昭和24年10月創刊

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編集部より

地方百貨店の今

消えゆく地方百貨店と生き残りを目指す百貨店

地方百貨店の魅力が消えた

街の中心地にあり、人々の憩いの場として長年愛されてきた地方の百貨店は、街の発展やそこに暮らす人々の歴史の中に常に存在していた場所であるが、百貨店を愛用してきた顧客は高齢化で百貨店へ足を運べなくなってしまった。 老朽化した建物や代り映えのしない店内は、若い世代には魅力的に映らず、どこの店舗も新しい顧客を掴むことができない。それどころか顧客の足が遠のいているのが現状である。

閉店が続く地方百貨店

地方百貨店の閉店が注目されたのは、2018年(平成30年)1月31日。かつては全国8都市に店舗があった「十字屋」が、本店の「十字屋山形店(山形県山形市)」の営業を終了し、創業から95年の歴史に幕を閉じるというニュースであった。その十字屋跡地には2021年7月21日にビジネスホテル「ダイワロイネットホテル山形駅前」が開業した。河北新報

2018年6月になると、創業1615年という400年以上の歴史を持つ老舗百貨店の「丸栄(名古屋市中区)」が閉店。 丸栄百貨店の跡地には、2022年3月31日に地上3階建ての商業施設 「Maruei Galleria (マルエイ ガレリア)」がオープン予定。サカエ経済新聞

続いて山梨県の甲府駅前にある「山交百貨店(甲府市)」が2019年9月で閉店となり百貨店事業を終了した。山交の跡地には「ヨドバシカメラマルチメディア甲府」が2021年4月28日に開店した。朝日新聞デジタル

また、北九州を地盤とする老舗百貨店「井筒屋」は、経営不振からの脱却を目指す構造改革に基づき、将来収益の見込めない店舗を順次閉店した。 2018年12月には宇部店、2019年2月 にコレット井筒屋 、 2020年8月には、井筒屋黒崎店が続いた。これにより小倉本店に経営資源を集中させて経営改革を進めていくこととなった。日本経済新聞

2020年1月には、元禄時代から続く日本で3番目に古い山形の老舗百貨店、「大沼山形本店」が自己破産による閉店で世間を驚かせた。そして、山形は初の百貨店が存在しない都道府県となった。人口減少に加え、若い世代が郊外や仙台の大型商業施設へ流れたのも業績悪化の一因ではないだろうか。大沼本店の土地と建物などは山形地裁によって競売にかけられ、 2020年12月 に山形市の外郭団体である市都市振興公社が落札した。建物は取り壊す予定で一致し、今後まちづくりの具体的な方針を検討するとのこと。河北新報

同年8月には、「そごう徳島店( JR徳島駅前のアミコビル)」 が閉店し、徳島も百貨店ゼロ県になった。2021年6月には跡地に「高松三越」がサテライト店として入居した。

翌年、2021年1月には、「天満屋 広島アルパーク店」も閉店した。入居していたアルパーク西棟は、「無印」や「フレスタ」を核テナントとした商業誌施設が2022年春に、東棟も2023年春にリニューアルオープンの予定。広島経済新聞

一方、2021年2月 明治5年(1872年)創業の「さいか屋横須賀店」が閉店したが、地元の人々からの存続を求める声が相次ぎ、3月6日に入居するテナントの見直しや規模を縮小して営業を再開した。これは地方百貨店にもたらされた久々の明るいニュースとなった。店名は「さいか屋横須賀店」のまま。愛称は「SAIKAYA YOKOSUKA SHOPPING PLAZA(さいか屋横須賀ショッピングプラザ)」と名付けられた。百貨店としての営業形態は維持し、外商も継続するという。流通ニュース

長年、業績の悪化が続いていた地方百貨店は、コロナの流行により度重なる休業を強いられ、さらに存続の危機となっている。都市部の百貨店と違い外国人旅行者の減少はさほど大きな影響はないものの、地方の人口が都市部へ流れる状況は止められない。百貨店への来店を促す改革が求められる中、新しい百貨店を目指し奮闘する地方百貨店に注目をしてみた。

百貨店の殻を破る改革をすすめる

「空きスペース活用」と「新百貨店像」~横須賀さいか屋店

閉店に追い込まれた後、地元の人々の再開希望の声で2021年3月に営業再開を果たしたさいか屋横須賀店。営業再開後の5月に空きフロアーをコロナワクチンの集団接種会場として自治体に貸し出した。さいか屋は、横須賀中央駅から近いことと、わかりやすい場所にあり接種会場としては好条件である。そのため接種率upも考慮されたようだ。ワクチン接種者には接種済みの証明書が配られ、それを提示することで買い物の際の特典を受けられるサービスが用意された。日本経済新聞

※2022年3月には高齢者の接種率が75%を超えるなどしたため、さいか屋接種会場を4月30日で終了することとなった。

また、2021年6月、さいか屋は、再建を目指し、健康食品の取り扱いでかねてより取引関係にあった健康食品大手の「AFC-HDアムスライフサイエンス(AFC-HD)」と資本業務提携を締結し、AFC-HDの連結子会社として傘下に入った。今後は、グルメ天国、ふれあいペット王国(ペットショップ)、こどもの国(プレイランド)、いこいの園(高齢者が集う施設)、医療モールなど、従来の百貨店像にとらわれない集客を仕掛ける、魅力あふれる店舗作りをすることで、新百貨店像を作り上げる予定とのこと。

株式会社さいか屋との資本業務提携に関するお知らせ

富裕層・次世代若者・地域密着を柱にリニューアル~井筒屋

2019年には、大幅なリニューアルを行った。さらなる富裕層の獲得に向けた上顧客様専用「VIP ラウンジ」の設置、次世代の若者層をターゲットとした新館改装、インポートブティックゾーンでは、店舗のリニューアル、新規ブランドのオープンなどを進めた。また、地方百貨店ならではの地域の魅力を内外に発信する拠点づくりとして、北九州を中心とする食や名産品を集めたショップ「Kitakyu Columbus」をオープンさせた。新生・井筒屋の誕生

2022年2月期第2四半期の連結業績(2021年3月1日~2021年8月31日)売上高251億円、前年(同期比 107.9%の黒字)。2022年2月期第3四半期の連結業績(2021年3月1日~2021年11月30日)売上高は 383億円、前年同期比 105.7%の黒字となった。

参考:井筒屋公式サイト2022年2月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)2022年2月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

「地域協業」を軸に百貨店の概念を変える~松山三越30年ぶりの大リニューアル

11期連続赤字の店舗であった松山三越が、再生をかけて2021年12月10日に30年ぶりとなるリニューアルオープンをした。改装後は、地下1階、地上8階建ての店舗のうち、2階~4階の3フロアに百貨店機能を集約。その他のフロアは愛媛県内の企業が参画した。地下1階には、スーパーマーケット福島屋が手掛ける「THE CENTRAL MARKET」が出店。1階には愛媛の観光案内カウンター、四国最大級の「坊っちゃんフードホール」がオープンした。8階にはホテルとレストランが併設された。1階に食品フロアを設けるなど、これまでの百貨店とは趣が異なる斬新な発想が、低迷状態の地方百貨店の救世主になれるのか、多くの視線が集まっている。松山三越公式サイト

グランドオープン後の売上は、前年の反動もあり、2022年1月→前年比149.9%、2022年2月→前年比113.1%と好調である。ちなみに2021年 1月→前年比27.2%、2021年2月→前年比32.3%と三越伊勢丹国内グループ百貨店の中でも最下位であった。※三越伊勢丹ホールディングス売上確報より

目的地となる「地域共生型百価店」を目指して~静岡松阪屋25 年ぶりの大規模改装 

松坂屋静岡店は、開店90周年を機に大規模なリニューアルを実施中である。2022年3月9日(水)には第 1 弾がオープン、4月27日 (水)にグランドオープンを予定している。今回のリニューアル第1期では、全館売場面積の55%を改装する。リニューアルは順次行い第2期のグランドオープンは2024年春を目指している。駅前再開発事業と連動し松阪屋が外出の目的地となる静岡駅前の核施設を目ざすという。改装の目玉は、体験型大型ゾーンの設置で都市商業施設内併設型としては、初の業態となる「都市型アクアリウム」の誘致である(2022年4月27日オープン予定)。他にも全室個室の定額制セルフエステ、シュミレーションゴルフのシステムなどを導入したゴルフプラザの設置など幅広い層へのライフスタイルの提案を行う。松坂屋静岡店 25 年ぶりの大規模改装

以前、掲載された「デパート新聞」松阪屋静岡店の記事です。

松坂屋静岡店 落合功男店長 直撃インタビュー – 明日を目指す百貨店探訪 第8回

2022年春、百貨店に水族館が登場

地方百貨店の改革には、地域との共存は切り離すことができず重要なポイントとなっている。また、改革には斬新さや大胆さが求められ、それには大規模な店舗のリニューアルが伴ってくる。現実的にリニューアルの集客効果は結果を残しているが、その資金がない地方店舗は古い建物を維持しながら改革を目指さなければならない。そのような店舗が多く存在することも現実である。低迷を続ける店舗は、限られた中でどのような改革ができるのか、新型コロナウィルスの影響も続く中、モチベーションを維持できるのか、現状はとても厳しいものがある。