えきの駅 食文化探訪 第9回西武福井店(前編) 販売部食品課 村瀬淳課長インタビュー

村瀬課長

 西武福井店は、株式会社そごう・西武が運営する福井県唯一の百貨店。

 昭和3年に創業した「だるま屋」が西武百貨店と資本提携、その後、変遷を経て西武百貨店の直営店舗となった店舗である。来年は創業95周年を迎える。

「西武福井店の立地と食品売場の商圏をお聞かせください」

(村瀬課長)
当店はJRと私鉄2社が乗り入れる福井駅西口から徒歩数分の商業中心地に位置しています。店舗の北側地区では、通称三角地帯※の「駅前電車通り北地区再開発」が進んでおり、2024年3月の北陸新幹線の敦賀駅延伸による福井駅開業と同時に、商業フロア、外資ホテル、オフィス、住宅などのビル群が開業する予定です。街並みが大きな変貌を遂げ、観光客や県内からの集客が大いに期待されます。福井の玄関口にふさわしい都市景観とすべく開発中です。千人の雇用、千人の人が住むこの再開発エリアにおいて、消費喚起を期待しています。

 商圏は、県全域であり、ハレの日のお買い物やギフトのお求めは福井県全域からもお越し頂いています。1次商圏は福井市内を中心とする福井県嶺北地域です。
※店舗データ参照

「1年半前に大規模改装をされています。その戦略と1年半が経過した現状と今後をお聞かせください。」

成長分野と位置付ける食品を拡充

(村瀬課長)
 2021年3月に店舗戦略としてロフトや無印良品の専門店を入れ、食品部門としてはお菓子を1階に入れて化粧品と隣り合わせにするリニューアルを行いました。(地下1階で生鮮3品や惣菜等デイリー品を取り扱い。)

 リニューアル前の本館・新館の2館体制の頃は本館で生鮮3品や惣菜等デイリーの商品を取り扱い、新館でギフト、菓子、酒等を取り扱う体制でした。リニューアルで1館体制にすると同時に、菓子等のデイリー性を高めるために、目玉として諸国銘菓を取り扱う売場「卯花墻(うのはながき)」を新たに導入しました。菓子売場でもお客様に日々のお買い物を楽しんで頂こうとの構想がリニューアルの一番のポイントです。

 「うのはながき」では全国の人気の銘菓を日替わりで限定販売しており、これを目当てのお客様が開店前からお並び頂くことが一年間続いています。

 毎月、日替わりお取り寄せのチラシを作り店頭に置いてお客様にお持帰り頂いています。お客様がチラシのお目当ての品に丸印を付けて来られる光景は実に有り難く思います。

 また、ギフト需要として、焼き菓子は芦屋の洋菓子ブランド、「アンリ・シャルパンティエ」や「シーキューブ」。生菓子は地元の街の洋菓子屋さんである「パティスリーハシモト」、「さんしゅうえん」。和菓子は長崎カステラの「福砂屋」などを強化しました。(福砂屋は北陸地方初出店)

 リニューアル前までの顧客年齢層は食品売場を含め店全体が50歳代を中心に40歳から60歳代が中心でした。リニューアル完了後の現在は、30歳代の家族連れのお客様や化粧品を買われた若い女性のお客様のご来店が土・日曜を中心に目立つようになりました。まさに狙っていた新たな顧客層の獲得ができました。また、リニューアルにより売上がコロナ禍前の2019年度比で10%程度伸びています。

 今後の戦略として、2024年の北陸新幹線延伸に伴い近隣に住まわれる方、働かれる方には、日々のお買い物を、観光で来られる方には、福井名産品の手土産を。この両方の需要に対応できる売場をコンパクトに詰め込んでいきたいと考えています。

「福井店の食の強い売場をお聞かせください。」

魚廣での「おいしさ直行便」鮮魚の販売

(村瀬課長)
 前述した「うのはながき」とギフト需要の菓子ブランドに加え、日々のお買い物として使って頂いているのが生鮮売場です。

 鮮魚売場「魚廣」では、本日のおいしさ直行便コーナーを設けて鮮魚を販売しています。母体となる会社所在地が富山県のため、富山の漁港より日々直送にて北陸の旬の鮮魚をその日のうちに店頭に並べて提供ができます。富山県「氷見漁港」「岩瀬漁港」でのセリに参加し、氷見漁港を6時に出発、岩瀬漁港にてさらに積み込んで6時半に出発し、午前中に西武福井店に到着。厨房にて魚種を見ながら、丸魚、刺身、寿司にて店頭に13時頃に陳列します。
毎週水曜日と日曜日以外は毎日行なっています。天然魚のため天候等により種類も量も日々異なるが鮮度はピカイチ。9月には底曳き漁が始まり、一気に魚種が豊富になります。珍しい魚の美味しい食べ方などをスタッフが丁寧に説明し用途に合った下調理を行っています。日によっては百貨店担当者も見たことのない魚も並び、お客様から好評を得ています。

 青果売場の「果菜蔵」は、地元の生産者との取り組みが活発であり直接生産者と独自のネットワークを構築しています。収穫量が少なく他県には出回らないような作物も積極的に販売し、お客様に新しい発見をして頂いている売場です。

 新たにシャインマスカットの栽培を始めたという坂井市の生産者からは、昨年まだ商品化するには粒が小さすぎる1年目のものを買い付けて応援し、今年は随分粒も大きくなり味のいいものを優先的に買い付けることができました。

 また、すっかり福井県産ブランドとして定着したミディトマトの「越のルビー」の姉妹品として来年から黄色の「越のジュエリー」を本格販売するからと、地元JAと組んで試食イベントを行い、消費者の意見を収集することに協力するなど地域貢献にも努めています。

 独自のネットワークは全国にもおよび、珍しい作物や特にできの良い作物などの情報をいち早くつかみ、直接交渉して買い付けることに成功しています。初夏には珍しい種類の茄子を10種類以上揃えて一面茄子だらけにしてみたり、ピンクのアスパラが獲れたと聞けば、いち早く入手し、緑・紫・白・ピンクの4色のアスパラコーナーを作ってみたりと毎日のように売場が楽しく演出されています。当店の青果売場で特徴的なのは、デメリットもポップに表示をします。「甘いがまだやや固いからこのように召し上がってください。」のように。さらに販売時にもお客様にその商品の特徴やおいしい食べ方などを会話で伝えることができています。毎朝、開店と同時に最初に青果売場を目指してお客様が来られる光景が名物化していますが、これはお客様が当店の青果売場を信頼して頂いている証と考えています。

(敬称略)
後編は次号10月15日号に掲載します

店舗データ

西武福井店

①店舗名  西武福井店
②所在地   福井県福井市中央1-8-1
③アクセス JR北陸本線、福井鉄道福武線、えちぜん鉄道福井駅下車
④開店年月日 1967年3月21日
⑤売場面積  16,384㎡  B1F~8F
※周辺地域の人口:福井市 約75万
※「福井嶺北地方」は福井市を中心とした鯖江市、越前市、坂井市、永平寺町等 人口66万のエリア。