連載小説 英雄たちの経営力 第2回 豊臣秀吉 その5
こうした奇跡的な仕組みを編み出し、実際に成果を上げた秀吉と利休だったが、蜜月は長くは続かなかった。次第に秀吉は賢明さを失い、金の卵を産み続ける利休を殺してしまう。その理由は単純だ。
秀吉本人に黄金の茶室を生み出せるような芸術センスがあったことで、秀吉は「利休がいなくても自分だけでやっていける」と思い込んだのだ。つまり秀吉は、権力と権威の双方を己のものとし、現実世界と精神世界双方の覇者になろうとしたことになる。
だがブームは、利休という逸物がいてこそ続いていく。秀吉は多忙に過ぎ、次第にこの仕組みを維持・発展させていくことに意欲をなくしていった。その逆に、本来持っていた虚栄心が頭をもたげてくる。そういえば、俳句には青葉闇なる季語もあるが、今の私たちの心を上手に言葉にしているようでもある。
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『黒南風の海 – 加藤清正』や、鎌倉時代初期を描いた『夜叉の都』、サスペンス小説『横浜1963』など幅広いジャンルで活躍
北条五代, 覇王の神殿, 琉球警察, 威風堂々 幕末佐賀風雲録 など。