デパート新聞 第2687号 – 令和4年5月15日

3月全国は4.6%増

 日本百貨店協会は、令和4年3月の全国百貨店(調査対象73社、190店〈2022年2月対比+1店〉)の売上高概況を発表した。売上高総額は4260億円余で、前年同月比4・6%増(店舗数調整後/2か月ぶりプラス)だった。

百貨店データ

  • SC販売統計3月
  • 都市規模別・地域別 売上高伸長率
  • 神奈川各店令和4年3月商品別売上高

百貨店の時代 その39 – 外商員の外の顔

デパート新聞社 社主
田中 潤

外商員に必要な心がけ

 外商員でも法人顧客を担当する人は、入札や相見積などで社外の取引先と競合することも多い。つまり、自社の商品と他社の商品との争いをしなければならない。こうした時、相手と敵対することは決して良い選択とはいえない。むしろ長い目で見ると、お互いに助け合う方がプラスは多い。

 もちろん、入札で談合するというようなことは論外だが、お互いに情報交換して顧客により良い商品を適正価格で提供するというスタンスは、これからの時代に必要な方法と言えるだろう。つまり、外商員は間口を広げたコミュニケーションを心掛けなければならないのである。

思いやりをもった対応

 昔は、デパートによってはプライドが高く、顧客に対して買っていただくというよりも売ってあげるというスタンスの外商員も多かった。今はそうした社会情勢ではないが、やはり大手のチェーン店などと比べればデパートは横柄になりがちである。

 地方百貨店は、地域のあらゆるステークホルダーに対して、思いやりをもって接していくことが肝要である。外商員は、同業者・仕入先に対しても相手の立場を考えて付き合っていくことを、常に心がけていかなければならない。とにかく商品を売り込む、という視野の狭い意識を捨て、顧客であれ取引先であれ、相手の求めているものを探してあげる、あるいはウィークポイントをカバーしてあげるという視点で、じっくり商いをしていく姿勢が大切である。相手から「これをやってくれないか」と持ちかけられる関係になるのが理想である。

 こうした種蒔きから始めるので、外商員の異動は基本的にタブーである。そのポストが短ければ短いだけ、目先の売上しか考えない商売に走ってしまうからである。長い目で自分(デパート)を基点にして顧客・取引先との糸を紡ぎ、一度商売の流れを掴めば、その後は一つの形の中で驚くほど成果が上がる。これが、外商ビジネスの醍醐味である。

教育システムの再構築

 これまでデパートの経営者は、どのようにしたら外商員が数字を作れるのかを徹底究明してこなかったのである。このつけは大きい。地域とのつながりが重要である地方百貨店の経営者は、改めて外商員を活用する方針について考えねばならない。そして、外商員の教育システムを再構築することである。当然、人事部がその教育の中心になるが、地域内の外部の頭脳も積極的に取り入れて未来志向で進めていく必要がある。

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 今年のゴールデンウイークは、コロナ禍の中で久しぶりに人々が遠出をすることに市民権を得た時間となった。混雑の状況を最も端的に示す高速道路の渋滞も、数年前のレベルを示したようである。コミュニケーションをとることの重要性を、多くの人が痛感している顕れとも言えよう。

 感染しないことを第一義に何年も人との接触を避け続けることで、人生におけるかけがえのない時間を失うよりも多少のリスクはあろうと、人間らしく生きようということが決して大袈裟な話ではなくなってきているのであろう。

 そして、もはやこの流れは夏に向けて止められないのかもしれない。

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百貨店のライバルなのかそれとも救世主か

 去年10月14日に発表されたファーストリテイリングの2021年8月期(連結決算)は、売上高2兆1329億9200万円(前期比6・2%増)、営業利益2490億1100万円(同66・7%増)当期純利益1698億4700万円(同88・0%増)と増収増益だった。

 今や、デパートのキーテナントとしても存在感を増している「ユニクロ」だが、そもそもは郊外型のロードサイドが主戦場だった。食品スーパーやファミレスといった、他のスタンドアローンの店舗との買い回りも重視しているからだ。この戦略は今も変わっていない。どちらにも失礼な言い方になり恐縮だが、ファッションセンターしまむらや西松屋と変わらないポジションであった。

 テナント出店のスタートも、イオンに代表される地方= 郊外立地のショッピングセンターの大型核テナントとして、徐々に存在感を増して行ったという印象だ。この辺りは無印良品も同様だ。

 それが、もはや押しも押されもしない、国内№1アパレル企業であり、ロードサイドや、ショッピングセンターに止まらず、ついには都心ターミナルの老舗百貨店への出店をはたしている。

 好むと好まざるとにかかわらず、百貨店内での存在感は増しており、衰退産業と揶揄されるデパート業界にとっては、もはや無視できない「集客の柱」となっているのも事実だ。姉妹ブランドのGUとともに、引く手あまた、向かう所敵なしの状態だ。

 銀座、新宿渋谷池袋、吉祥寺など主要ターミナルでは、ビル一棟を借り上げてユニクロの大型基幹店としている。土地代や賃料は高いが、大型売上が見込めることと、高額な賃料も「宣伝費」だと思えば問題ない。新宿の「ビックロ」の様に、家電量販店との協業という新たな手法にも挑んでいる。

 前述の様に無印良品やニトリと同様、都心の大手百貨店へのテナント出店という形態も増えており、駅ビル(ショッピングセンター)との「取り合い、奪い合い」の様相も見て取れる。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年05月15日号-47 を御覧ください。

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