デパート新聞 第2688号 – 令和4年6月1日

4月東京は27.0%増

 日本百貨店協会は、令和4年4月東京地区百貨店(調査対象12社、24店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1094億円余で、前年同月比27.0%増(店舗数調整後/8か月連続増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭27.0%増(89.4%)、非店頭26.6%増(10.6%)となった。

百貨店データ

  • 3社商況4月
  • 4月店別売上前年比(%)
  • 都内各店令和4年4月商品別売上高
  • 関東各店令和4年4月商品別売上高

人事異動

  • ㈱髙島屋
  • ㈱近鉄百貨店
  • J.フロントリテイリング㈱
  • ㈱大丸松坂屋百貨店
  • ㈱松屋

地方百貨店の時代 その40 – 文化催事

デパート新聞社 社主
田中 潤

下火となった文化催事

 デパートは、昔から上層階のフロアで1〜2週間単位の絵画展や書道展など、様々な芸術分野の催事を行っている。ところが、こうした催事は最近衰退気味である。

 主な理由として、その催事自体が「収益性がない」「集客力がない」という収入面と「準備にお金と労力がかかる」「管理にリスクがある」という費用面との両面での経済性である。つまり、文化催事でありながらビジネス思考が優先し「つまらないイベント」という評価に甘んじているわけである。

文化発信の場としての百貨店

 地方百貨店の再生において、文化催事の復活は重要なキーワードである。大事なのはイベントの上質性、希少性の演出である。多くの生涯学習センターなどで行われているような総花的な展示会とは一線を画し、しっかりとコンセプトを作ったプレゼンテーションを行い、全体のディスプレイや案内係の配備、地域への開催日の周知などを徹底して、洗練されたマーケティングを行うのである。内容については、主体をゲストとして呼ぶ場合は高名な作家に絞った企画とする。一方、地元の芸術家や有形・無形文化財などには広く場所を提供して、地域の文化発信の場としての努力を繰り返し行うのである。

 その際、作品の販売を幅広く行うことが要諦だ。芸術家は誰であれ、こうした場に出品することでの評価と作品が購入されることでの収益を重視するからである。売れる催事であれば、取引先が良い商品を持ってくるのと同じ法則である。大切なのは、こうした作家と直接交渉できる目利きでコミュニケーション力のある担当者を作ることである。

 担当者が直接作家と契約することで、中間で利益を搾取する業者を排除できれば、その作家の相場価格の50%の金額で販売したとしても、デパートも作家も利益を確保することが可能になる。地元の作家の場合も同じで、デパートに目利きがいれば地域を隈なく回り多くの芸術家を発見することが可能になる。

 結果的に、こうした新しい作家の発掘は地域文化への貢献となり、作家を中心にしたファンの輪がデパートを舞台に拡がることで、固定客の拡がりへとつながっていくのである。

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 ロシアのウクライナ侵攻で、欧州の国々は結束を強めている。地政学上、多くの国が直接国土に踏み込まれるというリスクを直接感じているのだろう。翻って、我国はというと、実はロシアに最も近い国であるということに気付かされるわけである。

 100年以上前に、インド洋を渡ってバルチック艦隊が日本海にやってきた日露戦争の頃とは全く異なり、仮にロシアが動けば日本の領土はあっという間に脅かされる危険区域内にある。

 そんな中で、韓国・北朝鮮・中国…と近隣諸国とはどちらも厳しい関係にある。改めて、隣国との付き合い方を見直す時期に来ているのかもしれないと感じる初夏である。

連載小説 英雄たちの経営力 第3回 徳川家康 その1

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徳川家康

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連載:デパートのルネッサンはどこにある 46 – ユニクロ考(後編)

百貨店のライバルなのかそれとも救世主か

ユニクロの時価総額はZARAの半分に 

 ファーストリテイリングの株価はピーク時には10万円以上だったが、現在は6万5670円(22年2月1日終値)という状況だ。時価総額も6兆円台となっている。

 これに対しよくユニクロと比較されるスペインのZARAを展開するインディテックスの現在の時価総額は約11兆円。一時期、ファストリはインディテックスを抜いたこともあった。しかし、今や倍近い差をつけられている。

 これでは、「しょせん、ユニクロはアジアのブランドだった」と欧米だけでなく世界中から言われかねない。

 そもそも、ユニクロが世界的なブランドに名を連ねることができた成長要因は、中国市場での躍進であった。

 ユニクロは「日本のブランド」から、中国市場の拡大によって「アジアのブランド」まで押し上げた。

 中国での勢いのままに、ファストリの時価総額は、先述のように一時、インディテックスを追い越したというわけだ。

 しかしユニクロが「この世の春」を謳歌したのは束の間だった。海外の投資家、特に欧米の投資家からは、その中国市場での躍進により「アジアのブランド」としか映らないのである。

 つまり、ファストリには越えられない「アジアの壁」があると言って良いし、それが真の世界的なブランドになり得ない主要因なのだろう。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年06月01日号-47(後編) を御覧ください。

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