デパート新聞 第2701号 – 令和5年1月1日

新年明けましておめでとうございます

デパート新聞は地方デパート逆襲(カウンターアタック)プロジェクトを実行します

 デパート新聞読者の皆様 明けましておめでとうございます。

 大きな転換点を迎えている資本主義、その一つの歯車でもあったデパートという小売業が存続を問われる局面に直面しています。21世紀になって20年余りの間にその数は2/3以下になってしまいました。特に、この数年の減少ペースは早く、デパートが一つもない県も2つ生れてしまいました。一方で、新たにデパートを作ろうという気運は全くありません。

全文は デパート新聞は地方デパート逆襲(カウンターアタック)プロジェクトを実行します を御覧ください。

2023 States of Tops Message

(一社)日本百貨店協会会長 村田 善郎

お客様の期待に応え、感動を与えられる産業であり続けるべく、コロナ禍を克服し、新たな成長を期して、次代を切り拓く
(一社)日本百貨店協会会長 村田 善郎

 明けましておめでとうございます。

 新年を迎え、会員各社、並びに関係先の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

 昨年は百貨店業界にとりまして、コロナ禍で傷んだ業績の回復に向け、まずは第一歩を踏み出した一年でありました。

 春先までには、まん延防止等重点措置が全国的に解除され、以降、3年ぶりに行動制限のないゴールデンウイークを迎えるなど、社会経済活動の正常化に伴って、会員各社の営業展開も活性化していきました。

 秋口からは第八波の感染拡大に入りましたが、コロナとの共存という意識変化が進むことで、これまで内向きだった消費者心理は、ポジティブに外へ向かいつつあり、最大の商機である年末商戦も例年の賑わいを取り戻しています。

 少し具体的な事象を申しますと、全国旅行支援の後押しもあって、国内の旅行需要は大きく盛り上がり、関連商材が良く動きましたし、家族友人の集まる機会が増加したことで、クリスマスケーキやおせちが堅調に推移しました。

 また、円安による輸入価格の上昇という課題はある一方、為替効果と昨年10月の水際緩和の好影響から、コロナ以降しばらく消失していたインバウンド需要につきましても、中国を除いて復調・拡大局面に転換しております。

 このような増勢基調のもとで新春を迎えられたことは誠に喜ばしく、この間、百貨店業界の営業体制維持に対し、多大なるご支援・ご協力をいただいたコラボレーション会員はじめ関係先の皆様には、改めて感謝申し上げる次第であります。

 一方、苦境を越えつつあるとは言え、お客様に安全安心な買物環境を提供していくためには、引き続き、コロナへの警戒を解くことは出来ませんので、会員店各社のご理解を得ながら、業界をあげて感染防止対策に努めてまいりたいと思います。

 さて本年は、各社におかれまして、いよいよ百貨店事業の本格的な再生・再構築に取り組む年になると思います。さらに加えて現役世代の百貨店経営者には、次世代に向けた成長の基盤づくりが求められてまいります。

 魅力ある業態の価値向上を果たしていく上で、視点は様々ありますが、「企業は人なり」の格言を持ち出すまでもなく、いま改めて「人材の確保と育成」、これが何より重要な経営課題ではないかと考えます。

 当協会は昨年、お取引先業界からの指摘を踏まえ、「百貨店店頭における労働環境改善指針」を策定いたしました。働く場の魅力向上は、人材確保・育成に直結するお取引先との共通課題ですので、この方向で各社の取組みが進むことを期待しております。

 また、業界発展のためには、競争領域で健全に切磋琢磨すると共に、非競争領域においては、協働研究や共通基盤整備が不可欠な要件となります。

 一昨年の経済産業省・百貨店研究会を起点に、その後、当局の指導を得てスタートした各種分科会(情報共有・ロス削減・人・地域・物流の5プロジェクト)での課題解決は、お取引先をはじめ、消費者や地域社会においても有益であり、間違いなく百貨店進化の方向を示すものですので、本年はこの議論を一層加速させてまいりたいと思います。

 以上、協会長としての抱負を申しましたが、会員店各社並びにコラボレーション会員各社の経営トップの皆様には、次世代の成長に向けた基盤づくりという中長期的な観点から、是非ともご理解とご協力をお願い申し上げます。

 人口減少と超高齢化が急速に進む社会環境の中で、わが国の百貨店は、世界に比類のない固有の業態価値を持って存在し、これからも進化を重ねながら、豊かな消費生活の実現に、一定の役割を担っていくものと信じております。

 今年の干支「兎」は、跳躍・飛躍・向上に由来する縁起の良い年。

 お客様の期待に応え、感動を与えられる産業であり続けるべく、コロナ禍を克服し、新たな成長を期して、次代を切り拓いてまいりましょう。

(一社)日本ショッピングセンター協会会長 清野 智

創立50周年を迎え、次の新たな50年を創造すべく、「人材育成」「情報の収集・発信」「研鑽・交流の促進」を柱に、変化に挑むSC協会を全力で支援する

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 2022年は、新型コロナウイルスの感染防止対策への知見が深まる一方、経済活動との両立を目指す政府方針が示されたこともあり、外出先で久しぶりに友人たちと出会い、楽しい時間を過ごす人々の姿を見る機会が増え、改めてリアルの価値とリアルな場を持つSCの強みを感じた1年でした。

 コロナ禍においては、巣ごもり消費や在宅勤務などに代表される消費行動や生活様式などにより人々の価値観に大きな変容がもたらされました。このような中で、2023年のSCは、リアルの場、様々な出会いの場という強みを生かして、お客様の生活をより豊かにする存在に進化していく必要があります。

 これらを踏まえたうえで、SCが2023年に取り組むべき課題は以下の3点だと私は考えています。

 1つ目は、「リアルな場を持つ強みを生かし、お客様の生活の質を高める存在へと進化すること」です。

 コロナ禍では、生活必需品に対するニーズが高まり、その利便性も相まってECの売上げが伸長しました。SCにおいても「今すぐ必要なもの」のみを購入し、短時間で帰宅するお客様が多く見られました。長らくコロナ禍での生活を経験したお客様は「新たな出会い」や「思いがけない体験」といった、単なる購買行動に留まらない経験を求める気持ちを強めていると感じます。

 SCは、リアルな場を持つ強みを生かし、「日々の生活に彩りと潤いを与え、その質の向上に貢献する」存在へとさらに進化していくことが求められていると考えています。

 2つ目は、SCがお客様の「日々の暮らしを支える、真の社会インフラへ進化すること」です。地域の社会インフラとしての使命を持つSCは、長年にわたり防災機能の強化に取り組んできました。加えて、新型コロナウイルスの発生以後は、徹底した感染対策を講じ安全・安心な利用環境を整えるとともに、ワクチン接種会場の提供などにも取り組みました。

 さらに、SCが真の社会インフラへと進化するために、購買目的の有無に関わらずSCで時間を過ごしていただけるような環境や、きっかけづくりが求められているのではないでしょうか。

 3つ目は、「従業員が生き生きと働ける、魅力ある職場へと進化すること」です。

 SCにおいては、コロナ禍で一旦は落ち着きを見せた人手不足の課題が経済活動の再開とともに顕在化してきています。加えて、SCの多機能化や地域との連携強化が進む中で、多様な関係者と協業し新商品や新サービスを創出できる人材の必要性も増してきています。これは喫緊の課題です。

 「SCで働きたい」と感じられる職場へと進化するために、従業員が生き生きと働ける職場づくりが求められています。

 さて、新年恒例の「SCビジネスフェア 2023」は、多くの方々の英知の結集により、今後のSCのあり方について有益な示唆が得られる場となることを期待しています。

 当協会は、諸先輩はじめ多くの方々のお支えにより、本年、創立50周年を迎えることができます。そして、次の新たな50年を創造すべく、「人材育成」「情報の収集・発信」「研鑽・交流の促進」を事業の柱に、変化に挑むSC業界を全力で支援して参ります。

 本年も協会活動への格別のご理解、ご協力をお願いいたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。

㈱髙島屋 代表取締役社長 村田善郎

日本の百貨店独自の強みである「ワンストップショッピングの利便性」「お客様の知的欲求に応える文化性」「期待を上回るおもてなし」に磨きをかける
㈱髙島屋 代表取締役社長 村田善郎

 明けましておめでとうございます。

 2022年は、新型コロナウイルスの感染拡大と収束を繰り返しながらも、行動制限のない社会・経済活動の継続により、消費者のマインドや行動が活性化いたしました。それに伴い、当社の業績もコロナ前の水準に回復しつつあります。しかしながら、世界の地政学的リスクや物価・エネルギー価格の上昇など、経済の先行きは依然不透明であり、予断を許さない状況が続くものと捉えております。

 2023年は、ブランド価値の源泉である百貨店の再生に向けた3カ年計画の最終年度であり、営業力強化とコスト構造改革の両面から、将来のさらなる成長の土台となる経営基盤を構築してまいります。また当社が百貨店経営においてこだわるのは、日本の百貨店独自の強みである「ワンストップショッピングの利便性」「お客様の知的欲求に応える文化性」「期待を上回るおもてなし」であります。お客様第一主義の基本姿勢のもと、これらの3つの提供価値が今日的にどうあるべきかを常に自問自答しつつ、時代や社会の変化にグループの総合力をもって対応し磨きをかけてまいります。

 ESG経営においては、社会課題の解決と事業成長を両立しながら、社会全体を豊かにしていくことを使命と捉え、脱炭素やフード、アパレルのロス問題をはじめとする環境課題への取り組みを加速いたします。加えて、2023年の重点課題として企業の成長を支える人的資本経営の進化に取り組みます。従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、労働生産性を高めることで、働きがいの向上と企業の成長を推進してまいります。

 当社は創業以来190年以上の長きにわたり、ステークホルダーの皆様に支えられて今日を迎えております。次の創業200年をめざし、企業の持続的成長を通じてステークホルダーの皆様への提供価値を高め、ともに成長・発展し続けることができるよう取り組んでまいります。

㈱大丸松坂屋百貨店 代表取締役社長 澤田 太郎

完全復活(=コロナ前の売上・利益水準に復元)とその先の再成長を見据え、もう一段ギアを挙げて突き進む
㈱大丸松坂屋百貨店 代表取締役社長 澤田 太郎

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 新型コロナウィルス感染症の収束は依然として見通せないものの、社会経済活動の本格再開に向けて、国も企業も個人も大きく舵を切る。そんな力強さを感じながらの年明けとなりました。

 当社は、昨年をギア・チェンジの年と位置付けて「守り」から「攻め」へとマインドセットを変え、具体的な成果を追求してまいりました。時間と場所の制約を克服するために、お客様とのタッチポイントの多様化を加速させる一方で、好調カテゴリーの強化、店舗の魅力化にも注力いたしました。それらが実を結び始め、今年は完全復活(=コロナ前の売上・利益水準に復元)とその先の再成長を見据え、もう一段ギアを上げて突き進みたいと意気込んでおります。

 百貨店のビジネスモデル変革に向け、当社が最優先課題として取り組んでいるのは「アプリを基軸にしたタッチポイントのデジタル化」です。アプリの有効会員数の拡大に伴い、得られるデータの質が各段に高まり、その分析によって顧客理解が深化しました。潜在需要の掘り起こしにつながる事例が数多く見られるようになり、大きな手応えを感じております。

 好調な高額品消費に対しては、積極的な投資によりラグジュアリー、高級時計、アートの拡充を図りました。松坂屋名古屋店の時計売場面積を2倍に拡大したほか、基幹店の売場増強や新たな催事の開催、アートの魅力を発信するWEBメディア「ARToVILLA(アートヴィラ)」の立ち上げ、それらと並行して外商の強化を進め、着実に成果を上げております。店舗の魅力化につきましては、昨年リニューアルが完成した高知大丸をはじめとする地方店・郊外店で、集客力のある大型専門店や地域のインフラとなる施設導入を進めております。地域密着を深耕し、地元のお客様だけでなく、旅行客の心をとらえるローカリティを打ち出すことで商圏を広げていきたいと考えております。また松坂屋静岡店にアクアリウム、大丸梅田店に「NintendoOSAKA」や「CAPCOMSTORE&CAFE UNMEDA」など、エンタテイメント型のテナントの導入も進めております。今後も新たなコンテンツを積極的に取り入れ、リアル店舗ならではの魅力を高めてまいります。

 当社は、創業以来提供してきた本質的な価値は「人」であり、その力を最大限に活用することこそが本分ととらえております。その中で、当社の付加価値を高めてくれるスペシャリストたちが育っています。

 例えば、北海道物産展の専任バイヤーや九州のローカルコンテンツを紹介する博多大丸の九州探検隊は、既存のコンテンツの発掘だけでなく、生産者と加工業者を組み合わせるキュレーターの役割も担い、地域のバリューアップに貢献しています。また、15万人以上のフォロワーを持つ社員インフルエンサーは、情報発信だけにとどまらず、お取引先様とのタイアップ商品を発売するまでになりました。人の力が強化・進化していることを大変頼もしく思っております。

 今後も、社員が持つ力、やる気を引き出す企業風土を醸成し、お客様に価値のあるコンテンツをご提供してまいります。

 また、足元だけではなく、将来に向けて避けて通れない課題にも向き合っていく覚悟です。

 最重要マテリアリティと位置づけている「脱炭素社会の実現」については、お取引先様とScope3 削減に向けた対話を重ね、協働の道筋を追求してまいります。百貨店アパレルのあり方についても、先送りせずに真剣に考えていく所存です。

 本年も地球や環境への負荷が少ない商品・サービスを提案する活動「Think GREEN」と、地域との共生を目指した活動「Think LOCAL」を中心に、成果の見えるサステナビリティ経営を推進いたします。

 何卒、本年も変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

㈱東急百貨店取締役社長執行役員 大石 次則

「いつでも、どこでも。一人ひとりの上質な暮らしのパートナー」となるための取り組みを完了させ、地域・沿線のお客様の豊かで上質な暮らしづくりにより一層貢献する
㈱東急百貨店取締役社長執行役員 大石 次則

 昨年は年明けの新型コロナウィルス感染症の急激な拡大や、不安定な世界情勢とそれに起因する物価高や光熱費の高騰など、事業環境に厳しさが増す一方で、「行動制限なし」による外出機会の増加やラグジュアリーカテゴリーにおける消費の活況、インバウンドの再開などの追い風も受ける一年でした。

 そのような状況の中、昨年は「事業構造の転換」「新たな価値の提供」を骨子とする中期三か年経営計画の二年目として、ビジョン「いつでも、どこでも。一人ひとりの上質な暮らしのパートナー」の具現化に向けて着実に歩みを進めてまいりました。

 店舗戦略として、変化を受けて多様化するお客様の価値観に対応し、吉祥寺店は「日常のアップデート」、たまプラーザ店は「ファミリーで過ごす場」をコンセプトに、新たなMD(ブランド)を導入し、構造改革リモデルを実施いたしました。

 また、タイムレス(いつでも)、シームレス(どこでも)にご利用いただけるよう、デジタル戦略として、ネットショッピングの利便性向上と選択肢の拡大を目的としたお取引先との連携スキームの構築や、OMOなどデジタルを活用したお買い物方法の提供に取り組んでおります。

 沿線・地域のお客様とのつながり方を多様化し、新規顧客の獲得と既存顧客の維持・拡大を図る顧客戦略も重要な取り組みとして継続して推進いたします。

 本年は最終年度として、中期三カ年経営計画を完成させる一年となります。

 1月末で渋谷の本店が営業終了いたしますが、永らくご愛顧いただいた顧客との関係維持および新規顧客の獲得を目指し、渋谷で新たな取り組みを行います。

 具体的には「アップグレード」をテーマとした渋谷ヒカリエShinQsの改装に着手いたします。時計・宝飾などのラグジュアリーなカテゴリーの導入、外商顧客専用サロンの新設、ギフトに関するサービス開始などリアル店舗の価値のアップグレードを図ります。さらに渋谷における強みであるフード事業とコスメティックフロアの一層の拡充にも取り組みます。

 また店舗戦略として、吉祥寺店とたまプラーザ店で実施した構造改革リモデルを札幌店でも実施いたします。従来の百貨店のMDにとどまらない新たなブランドの導入により、地域のお客様のライフスタイルやニーズにお応えいたします。

 変化の激しい事業環境の中で上記の計画を推進するためには、「挑戦を楽しむ」ことができる人材の創出と企業風土の改革も進めていかなければなりません。そのためには挑戦する人材を評価できる考課制度や成長を促す育成プログラムの見直しを進め、従業員の挑戦を後押しする人材戦略を実行いたします。

 本年は「いつでも、どこでも。一人ひとりの上質な暮らしのパートナー」となるための取り組みを完了させ、地域・沿線のお客様の豊かで上質な暮らしづくりにより一層貢献できるよう努めてまいります。

㈱小田急百貨店 代表取締役社長 樋本 達夫

小田急グループにおいてリテール事業の中核を担う企業として「強みに特化した領域を最大限活用し、魅力ある接点(場)を共創するプラットフォーマーとなること」を目指す
㈱小田急百貨店 代表取締役社長 樋本 達夫

 昨年は、新宿駅西口地区開発計画の進捗に伴い、新宿店は、新宿駅西口の象徴的な建造物として50年以上にわたり皆さまに親しまれてきた本館での営業を10月に終了し、新宿西口ハルクに移転、リニューアルオープンしました。

 本館の営業終了に向けて全館で売りつくしセールや特別企画、長年のご愛顧に感謝を込めた各種イベントを開催したほか、ハルク移転に向けたプロモーションを実施しました。本館最終営業日まで、連日多くのお客さまにご来店いただき、誠に感謝しております。

 ハルクで新たな門出を迎えた新宿店は、食品、化粧品、ラグジュアリーブランドを中心とした6フロアでのコンパクトな展開となりましたが、リアル店舗の提供価値として支持の高いイベントスペースやポップアップスペース、百貨店ならではのサービス施設なども開設しました。百貨店の提案力を活かしながらデジタルコミュニケーションを強化することで、お客さまのご要望にスマートにお応えしていきます。また、ECサイトやリモートショッピングにおける取り扱いアイテムの拡充や、外商顧客を対象としたブランド直営店アテンドサービスの活用促進など、販売チャネルの拡大にも取り組んでおります。

 さらに、12月には、リニューアル第二弾として、小田急グループが運営する新宿駅西口地下街「小田急エース」北館内に、当社がプロデュースする新しい食品売場「SHINJUKU DELISH PARK」をオープンしました。新たな環境で顧客との接点拡大に努めるとともに、ハルクとの連動性を高めることで、当社が手掛ける食品売場の魅力向上に繋げてまいります。

 本年も、引き続き新型コロナウイルス感染拡大や不安定な世界情勢による影響が見込まれますが、マーケットの変化や百貨店業界の動向、当社をとりまく事業環境を踏まえると、既存事業モデルからの脱却が必須であると捉えております。

 小田急グループにおいてリテール事業の中核を担う企業として、商業価値最大化に貢献すべく、「強みに特化した領域を最大限活用し、魅力ある接点(場)を共創するプラットフォーマーとなること」を目指します。収益性や成長性の観点で選択した領域を、優良な顧客基盤や取引先とのネットワークなどの強みを活かしながら磨き上げるとともに、リアル・デジタル双方における顧客接点の強化を図り、リアル店舗のみに依存しない新たな事業モデルの確立に挑戦してまいります。

㈱東武百貨店代表取締役CEO兼社長 國津 則彦

100年企業を目指し、「東武百貨店は進化した」と感じていただけるよう挑戦し続ける
㈱東武百貨店代表取締役CEO兼社長 國津 則彦

 新年のご挨拶を申し上げます。東武百貨店は2022年5月に池袋本店が開店60周年を、10月には船橋店が45周年を迎えました。これはひとえにお客様やお取引先のご愛顧ご協力の賜物であり、心より感謝申し上げます。

 昨年は政府の方針が経済活性化へと大きく舵を切りました。臨時休業や営業時間短縮など五里霧中だった過去2年と比べると、社員が一丸となって売上回復や周年事業の成功という目標に向かった1年だったと感じています。人々の行動も活発になり、年末には国民がサッカーワールドカップの明るい話題に一体となりました。しかしその反面で世界情勢の様々な影響は今後も予断を許さない状況であり、百貨店は益々力量を試される時代を迎えたと言えるでしょう。そのなかで、当社の周年事業は地域沿線顧客に支持される真のマイストアとはどうあるべきかに向き合う1年となり、『お客様のご要望をカタチにします』を合言葉に、お客様アンケートをもとに新たな改善やサービス・品揃えに取り組みました。池袋本店ではお客様用施設の美化や「次世代」「3世帯」をキーワードにお子様を対象にした施策を行いました。また若手社員を中心に企画した新規催事「47都道府県にっぽんのグルメショー」「昭和レトロな世界展」や、食品・レストランフロアでの地域のお菓子メーカーとのコラボなどが注目を集め、若い世代のお客様の来店に成果を上げました。

 船橋店では『地域密着日本一』を目標に掲げ、より幅広い年齢層のお客様にご来店頂けるような滞在型のフロアリニューアルを実施し、専門店の導入や館内外の美化にも力を入れました。

 当社は東武グループの中期経営方針のもと、地域と共に持続的に発展する企業価値の向上を目指しております。東武グル㈱東武百貨店代表取締役CEO兼社長國津則彦ープ共通ポイント「トブポ」のデータの有効活用による地域沿線利用者の利便性向上や、豊島区制90周年事業との連携、船橋市との包括連携協定の締結など、より地域との結びつきを強めています。

 一方でオンラインが定着し既存のお客様が完全には戻らないと想定される中、商圏を広げ次世代の新規顧客・ファミリーなどに向けた施策をより注力して参ります。

 両店舗を取り巻く環境は刻々と変わっています。期待が高まる池袋駅西口再開発については、国家戦略特別区域として内閣府より令和5年度中の認定が発表され、東武鉄道株式会社が事業主体の一員に決定いたしました。当社はグループ会社として東武鉄道と密に打ち合わせを重ね将来の百貨店像を模索しています。現在は、再開発の際に主役となる20 ~ 30代の若手・ファミリー層の社員達から彼らのライフスタイルやアイディアを訊き、議論しています。西口再開発は駅だけではなく駅前広場の再編、文化芸術拠点としての施設整備を行う大きなプロジェクトです。当社がその駅中核の商業施設として必要とされるよう、従業員には視野広く勉強し大きく夢を描くように言っています。

 船橋市は人口増加が続いていますが、JR南船橋駅周辺の大規模開発や東葉高速鉄道の新駅開発が予定されており地域内競争も活発になるのは必至です。当社も遅れることなく新しい施策を打って参ります。各店の周年は、ゴールではなく通過点に過ぎません。周年事業を経て学んだ事を活かし、お客様やお取引先の皆様に「東武百貨店は進化した」と感じて頂けるよう挑戦し続けることが大切だと思っています。100年企業を目指し、今後も皆様方の益々のご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

㈱松屋代表取締役社長 執行役員 秋田 正紀

「銀座」から「世界」へ。地の利を活かした発信で、個性溢れるブランドに磨き上げる
㈱松屋代表取締役社長 執行役員 秋田 正紀

 周期的に押し寄せる新型コロナウイルス感染症と共存しながら社会活動を維持する「行動制限のない新たな時代」を迎えています。一方で、地政学リスクや金融資本市場の変動等で先行き不透明な状況が続いていますが、まん延防止等重点措置の解除に伴い消費マインドが急速に復調したことに加え、訪日外国人観光客の入国緩和により免税売上もコロナ前となる2019年に迫る勢いの伸びを示す等、私たちを取り巻く環境は力強く前進しています。

 長期間にわたるコロナ禍において、私たちは人とリアルに接することの価値観、そして、絆づくりの大切さを強く認識し、松屋ならではの独自性・話題性を磨き上げてきました。いよいよ厳しいコロナ禍からの脱却が始まった今、私たちに求められているのは、コロナ禍における最大の「学び」を糧に、「銀座」に立地する『デザインの松屋』としての価値最大化を目指すことです。

 それを実現するために、一つは「顧客第一主義」を常に心掛け、日々の業務に取り組みます。度重なる新型コロナウイルス感染症の猛威により、お客様の生活様式や消費行動は大きく様変わりしました。その多様化がさらに勢いを増す中、「顧客第一主義」の精神の下、私たちは「お買物の時間」だけでなく、お客様の「生活の時間」に常に寄り添い、お客様の「豊かな生活」をご提案することが責務となっています。中期経営計画「サステナブルな成長に向けて」では、将来のありたい姿を実現するために「未来に希望の火を灯す、全てのステークホルダーが幸せになれる場を創造する」ことを「MISSION」として位置づけ、あらゆるステークホルダーの皆様との繋がりを一層深めていくことを目指しています。また、さらなる店舗運営の効率化と業務改革を推し進めつつ、「攻め」の営業で収益の拡大を目指します。

 二つ目は、松屋グループ全体を個性溢れるブランドに磨き上げてまいります。昨秋から、店舗運営の効率化を図るため、銀座店では運営体制を再構築すると共に要員の再配置を行い、外商等の強化部門においては増員を図る等、収益力強化に向け大きく舵を切りました。一方で、コロナ禍により先送りしていた売場の改装の再開や、CRM(顧客関係管理)の強化・顧客基盤の拡大に注力する等、力強い姿勢で「攻守一体の改革」を推し進めます。今後も、松屋グループ全体が独自性の強い個性溢れるブランドになるよう磨き上げてまいります。

 最後に、本年が皆様にとって、健康で実りの多い一年となりますことを心から祈念いたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。

㈱京王百貨店代表取締役社長 仲岡 一紀

新宿駅西口地区開発計画の工事の進捗にあわせ、全社一体となって新しいお客様を迎える準備を進める
㈱京王百貨店代表取締役社長 仲岡 一紀

 あけましておめでとうございます。

 昨年も新型コロナウイルス感染症は、新たな変異株の出現など、社会に引き続きダメージを与えておりますが、世の中もウイズコロナのなかで日常の生活を少しずつ取り戻しているようにも思います。

 しかしながら、ロシアのウクライナ侵攻など世界情勢に関する暗いニュースが続き、経済的にも、円安、燃料費や原材料費の高騰、物価高など暮らしに不安を与える話題が毎日のように報道されております。

 そのような中で、当社の基幹店がある新宿では、新宿駅西口地区開発計画による工事がいよいよ着工しました。これから工事の進捗にあわせて、取り巻く環境はさまざまな変化を遂げていくことになると思われます。昨年新宿店では、全館規模の改装を実施し、
「Welcometo New Keio!」をキーメッセージに、営業部のみならず、法人外商部、お得意様外商部、後方部門も含め全社一体となって新しいお客様を迎える準備を進め、新しいお客様にご来店いただくようになってきております。迎えた2023年、コロナも完全に収束することは望めませんが、少しずつウイズコロナが常態化して落ち着いてくると思われ、新宿の再開発も本格的に進んでまいります。そのような中でも、今までのお客様により多くご利用いただき、新しく足を運んでいただいたお客様にもご満足いただけるように、京王百貨店新宿店は引き続きターミナル百貨店としての利便性を強化させ、日常的に足を運んでいただける百貨店として、新宿駅西口の活性化に寄与してまいります。また、聖蹟桜ヶ丘店においては、周辺の大規模開発に対応して準備を進めてまいりましたが、いよいよ開発も進み、本格的な入居が始まりました。多摩川や緑に満ちた聖蹟桜ヶ丘の生活を楽しんでいただけるようお手伝いしてまいります。そのほか、京王線沿線を中心に展開しているサテライト店や、外商、EC等あらゆる手段を用いて、小規模でありながらギフトなど「百貨店の機能」を果たしながら、沿線にお住まいのお客様にご利用いただけるよう進めてまいります。

 最後になりましたが、皆様のご健勝とご多幸を心から祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

年頭所感

 先ず、筆者の反省を込めて、1年前の年頭所感を思い出して見よう。

 2022年は、と問われれば「上手く運べば『コロナ終息の年』と記憶されるかもしれない年」であろうか? もちろん、それは誰にも判らない。今もまだ「オミクロン株」という新たな脅威にさらされて、「第六波」に怯える日々だ。

第八波

 全くおめでたいもので、(正月なので勘弁して欲しい) 実際は2022年もコロナ終息の年とはならなかったし、収束の年でさえなかった。我々は不真面目にも(感染して亡くなっている方もあるし、病院や施設で働き続けるエッセンシャルワーカーの方には、大変申し訳ないが)徐々に「コロナ不感症」になっている様だ。

 1日の感染者数は、減っていないのに、感染者数を只「気にしなくなった」のだ。ウィズコロナというのは、こう言うものなのだな、と妙に実感している。

 オミクロン株は姿形を変えて、結局、1年もの間、我々を翻弄し続けた。

 しかし、未だにコロナに翻弄されているのは、世界中で我が国と「ゼロコロナ」政策を掲げていたお隣の中国だけだった様だ。

 サッカーワールドカップにより、カタールのみならず、様々な国の市民の状況を見ると、マスクをしている観客やサポーターは皆無だった。

 その中国も政策を転換した現在、我々日本人も、コロナ以外の生活に軸足を移すタイミングを迎えた様だ。それでも、電車や会社や学校では、未だ人びとはマスクをしているし、飲食店や百貨店の店内でも、客もスタッフもマスク越しの会話を続けている。こんな生活を3年間も続けていても「特技は同調圧力」という我々のマスク生活は、まだまだ終わらない。

 ここでもう一度1年前に遡る

 デルタ株の出現により、「半年後」は叶わなかったが、「1年後」の今回はもしかして、明るい兆しが見えて来ているのかもしれない。※もちろんこの後、オミクロン株の市中感染が進めば、話はふりだしに戻るが・・・

 ここは、コロナ禍で早や3人目となった、日本の新たな指導者に期待するしかない。

 その、3人目の指導者については、相変わらずのブレブレ振りで、政権支持率の低空飛行が続いている。
※支持率25%は低空飛行どころではなく、危険水域かもしれないが。
昨今の話題は防衛費の増大とそのための増税論議ばかりである。

 コロナのニュースは、第一人者である尾身会長本人が、5回目のワクチン接種の直後に罹患し、もはやワクチンには感染予防効果が(ほとんど)ないことを証明してしまった。本人は症状の軽さを盛んに喧伝しているが、医者というのは、研究者でも専門家でもなく、医療機関の「経営者」であることに、そろそろ我々も気づき始めている。

 そろそろ本題に入ろう。いささか唐突だが、『デパートのルネッサンス』は、コロナ禍以降も、継続して追い求める価値のあるミッションである。これに尽きる。

 本コラムでは、シリーズとして「そごう・西武」の売却の話を追っているが、地方だけではない百貨店の「大閉店時代」を、百貨店自身も、我々デパート新聞も、引き続き見据えて行かなければならない。

 特に、渋谷東急、新宿小田急に続き、池袋西武という巨艦の「いくすえ」は、誰しもが、気になる所だろう。筆者もこの気持ちのまま、この事案の顛末を追い続けたいと思っている。

 一方で本紙は、三重県津市の百貨店「松菱」と連携し、地方百貨店の生き残り戦略を、より具体的に応援していく所存である。
この新たな取り組みを「試金石」として、苦境に喘ぐ地方百貨店を、公益性を重視した「みんなのデパート」と位置づけ、より一層応援していきたい。

 繰り返しになるが、筆者は引き続き、百貨店関係者や顧客と目線を合わせ、時にはその代弁者となり、筆を進めて行く。この場を借りて、購読者の皆様に改めて御礼申し上げたい。そして「ウィズコロナ」を実践するすべてのデパートが、前年よりも少しでも希望を持って臨む新年を寿ぎ、ご挨拶に替えさせていただきたい。

デパート新聞編集長

11月インバウンド売上高5倍 コロナ前比7割に回復 訪日客93万人 4割に

11月インバウンド売上高5倍、購買客数18倍

 日本百貨店協会が12月23日に発表した22年11月の全国百貨店のインバウンド売上高(免税総売上高)速報値は、前年同月比約5倍の約175億4千万円であった。20年1月(316・9億円)以来最大の売上高であり、コロナ禍前の19年11月(261・5億円))の約7割弱に回復した。

 購買客数は前年同月の約18・6倍の約13万人と大幅に増加した。10月11日から個人旅行が解禁され、短期滞在者のビザ(査証)免除などの入国規制が緩和されたことから、円安を追い風にして香港、韓国、台湾などアジア圏からの顧客が急増した。19年11月(40・9万人)購買客数の3割に回復した。(表参照)

 売上の人気の商品は、化粧品、ハイエンドブランド、食料品、婦人服飾雑貨、婦人服洋品であり、来店の多かった国は、香港、韓国、台湾、中国本土、マレーシア、シンガポール、タイ他であった。

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東京は7.8%増

 日本百貨店協会は、令和4年11月東京地区百貨店(調査対象12社、23店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1385億円余で、前年同月比7.8%増(店舗数調整後/ 15 か月連続プラス)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭8.3%増(90.6%)、非店頭3.5%増(9.4%)となった。
※()内は 店頭・非店頭の構成比

百貨店データ

  • 3社商況11月
  • 11月店別売上前年比(%)
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 コロナウイルスや戦争など長い間ほとんど意識してこなかった社会不安が、私たちの日常に入り込んでいる。経済生活の基本である資本主義の在り方も揺らぎは大きくなっており、数十年ぶりとなる物価高は天井が全く見えず、雇用の崩壊も顕著になってきた。

 日々の生活に小さな幸せをもたらせてくれたデパートの存続危機も、この経済的変動と無縁ではない。今後も予想を超える厳しい事態が起きかねない。

 知らない間に大切なものを失ってしまわないように、一人一人が出来ることをして行かなければならない年の始まりである。

デパートのルネッサンスはどこにある? 2023年01月01日号-60

 本コラム「デパートのルネッサンスはどこにある?」は、今号で連載60回目となった。
前年の元旦号は連載40回だったので、1年で20回を連載したことになる。また、連載スタートから、およそ3年が経過する勘定となる。

 既にお気づきかと思うが、この3年間というのは「コロナと戦った」と言うより「共に過ごした3年」とでも言ったら良いのだろうか。2020年の初頭から、中国武漢を発祥とする「新型コロナ」が我が国をじわじわと浸食し、遂に同年4月、今は亡き安倍首相が「緊急事態宣言」を発出したのだった。
それからの百貨店は、(他の業種も同じだが)コロナと戦いながら、商売を繋いで「何とか凌いできた」という状況であり、それは今もあまり変わっていない。

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