特別寄稿 NY視察2019から見る、百貨店のさらに恐ろしい未来 第7章の2

日本の予測10年後の百貨店へのメッセージ(後編)

顧客はどこにいる?外商の立ち位置

 外商顧客は高齢化しています。いままでのやり方で外商顧客を増やすのはは難しいと感じます。

SNSに注力せよ

 SNSの会員(フォロワー)が本当の顧客となる時代です。SNSが行動のモチベーションとなる世代をどう取り込むかが重要です。百貨店が、自社のSNSにどれだけの会員をよべるかが、百貨店の魅力の判断の1つになる可能性があると思います。現在強みの有る高齢者層から、一気にSNS世代への展開を進める必要があります。

新しい働き方

 次に、働き方の部分として、ニューヨークの美容室の事例を紹介したい。
人件費の高騰が進むニューヨークでは、すでに働き方が変わっています。
日本も同じように人件費の高騰は進んでおり、そこでは日本の未来 の働き方が垣間見れると思います。

MASA KANAI

Upper westにある高級住宅街1階にある美容室モードケイズ出資、トミーさん(写真中央)がオーナーを務める。
2018年秋にOPEN、30坪NYで訪問した弊社クライアントの美容室です。

30坪足らずのお店で月商1200万〜1500万円を売ります。
さぞかし忙しく、長時間労働かと思いきや、お店は18時には終了します。NYでは、だらだら働くことはしません。
背景には、高い人件費があります。営業時間を短くするために、社員みんなで工夫し、お店の効率化を図っています。経営が効率化されたことで帰宅時間が早くなるだけではなく、利益もでており、年内(当時)にも2号店出店を検討しているとのこと。

おわりに

 百貨店は、低価格主体のショッピングモールに取って代わられてしまいました。そして、新型コロナウイルスが追い打ちをかけた形になっています。ですが、「小売りの輪」を考えると、次はまた、高付加価値のプレイヤーが主役になるはずです。それは一体誰でしょうか。今のままの百貨店が、そのまま復活するとは思えません。復活には、画期的なイノベーションが必要です。

 現状、一番可能性が高いのは、駅ビルだと考えます。ただし、現状の駅ビルでは、まだイノベーションが足りていないとも感じています。

 一つ言えることは、それが誰であれ、いまのスタイルではなく劇的な変化を遂げていることでしょう。自動車におけるテスラモーターズのように、異業種からの参入企業である可能性が高いと考えます。

 今回のNY視察は、後に急逝した兄との最後の男旅でもありました。
兄は、メーカ勤務時代に百貨店を担当していたこともあり、百貨店には造詣も深く、百貨店の未来についても色々と議論しました。兄が勤務していた20年前の百貨店は売上も好調でした。その(20年前の)姿と比較すると、この視察旅行で体感したアメリカの百貨店の苦境は、とても未来の日本の百貨店に訪れる変化だとは、到底思えないほどの惨状でした。

 残念ながら兄は亡くなってしまいましたが、私はいつか息子と、同じテーマでアメリカを訪問したいと思っています。20年後に、私が息子とアメリカ男旅をする際には、百貨店はどのような姿になっているのでしょうか。

 これで「N Y 視察2019から見る、百貨店の、さらに恐ろしい未来」は終わります。
1年間ありがとうございました。