人で、前の週の59%、前の週の平均を下回るのは26日連続で、感染確認の減少が続いている。
都の担当者は「感染者は7月12日以来の500人台で、減少傾向は先週ごろから顕著だ。一方で、入院患者や重症者は引き続き高い水準で医療のひっ迫も続いているので、外出自粛や感染予防の徹底をお願いしたい」と話している。
年代別では未成年者は129人、20代が129人、30代が100人、40代が95人、50代が47人と、ワクチン接種の効果とデルタ株の特徴であろうか、比較的若年層の感染が多い。60代以上はいずれも20人前後だ。
感染経路がわかっている260人の内訳は、「家庭内」が最も多く187人と引き続き最多。
これで、都内での感染確認者は累計37万1990人になった。
重症患者の年代別は、20代、30代は一桁台に止まり、40代が22人、50代が69人、60代が41人、70代が22人となっている。若年層の感染は増加しているが、重症化には至っていない、ということが読み取れる。
入院している人は、前日より75人減って2436人で、「確保している病床に占める割合」は37%。都の基準で集計した現時点の重症患者は6人減って171人となり、重症患者用の病床に占める割合は34%となった。8月の様な「病床逼迫」はかろうじて脱した様だ。
〈付録〉
9月の本欄「デパートのルネッサンスはどこにある?」 でコロナ狂想曲とコロナ葬送曲に掲載しきれなかったが、1ヶ月前の東京都の百貨店に対する「通達」を開示する。8/20
『日頃より、東京都の施策の推進に御理解と御協力をいただき、感謝申し上げます。
8月19日付けで東京都の総務局長より日本ショッピングセンター協会宛にとどいた通達「人流5割削減・連携推進事業」の実施について(依頼)・・・【全文】
現在、都では、爆発的に新規陽性者数、重症患者数が増加しており、まさに「災害時」と言うべき、極めて切迫した状況が続いていることから、この度、緊急事態措置の実施期間を9月12日まで延長しました。今回の措置においては、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく要請として、百貨店の食料品売場、いわゆるデパ地下等に対しても、入場者に対するマスク着用の周知や、発熱等の症状のある者の入場禁止等の措置を要請しております。
また、先日開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会において、感染の急激な拡大に歯止めをかけるため、昼夜を問わず、東京都の人流を今回の緊急事態措置開始直前の7月前半の約5割にすることが提言されました。これを踏まえ、都は「人流5割削減・連携推進事業」を実施することといたしました。
本事業は、事業者の皆様に、施設入場者の入場整理等の徹底、人と人との距離の確保、不織布マスクの正しい着用など、基本的な感染防止対策の更なる徹底をお願いするとともに、事業者の皆様との双方向の意見交換や情報交換を通じて、実効性のある感染防止対策を立案し、施設の入場者を今回の緊急事態宣言前の5割に削減すること、入場者・従業員の皆様の感染リスクを低減することを目指すものです。事業の実施にあたっては、都の職員が直接施設を訪問し、取組事例をお示し、施設の状況を伺いながら、具体的な対策の立案・実施につなげてまいります。
近日中に、大規模な施設を中心に、貴団体の会員事業者様宛てに、都の担当者から施設訪問の日程調整等の御連絡を差し上げる予定ですので、関係者の皆様への周知等につきまして、よろしくお取り計らいくださいますようお願い申し上げます。
皆様におかれましてはすでに様々な感染防止対策に取り組んでいただいているところでございますが、より一層の御理解、御協力をよろしくお願いいたします。』
口調は穏やかな「お願い」の体だが、各百貨店やSCに、都の担当者が見回りに行くから、絶対に守れよ!という「脅し」の匂いが漂う文章だ。本人達は既に「当たり前のこと」として意識すらしていないであろうが。もし、都の指示や命令を聞かなければ・・・というニュアンスが盛り込まれている。
少し前に西村担当相が行った飲食店への「恫喝」と同根の発想だ。尚、同氏はネット民からの猛反発を受け、最近はニュース番組にもほぼ登場しなくなったが・・・
医師会への協力要請もこのくらいドスの効いた文章で、気概を持って推進していただければ、医療崩壊も防げるのではないか、とシロウトは思ってしまう。
筆者の知り合いは、都心でショッピングセンターの館長をしている。彼に聞いたところ、この通達の後に都の担当者から「見回り」のアポイントが入ったという。が、結局、担当者の来訪は無かったそうだ。
誤解されるといけないので、付け加えておくが、東京都や保健所の職員は、(この8月は特に)連日の残業= 超過勤務で文字通り昼夜を問わず働いている。現場の人間は、デパートマンもお役人も皆、賢明にその職務を全うしようとしているのだ。
もし、コロナ対応において不作為があったとすれば、政策や方針を決め、本来その責任を取る立場にある、トップである。もちろんその大元は、9月一杯で勇退される、我らが総理大臣である。彼はコロナ対応を優先するために、自民党の総裁選も辞退した「人物」なのだから当然だが・・・
彼は10月になれば、すべての緊急事態宣言を解除すると言っている。就任から1年、彼の実施したコロナ対策は以下の3点だ。
①緊急事態宣言の発出
②その延長
③その解除 以上。
失礼、後は原稿を読んでいた。忘れてはいけない。
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