連載小説 英雄たちの経営力 第3回 徳川家康 その1
凡庸(ぼんよう)な男から天下人へ
家康については、これまで小説、エッセイ、ノンフィクションなど様々な角度から書いてきた私だが、今回は新たな視点、とくに天下政権の経営面から家康を掘り下げていきたいと思う。
家康がなぜ天下人となり、その創設した江戸幕府が二百六十年にわたって続いたのか。それには様々な要因が考えられる。だが根本的な理由は、家康の人間性にあるのではないだろうか。
家康という男を一言で表すと、「凡庸」だろう。拙著『峠越え』の中で、私は太原雪斎(たいげんせっさい)( 今川家の軍師) の言葉としてこう書いた。
「衆に秀でた者は己を知ろうとせぬ。それに反して、凡庸な者ほど己を知ろうとする」
「乱世ではな、己を知る者ほど強き者はおらぬのだ。そなたは凡庸な己をよく知っておる」
「凡庸でなければ越えられぬ峠があるのだ」
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『黒南風の海 – 加藤清正』や、鎌倉時代初期を描いた『夜叉の都』、サスペンス小説『横浜1963』など幅広いジャンルで活躍
北条五代, 覇王の神殿, 琉球警察, 威風堂々 幕末佐賀風雲録 など。