昭和24年10月創刊

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松坂屋静岡店 落合功男店長 直撃インタビュー – 明日を目指す百貨店探訪 第8回

落合店長

【落合 功男店長 略歴】
1968 年12 月生まれ 静岡大学人文学部卒業
1993 年4 月 ㈱松坂屋静岡店入社
2008 年9 月 同社 松坂屋静岡店 紳士服飾・美術品・呉服・宝飾品・リビング用品マネージャー
2010 年9 月 ㈱大丸松坂屋百貨店 松坂屋静岡店営業推進部スタッフ
2017 年3 月 同社 松坂屋静岡店 営業部バイヤー
2018 年3 月 同社 本社経営企画室経営企画部スタッフ
2020 年3 月 同社 本社経営企画室経営企画部長 兼 未来定番研究所長
2021 年1 月 同社 松坂屋静岡店長( 現任)

 松坂屋は、J.フロントリテイリンググループの株式会社大丸松坂屋百貨店が運営する。その一翼を担う静岡店は静岡県下最大級の「本格的都市型百貨店」として発展してきた。

「まずは、松坂屋静岡店の現状についてお聞かせください。」

(落合功男店長)
10月に緊急事態宣言が解除されてからは、様相がガラッと好転しました。同月の売上は前年比約26%増、同入店数は12%増と好調でした。通期の売上はこの状況が順調に続けば予想を達成できるのではないかとの見通しをしております。更に上積みする事も視野に入れています。しかし、今後も何が起こるか予想ができない状況です。1月に急変した場合、この11月12月は大変重要な時期と考えていますので、色々な施策を積み重ねて売上を上げてまいります。

「大丸松坂屋百貨店のビジョンについてお聞かせください。」

(落合功男店長)
 「5年先の『未来定番生活』を提案する百貨店」です。

 5年後の未来に定番になっている幸せな生活スタイルや体験を提供する未来の目利きキュレーターのような存在になります。お買い物の場としてだけでなく、発見や驚き楽しさなど、新たな体験価値を生み出せるおもてなしの場を創出します。

「なぜ、5年先の提案なのですか。」

(落合功男店長)
10年先で考えるとやや先過ぎて予想が付きません。1、2年先では近すぎて、今計画してもそれを実現する頃には既に陳腐化している状況にあります。ここ数年、1年の変化は速く、去年計画したものがこんなに古いものだったのかと思う程です。

 5年先というのは、お客様のライフスタイルに対し、少し先の未来を先取りし、常に5年先を見据えて百貨店のお客様に提案したいとの気持ちを込めております。

ビジョンである「5年先の『未来定番生活』を提案する」を実現する為の静岡店の取組みはありますか。

(落合功男店長)
 大丸松坂屋百貨店は、ビジョンの実現の為の中期3ヵ年計画において、百貨店を再定義しました。百貨店の店舗をモノを売る場所から、価値あるコンテンツを伝達する「オフライン上のメディア=リアル・メディア」と位置付けます。その中心である「人の力」を活用し、オンラインでもオフラインでも、商品だけでない新たな体験価値を提供するというものです。今の静岡店は、ほぼ100%が売場(=モノを売る場所)であります。今後はモノを売るだけではなく、情報発信の場として、サービスの提供や価値あるコンテンツを発信する場としての価値を強化すべきと捉えています。

 静岡店においては、1932年の開店以来89年にわたるご愛顧に感謝するとともに、将来に向けて地域に貢献し続けていくためには何が必要か熟慮を重ねてきました。開店90周年を迎える2022年から2024年にかけて、次なる100年を見据え、今後も静岡のみなさまとともに歩むため、25年ぶりの全館リニューアルを実施し「目的地となる地域共生型百価店」に生まれ変わります。本改装を通じて、体験や滞在すること自体に価値を感じていただける空間作りや、上質かつこだわりに応えるモノ・コトの充実を実現し、静岡駅前での新しい時間の過ごし方を提案します。単にモノを売るだけではなく、多様な価値を創出し、施設そのものが外出の目的となる、静岡駅前の核施設を目指します。

「リニューアルのコンセプトと改装のポイントをお聞かせください。」

(落合功男店長)
 リニューアルコンセプトは「変わらないために、変わり続ける」です。

 静岡店の強みの源泉は「ヒト」「モノ」に関わるブランド力にあります。開店以来、地域の皆様に豊かで上質な文化的価値の高いライフスタイルを提案してまいりました。そして、「人の力」でお客様からの信用・信頼をいただいてまいりました。この二つを「変わらず」に提供し続けて行くと共に、時代の価値観、興味、関心やライフスタイルに沿って変わって行くことで、地域の皆様に長く親しんでいただける存在でありたいという思いを表現しました。

改装のポイントは

①ラグジュアリーコンテンツ(特選ブランド・アート・宝飾・時計)の拡充です。

今の時代に求められるラグジュアリーコンテンツの集積・拡充に加え、美術画廊はアート&ラグジュアリーサロンへと、新たな感性やモノ・コトとの出会いの場へ生まれ変わります。

②ライフスタイル提案型フロアへの再編です。

百貨店が強く顧客支持を得ているカテゴリーを磨き上げます。従来のアイテムや性別で分けられたフロア構成から、お客様自身がライフスタイルに合わせて、選ぶことのできるフロア構成に再編します。5階、6階のリビングフロアに(株)ナフコ( ※1) が百貨店初進出致します。これにより上質なホームファニシングストアを構築致します。リビングやキッチン、寝室など、様々な生活のシチュエーションにあわせた「トータルコーディネート提案」を実現するため、「TWO‐ONESTYLE」をベースに、百貨店顧客をターゲットとした「上質な自分らしい暮らし」を実現する新たな業態を共同で開発します。

③新たな体験や自分磨きのための大型ゾーンの構築です。

都市型アクアリウム(※2)やビューティ&ウエルネスを取り扱うフロア等、コト・体験を軸に静岡駅前にはなかった新しい体験・滞在型の施設で駅前の賑わいを創出します。(リニューアル概要・第一期改装※3) これまで、地方の百貨店は物販がメインで、お客様は特定の用が無ければ来店されませんでした。中元、歳暮を注文する等の用事があるときだけ訪れる場所ではなく、遊びに行きたいと思った時にポッと思い浮かべる、想起されるような目的地となる場所になりたい。そのためには、単店舗で生き残っていけないので、地域と一緒に成長してゆく。地域と共生してゆく。そんな百貨店でありたい。価は、モノだけではなくて、コト、サービスを含めた価値を提供していかなければならない。そんな思いを込めています。静岡駅西口駅前に7つの大規模商業施設がありますが、徒歩10分圏内です。また、郊外大型SC業態が立地していないのは珍しいくらいです。長年にわたり、オーバーストアと言われてきましたが、そのように捉えておりません。それぞれ客層が違いますし、コンテンツも違う。魅力のある施設が揃っていて、買い回りがしやすい街になっています。ただ、物販しかない状態ですから、そこに新しいものを、エンターテインメント性が高いものを入れていこうという構想があるのです。

しずおかMIRUIプロジェクトについて

(落合功男店長)
 MIRUI(みるい)とは、静岡弁で、{未熟、若い}との意です。誰でも最初はみるい。です。そのような静岡県内の事業者の新たな挑戦や困りごと解決をするためのプロジェクに参画しています。プレイヤーは3つの事業者です。一つ目は、リアルの店舗を持つ小売業態の松坂屋百貨店とパルコ。両者はお客様に訴えられる場所を持っています。二つ目がパブリシティを持つ静岡新聞SBS放送。広くお客様に伝えられるメディアを持っています。三つ目が、地域企業を応援するクラウドファンディングサイトのBOOSTER。ここで資金を得ることができます。この3つの事業者が集まり、静岡地域で新しいことにチャレンジしようとしている会社や個人を応援しようとする取り組みをしてきており、これまでの総額調達金額は、約1,900万円(2021年10月末日現在)になりました。現在、25件目のチャレンジを実行中です。具体的な例としては、静岡の中山間地「オクシズ」玉川地区にある古民家のカフェ経営者の、改装して1日1組様限定の古民家ステイ、宿泊を始めたいとの夢を応援しました。当店は、SNSの告知看板や本館1階「MIRUIプロモーションブース」にて紹介しました。パルコでも同様です。そして静岡放送はテレビ出演による紹介。静岡新聞では朝刊に記事を掲載し、クラウドファンディングを呼びかけました。各社の強みを生かした支援を行っています。

顧客の特性について

(落合功男店長)
 年齢層は60歳代、70歳台が中心です。コロナ禍で外出を完全に自粛された層です。

 当店は、世帯年収で顧客ターゲットを分けるのではなく、価値観でターゲットを分けています。文化的な価値が高い生活を志向されている方がいらっしゃいます。当店のターゲットはその方々ですが、比較的高年齢層のシェアが高い。

 今回のリニューアルは25年ぶりの改装です。つまり、25年間は大きな変革を行ってきませんでした。結果的にお客様が歳を重ね、テナントラインナップも歳を取ってきました。

 今回は、これまでのテナントの中で強く支持を得ている所は残しつつ、今のお客様の興味関心に沿う形にリフレッシュしていきます。当店は、ブランドのターゲット層に囚われずに既存の主力のお客様にも新コンテンツを積極的に提案していきますが、いかにご理解頂けるかが重要です。今や、40歳代、50歳代の方々が好むファッションを当店の主力顧客層である60歳代、70歳代の方々が着ていらっしゃる。これらの世代の方々は気持ちも見た目も若くなっています。旧来のご年配の方が着る服を「これがシニアのファッションです」と言われても着たいとは思わない。シニア向けですと提案されても購入を躊躇してしまう。多少派手でも若々しくいたいと思っていらっしゃるのです。

商圏について

(落合功男店長)
 静岡市の中部(3区)が中心です。そしてその次の商圏に焼津市、藤枝市、富士市(ギフトショップ)があります。西は菊川市、磐田市までが商圏です。東は沼津市、三島市までが商圏ですが、東京へ40分で行けますので東京と競合する地域です。御殿場市はアウトレットモールが強い地域です。8月に中部横断自動車道が開通したことにより、山梨へ商圏が広がりました。時計、宝飾、アートの拡販はチャンスがあると考えています。ラグジュアリーブランドは、商品によりますが、百貨店コスメやファッションについては静岡県中部地域のお客様が多いです。ラグジュアリーブランドについては他の小売店での取り扱いがありませんので、お客様は広域から来られています。

外商について

(落合功男店長)
 外商の売上は全売上の27%を占めています。

 今後は、シェアを上げるというよりも、外商・一般ともに、売上金額を上げていきたいと考えています。

店頭について

(落合功男店長)
 地元静岡の産業振興を目的として、地元産品を本館1F店頭にて期間限定で販売するスペースに葵テラスがあります。ローカルコンテンツだけではなく、店として伝えたいメッセージ(SDGsなど)を発信する場としており、年間5〜6割がCSV※企画です。
※CSV:Creatingshared Value = 共通価値の創造の略称

 ローカルの取り組みとしては、静岡新聞SBS、静岡銀行、松坂屋静岡店の3社で開催している「キッズアカデミー×元気!しずおか人in松坂屋」というイベント(静岡の様々な生産者や事業者の元で小学生が学び、後日松坂屋の店頭で商品を販売する)やMIRUIプロジェクトに参加された事業者様のイベントなどを開催しています。また、2019年から、いわゆるセール品以外の催事を強化する中で、「名探偵コナン」、「ミッフィー」、「すみっコぐらし」等のキャラクターや動物等の催事を強化してきています。若年層やファミリーをターゲットとし、キャラクターとの写真撮影や動物との触れ合い等、買うだけではない楽しみを提供することを目的としています。中でも、2020年6月5日〜13日に開催した「しずおか文具の博覧会」は、初日から多くのお客様がご来場され、対予算比110%と大きな成果を残しました。この文具博の様なニッチなものには様々なチャンスがあると思います。ご来店のお客様が、買われた商品を写真に撮り、SNSに挙げられ、それを見た方が遠方からご来店されるとの効果もみられました。秘めている可能性は大きいと感じました。

やさいバスの取組み

(落合功男店長)
 やさいバスとは、㈱やさいバスが作った、生産者とお客様が「おいしいを共創」するための流通の仕組みです。迅速に、鮮度を保ち届けるため、地域の共同配送システムの構築をしています。直売所や道の駅、青果店、卸売業者の倉庫などを集出荷場であるバス停に設定し、「やさいバス」と名付けた冷蔵車が巡回しています。当店はそのバス停の役割を果たしています。農家が出荷した品物を、お客様はその日のうちに当店で受けとれ、生産者も購買者双方の利益向上つながっています。

地域との共生

(落合功男店長)
 当店は、単体で生き残れるとは考えていません。地域社会との共生。それをしなければ絶対に生き残っていけません。そのためには、地域社会への貢献・共生、地域のプレイヤーと一緒に歩むことが重要と考えています。

 行政とも関係を近くしています。静岡市役所は市の山間の地域に愛着を持っていただけるよう、愛称として「オクシズ」を命名し、中山間地域の振興を図るため、「静岡市オクシズ地域おこし計画」を策定し力を入れています。静岡市は林業が発達しており、市からはその木材をたくさん使ってほしいと依頼を受けていますので、当店では、店内の環境や什器にふんだんに使用しようと考えています。地方の百貨店はシンボルとなる場所ですから、お客様を集めやすいですし、お客様に見てもらいやすい場所です。場所の価値を提供することで地域に貢献したいのです。

 製菓専門学校の鈴木学園(静岡市葵区)には製作発表の場を提供しています。毎年11月に、2年次の生徒さんが作ったお菓子をデパチカのウイークリーグルメのブースで販売しており、とても好評を得ています。今年は、県内の島田市の梅公房おおいしとコラボし、酸味のきいた清涼感が特徴の八房梅を使用した焼き菓子を作り、コロナ禍によりオンライン通販を行いました。

 今後の構想ですが、静岡デザイン専門学校(静岡市葵区)が2024年に隣の再開発ビルに入居する予定です。ファッションデザインや、ヘアーアート等百貨店に近しいことを学ばれていますから、店内でのコンテ ストやファッションショウにおいて学生さんの発表の場を提供する等様々な面でコラボレーションしたいと考えています

「静岡店のイチオシをお聞かせください。」

(落合功男店長)
 地域全体が活性化する。皆さんと共に幸せになる。これを社員全員が意識しています。静岡駅前を地域の皆さんと一緒に盛り上げてまいります。

(敬称略)

松坂屋静岡店

松坂屋静岡店外観

店舗データ

  1. 会社名:株式会社大丸松坂屋百貨店
  2. 店舗名: 松坂屋静岡店
  3. 所在地:静岡市葵区御幸町10- 2( 静岡駅前)
  4. アクセス: JR 東海道新幹線、東海道本線、静岡鉄道静岡清水線
  5. 開店: 1932 年
  6. 売場面積: 25,452㎡ 本館及び北館
  7. 営業フロア:本館B1F ~ 8F 北館B1F ~5F
  8. 売上高: 149 億円(2021 年2 月期)
  9. 契約駐車場台数: 3304 台

※県人口:367 万人、市人口:69 万人