デパート新聞 第2702号 – 令和5年1月15日

2023 States of Tops Message

㈱三越伊勢丹ホールディングス 取締役代表執行役社長 CEO細谷 敏幸

企業活動を通じて社会課題の解決に貢献し、豊かな未来と持続可能な社会の実現を支えるべく取り組む
㈱三越伊勢丹ホールディングス 取締役代表執行役社長 CEO細谷 敏幸

 2023年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年は、With コロナの行動様式が定着したことで国内は社会経済活動の正常化が進みました。当社におきましても、新宿・日本橋の両本店をはじめとした各店で多くのお客さまにご来店いただいております。特に伊勢丹新宿本店は、まだ海外からのお客さまがコロナ禍前のご来店客数に戻らないにもかかわらず、22年度上期は統合以降最高の売上高を記録しました。通期では、過去一度しか達成していない,3000億円超の売上を見込めるほどの回復となっております。

 当社グループは、長期に目指す姿を「お客さまの暮らしを豊かにする、‶ 特別な″百貨店を中核とした小売グループ」と定め、昨年秋から2 0 2 4 年度までの3ヶ年で従来の百貨店モデルからの変革を図る「百貨店の再生」を目指した中期経営計画を推進中です。現在、大変多くのお客さまにご支持を頂いておりますのも、この経営計画で‶ マスから個へ″を合言葉に「個」のマーケティングへ徹底的にシフトすることで、店舗やデジタルを駆使したあらゆる手段でお客さまとつながり、お一人お一人のご要望にしっかりとお応えする戦略が想定以上の速さで成果をあげているため、と考えております。加えて、お客さまのご要望を伺っていくことで、従来の百貨店では扱っていなかった商品やサービスも当社の信用のもとにご提供する可能性も拡がりつつあります。こうして、3ヶ年計画初年度の業績は期初の計画を上回る見込みで順調に推移しております。迎えた2023年は、「百貨店の再生」をさらに推し進めながら、次期3ヶ年計画で目指す「グループ企業による連邦戦略」の展開フェーズへとスムーズに移行するための重要な年となります。百貨店の再生により多くのお客さまから頂いた信頼を、当社のグループ企業全てでお応えする仕組みを構築するため、グループリソースの活用による外販の強化や、グループ企業が蓄積したスキルとノウハウの組み合わせによる提供価値のワンパッケージでのご提案などによって、収益の手段や規模を高めてまいります。その先には、「三越・伊勢丹のまち化」として、より多くのお客さまに「来街・滞在・回遊・居住」頂けるための複合用途をご提供する一方で、そのインフラとなる不動産、金融決済、データシステム等の事業までも当社のグループ連邦で支える「百貨店を″核〟にした魅力あるまちづくり」の基礎を作ってまいります。

 また、サステナビリティの取り組みでは、環境や人権に配慮したサプライチェーンマネジメントの実践に向け、お取組先さまとの対話活動を実施したほか、「パートナーシップ構築宣言」への賛同を公表いたしました。今後も当社グループは、企業活動を通じて社会課題の解決に貢献し、豊かな未来と持続可能な社会の実現を支えるべく取り組んでまいります。

 最後に、お客さま、株主の皆さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまのご愛顧に改めて感謝し、皆さまのご健勝と、さらなる飛躍の一年となりますことを心よりお祈り申し上げます。

㈱近鉄百貨店 代表取締役社長執行役員 秋田 拓士

今年は従来の百貨店の枠から飛び出し、新たな事業へ積極的に挑戦していく重要な一年。
困難な状況にあっても、臆することなくチャレンジを続け我々にしかできない新たな百‶価″店を創る
㈱近鉄百貨店 代表取締役社長執行役員 秋田 拓士

 皆さん あけましておめでとうございます。

 新春を迎えるにあたり、謹んでお喜び申しあげます。昨年一年間、皆さんが厳しい状況下、それぞれの職場において示されました懸命なご努力に対し、心から感謝の意を表したいと思います。

 さて、今世界は、コロナのパンデミックに加え、不安定な国際情勢が続いたことで、先が見通しにくい状況が続いています。グローバル経済下での自国主義の台頭、国内では急激な円相場の変動や物価高騰など、社会経済全体が大きくパラダイムシフトしようとしています。

 このような不確実性の高い状況下、人々の暮らしに対する意識も大きく変化しています。我々は、改めて、一人ひとりのお客様のニーズしっかりと見つめ、その変化に寄り添い、暮らしの新たな価値を創造していかなくてはなりません。

 長期的な視点にたち、SDGsの共通認識のもと、世界や日本が、未来に向かって持続的に発展することに貢献することが我々の使命でありESG経営の実践でもあります。

 当社はこれまで、長きにわたり小売業を原点に、地域社会の発展に貢献してきました。今、この世界的な大きなパラダイムシフトの中で当社は、培ってきた地域との絆をさらに強め、小売業から脱却し、お客様へ地域・地方の新たな価値を提供する事業者への挑戦を始めます。

 「日本創生」を主眼として、地方の過疎化や環境保全などの社会課題に向き合い、新たな価値を地方と共に創造し、発信する「地方創生活動」をスタートさせ、まずは二つの施策に取り組みます。

 一つ目は、関西のみならず、全国各地方の魅力発掘・発信に取り組みます。既に「北海道どさんこプラザ」、地方百貨店10社を結ぶ「全国ご当地おすすめ名産品」サイトを運営していますが、これまで培った地域共創のノウハウをベースに、当社の販売力や価値共創力を必要とする全国各地と連携してまいります。具体的には、各地方の素晴らしい歴史、文化、暮らしの価値などをクローズアップし、各地の行政や関係者と共創しながらアンテナショップを運営することや、地方振興につながるPRに寄与するなど、当社の幅広いお客様が地方の価値を再発見する「地方創生事業」へと発展させていきます。

 二つ目は、農業ビジネスへの参入です。自ら生産者となることと併せ、地域農産物の生産から販売までのネットワークを構築し、地域との結びつきをより深め、就農人口減少などの課題解決も目指します。

 生産事業については、需要も高く高付加価商品でありながら生産者が減少している「苺」の生産に、まずは着手します。DXや先端技術も積極的に導入し、順次、生産量や品目も拡大していく予定です。

 販売事業については、奈良県を中心に生産者500件をネットワークし、都心部へ直送販売する「ハルチカマルシェ」を展開しています。

 旬の朝採れ野菜をお届けすることや、グループ協業による鉄道輸送も環境に優しい事業として、お客様にご好評を頂いております。

 今後、我々の強みである店舗、外商やECサイト等販売チャネルをさらに活用し、拡大していきます。

 今年は、従来の百貨店の枠から飛び出し、新たな事業へ積極的に挑戦していく重要な一年となります。当社が、将来にわたり社会に貢献し続けるためには、これまでの考え方に拘わることなく、常に創造と変革をしていかなくてはなりません。商品やサービス、事業の価値を生み出すのは、皆さんひとり一人の創造力です。困難な状況にあっても、臆することなくチャレンジを続け、我々にしかできない新たな百″価″店を共に創ってまいりましょう。

 終わりになりましたが、新型コロナウイルス感染症の収束にはもう少し時間がかかりそうです。引き続き感染防止対策と、健康管理に留意ください。皆さん方ならびにご家族のご健康とご多幸を祈念して、年頭のあいさつといたします。

11月全国は4.5%増

 日本百貨店協会は、令和4年11月の全国百貨店(調査対象71社、185店〈2022年10月対比マイナス1店〉)の売上高概況を発表した。売上高総額は4692億円余で、前年同月比4.5%増(店舗数調整後/9か月連続プラス)だった。

地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その1 資本主義の限界とデパートの役割

日本の資本主義の本質

 地方デパートの逆襲を語る上で、まず言わねばならないのは、資本主義との関係です。資本主義は英訳すればキャピタリズム、つまり、一つの解釈として、資本主義とは、資本を活用して投資を続ける目的を持った主張と言えるかと思います。

 そこで、日本で資本の再投資が行われているのかというと、疑問符がついてしまいます。例えば、巨額の内部留保を抱える大企業は、政府が様々な形でお金を使わせようとしますが、一向に資金投資に舵を切ろうとしません。自らの保身だけを経営理念として掲げているかのようで、従業員・取引先、ましてや地域に対して資本を投資(還元)することに前向きな意識を持とうとしません。

 個人にも似たような傾向があります。富裕層と言われる人々は、貯め込んだ財をむやみに消費しようとしません。買いたいものが無くなっているといえば確かにそうなのですが、何かのため、誰かのために使うという選択肢はないようです。

全文は 地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その1 資本主義の限界とデパートの役割 を御覧ください。

百貨店データ

  • 神奈川各店令和4年11月商品別売上高
  • 都市規模別・地域別 売上高伸長率
  • SC販売統計11月
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 箱根駅伝は、駒沢大学が評判通りの強さで圧勝した。一方で、55年ぶりに出場した立教大学は16位で完走し、沿道の歓声を受けた。最後に出場した1968年の大会はわずか8秒の差となり、シード権を逃し、それ以来の出場と聞くと感慨もひとしおである。当時は、大学もセレクション(スポーツ選手の優先入学)が活発で、立教大学はその翌年には天皇杯サッカーで準優勝している。今では、考えられない風景である。

 さて、最近は新しい形での入学優先制度をほとんどの大学で実施している。箱根駅伝も伝統校の復活が増えていくのだろうか。

デパートのルネッサンスはどこにある? 2023年01月15日号-61 シリーズ「そごう・西武」売却 第5弾

【新たな登場人物】

 「シリーズ『そごう・西武』売却」は、第4弾の「混沌とする西武売却」を12月15日号でお伝えしたところだが、筆者は同日朝のニュースで豊島区長の会見を見て驚いた。

 そごう・西武の「売却劇」に新たなステークスホルダーが登場した、と言っても過言ではないだろう。この先、この問題がどう決着するかは判らないが、混迷を極める「池袋西武へのヨドバシ進出」に、またも異例の事態が発生したことは確かだ。

 ニュースの骨子は、会見を開いた豊島区の高野区長が「ヨドバシカメラの池袋進出にストップをかけ、西武百貨店池袋本店の「顔」を存続させる」ことを嘆願する内容だ。

 高野区長は池袋西武の「救世主」となるのか。セブン&アイ、ヨドバシカメラ、そごう・西武(とその労組)、西武ホールディングスに、行政である豊島区や地元商店会までが加わり、マスコミや一般市民も巻き込んで、議論は更にヒートアップしそうな勢いだ。

全文は デパートのルネッサンスはどこにある? 2023年01月15日号-61 を御覧ください。

連載小説 英雄たちの経営力 第6回 平清盛 その1

連載小説 英雄たちの経営力 第6回 平清盛 その1

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