デパートのルネッサンスはどこにある? 2020年06月15日号-4

マスクを付けた入口のライオン像 20020年6月9日

鎌倉市の家賃補助金100万円は、ただのポーズ?

 コロナウイルス感染防止のため、観光客の抑制を進める鎌倉市は、事業者に強く営業自粛を要請し、最高100万円の家賃補助の助成をするとしたが、実行要件として本店登記・住民登録など厳しいハードルを掲げ、実際に適用を受けられた人はごくわずかだ。観光都市を支える事業者が、よそものだからと除外する事自体異様だが、家賃を払って事業をするということは、外部の者というほうがむしろ当たり前であり、鎌倉市の助成は、実行出来ないことを狙って始めた制度、と批判が殺到している。担当者は、2次募集の予定はないとしている。(鎌倉支局)

百貨店「大沼」が消えた山形県で「そのまま復活」

 山形県内唯一の百貨店大沼が、今年1月に破綻、閉店した。この大沼(山形本店)について、商業施設の再生などを手がける東京のコンサルティング会社「やまき」が百貨店としての再開に向け、土地建物の所有者との売買交渉を進めていることが分かった。

 やまきは取材に対し、買収交渉を進めていることを認めたうえで、交渉がまとまった場合は年内にも百貨店としての業態を維持して、営業を再開する意向を示した。破産後、解雇された従業員についても、希望があれば再雇用する考えがあるという。やまきの経営幹部は、交渉の経過や、今後の計画などについては、1カ月程度後をめどに、記者会見を開いて説明したいと述べた。

 大沼の破綻については本紙4月15日号の特集「大沼破綻」で詳細を伝えている。300年の歴史を誇った老舗デパートの閉店を巡り、地元地銀や投資ファンドが繰り広げた「顛末」を、様々なメディアが報道して来た。今回の再生プランについても、本紙はその成り行きを、山形市民の目線で、引き続き追いかけて行きたい。

レナウンが民事再生法の適用を申請

 レナウンが5月15日、東京地裁から民事再生手続き開始の決定を受けた。レナウンは、そのブランドのほとんどを百貨店で展開するアパレル大手だ。老舗アパレルの雄も、長年の経営不振に加え、新型コロナウイルスの影響で主要販路である百貨店の休業が相次ぎ、売上大幅ダウンから資金繰りに行き詰まった。負債総額は約138億円。今後1ヶ月をメドにスポンサーを探す方針という。レナウンと関係会社の従業員を対象に希望退職者の募集も開始。募集人員は300人程度、としている。

 レナウンの単体売上高の6割は、百貨店向けブランドが占める。その百貨店は新型コロナ影響で都心の主要店舗の臨時休業を強いられ、客数が急減した。こういった事態を受け、レナウンの3月次売上高は既存ベースで前年同月比43%減、4月も同81%減にまで落ち込んだ。業績不振から5月中旬以降の債務の支払いにメドが立たなくなり、法的整理の道を余儀なくされた。創業110年を超えるアパレルの名門企業は、あっけない最後を迎えることとなった。

 もちろん、この事態に至るまでには様々な局面があり、コロナ禍という単独の災厄だけが破綻の原因ではない。ただ、地方百貨店の相次ぐ閉店の原因である、地方人口の減少(都市部への人口集中)、少子高齢化と若年層のEC化を背景とする小売ビジネスの縮小という流れの中で、最後の一撃となったことは論を待たない。ワールドやオンワードといった他のアパレル大手も、アフターコロナの世界で、新たな一手を模索しており、「デパートという名の泥船」から、逃れようとする動きも見え隠れして来た。

アフターコロナも日本が1位 中国人、タイ人の「行きたい国」

 インバウンド(訪日外国人)市場への新型コロナウイルスによる影響を把握するため、中国人とタイ人を対象に訪日旅行に関するアンケート調査を実施したところ、両国ともに日本は「行きたい国」の1位となり、訪日旅行への意欲が相変わらず旺盛であることが分かった。「旅行業の復活」には政府による安全宣言が必要不可欠という意見も根強く、今回のコロナ禍によるダメージが最も大きい、とみられる観光産業の「支援」のために旅行をする、という人も少なくない。

 中国人への調査は、ウィーチャットユーザー145人に対して4月初旬に実施した。新型コロナウイルス終息後の国内外の旅行意欲は、79%が積極的であり、「観光産業支援のために積極的に旅行をする」との回答は16%に達した。訪日旅行は72%が前向きにとらえており、「中国政府や日本政府が安全宣言を出したら行っても良い」が57%に上った。一方で「1年以上控える」は9%と、訪日旅行へのマイナス影響は限定的である、と分析している。

 「終息後に行きたい国」は、1位が「日本」(44%)、2位は「タイ」(12%)。日本で行きたい地域は「北海道」が1位となり、2位の「東京」の2倍近い回答数を得た。

 タイ人への調査は、インターネットユーザー417人に対して4月下旬に実施。終息後の旅行意欲は76%が積極的であり、「観光業支援のため」が14%を占めた。訪日旅行は82%が前向きにとらえており、「口コミやマスコミ報道によって安全だと感じられたら行って良い」が40%に上った。「1年以上控える」は5%と少数派で、中国の調査とほぼ同じ結果となった。「終息後に行きたい国」は、「日本」(75%)、2位は「韓国」(7%)。日本国内で行きたい地域は中国とは逆に「東京」が1位で「北海道」が2位だった。タイ人の方が都心志向が強い?

 6月現在、インバウンド需要がほぼゼロとなった都心デパートにとっても数少ない朗報と言える。但し、旅行業界も第2波を警戒し、7~8月から秋にかけては国内旅行に注力する予定で、海外からの旅行者の受け入れは、(もちろん団体旅行を除いても)早くても秋~冬になる見通しだ。大手旅行代理店のJTBは6月から受付時間を短縮して営業を再開したが、海外シェアの高いHISは主要店舗のみの再開に止め、一部の店舗では休業を継続している。

 政府による消費喚起策である「Go To(トラベル)キャンペーン」の事務委託費3,000億円超に対する批判的意見も多く、持続化給付金の電通への再委託の件と同様、政府の不透明な対応に国民の不満は限界に近付いている。デパート業界だけでなく、インバウンドに頼らざるを得ない観光立国・日本の先行き不安はまだまだ続きそうだ。

配達ロボットはコロナ禍のヒーローとなるのか

 コロナ禍で様変わりした街の風景といえば、ウーバーイーツの自転車配達ではないだろうか。もちろん本家であるヤマトの宅急便も、ネット通販の急拡大を受け、利用が2桁増加したのは言うまでもない。食に特化したウーバーの宅配業について、日本上陸当初は中々定着しなかったという印象が、今回一気に払拭された。背景には、コロナ影響でバイトがなくなった生活困窮者の受け皿や、自宅待機を命じられたサラリーマンの小遣い稼ぎと言った側面もあるようだ。

 もちろんこの現象は日本だけのことではないが、海の向こうではもう少し様相が異なる。日本と違い、図らずも首相自らが感染した英国では、厳密なロックダウン(都市封鎖)を実施した。その英国では今回の新型コロナのパンデミックにより、人同士の接触を避けるために、ロボットの利用が活発となった。エストニアの企業が開発する自律走行ロボットは、スマートフォンのアプリ上で指定された場所まで自動で食料品を配達する。スピーカーも備わっており、必要があれば顧客と会話をすることも可能だ。ロボット配達(員?)が到着次第、利用者は携帯を使用してロックを解除し、注文品を受け取ることができる。四角いバケツにタイヤがついた、白いクーラーボックスの様なこの配達ロボットは、現在も80台が稼働しているという。

 コロナによってショッピングの習慣は間違いなく変化しており、英国では今後6ヵ月で実際に店舗を訪れる人が約40%減少するとの予測もされている。このようなロボットの活用が、英国に限らず、アフターコロナの恒久的な「変化」になるかもしれない。だとすれば東京都心を我が物顔で疾走するウーバーイーツの自転車も、あっけなく1~2年で見納めとなるかもしれない。

コラム

たかがマスクされどマスク マスク狂想曲

 6月に入り、市中にマスクが出回る様になった。中国製と思われる不織布のマスクは、一時の高値がウソの様に、コロナ前の価格に戻りつつある。もちろんドラッグストアの店頭でも並ばずに買える様になった。一方、4~5月のマスク不足の最中、確固たる市民権を得た「布マスク」のシェアも高止まりの様相だ。シャープ製の高性能マスクは紙だから別格として、無印良品やユニクロをはじめ、スポーツアパレルやハイブランド物まで、百花繚乱の様相を呈している。

 日中の最高気温が30度を超え、熱中症の心配が出て来ると、涼しいマスクが欲しくなり、筆者もネットで探し始めた。

 スマホや財布の様に、すべての日本人が所有し、高機能やデザイン性を求めるアイテムに「マスク」は昇格したのだ。間違いなく2020年最大のヒット商品だ。

 そこで改めて思いだすのが例の、通称「アベノマスク」だ。もちろんまだ拙宅には届けられていない。埼玉の公立小学校では、生徒にアベノマスク着用を義務付けるという、マジメなのか忖度なのかわからない珍事が発生するに至った。皆、アベノマスクがついに正式名称となったのかと、一瞬思ったほどだ。

 ここからは筆者の妄想にしばしお付き合い願いたい。政府から届いた小さな布マスクに、赤いマジックでNOと書き、そのマスクを着用してツイッターやインスタにアップするのだ。そのSNSの連鎖が大きな流れとなり遂に、「アベNOマスク」運動により、政権交代が実現。という大人のおとぎ話なのだが、ここで大事なコトに気が付いた。アベノマスクは不良品の検査にお金と時間がかかり、未だに20~30%の世帯にしか配布されていないのだ。これではSNSで沸騰した「黒川検事長の定年延長に反対」的な一大ムーブメントにはなりようがない。もしかして、そんなこちらの動きが察知されていたのかもしれない。考えすぎだと良いのだが・・・

連載 デパートのルネッサンスはどこにある?

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