特別寄稿 アフターコロナ・ウィズコロナ

寄稿
株式会社クリック&モルタル 代表取締役 大和 正洋

 今号では、本紙デパート新聞の協力企業である、株式会社クリック&モルタルによる、情報発信コラムを掲載する。クリック&モルタルは、百貨店や商業施設と、出店したいテナントをマッチングさせるデータマッチング企業だ。

 全国の百貨店、関連企業、テナントの皆様に向け、役に立つ情報や提案を提供している。

 もちろんデパート新聞のミッションである「百貨店のサバイバル」をバックアップする内容となっている。

地方百貨店のアフターコロナ・ウィズコロナ

 百貨店に限らず、世界の商業施設は、新型コロナウイルスの影響で苦戦を強いられています。その中でも百貨店は、そもそも抱えている、多くの構造的な問題も相まって、大苦戦の状況が続いています。各地で百貨店の閉館が続き、「百貨店消滅県」が増え続けています。

 弊社、株式会社クリック&モルタルでは、百貨店に限らず、日本各地の商業施設のリーシングサポート業務を行っております。昨今は、地方百貨店様からの依頼が多く、縁あってこの度、デパート新聞の紙面を借りて、当社の業務のご紹介と、今後の百貨店の行く末に関する考察を、書かせていただきます。

 今回は、百貨店が抱える構造的な問題を指摘するとともに、それを乗り越えるべく起きている「百貨店のテナント化」について解説したいと思います。

 先ず百貨店の抱える3つの構造的な問題について解説していきます。

構造的な問題その1アパレル依存

 そもそも百貨店は、アパレルに依存しすぎている、と考えています。売上と利益率重視のあまり、売りやすく、粗利益を多く取れる、アパレルの取り扱い比率を、どんどん上げてきました。多くの百貨店では、館の2フロア以上が婦人服にあてられています。

 成長期においては、成功の原動力でありましたが、気がつけば、アパレルで売場と売上を作ることが当たり前になり、いわばアパレル依存体質になっています。売上が取れているとしても、消費者の視点から見れば、洋服だらけで、売場が面白くないのは明白です。

 コロナ以前から、大手アパレルの撤退が始まっていましたが、コロナでアパレルの撤退は更に加速しました。かつての「主要取引先」が、事業レベルで撤退しています。正に待ったなしの状態です。

構造的な問題その2消化仕入れの弊害

 そもそも消化仕入れとは、メーカーから百貨店の売場に商品の提供を受けますが、売れた際にその商品を仕入れたとみなす契約形態であり、売れ残りをメーカーに戻すことができるという、極めて百貨店に有利な契約形態です。

 いままではそれが、百貨店の成長と力の象徴でもありました。百貨店でモノが売れる時代は良かったのですが、一旦売れ行きが落ち始め、構造改革に着手しようとした際に、障害となっています。

 それに対して、「テナント化」とは、売場を企業に賃貸して売場作りと運営を任せる方法です。

2-①人件費の肥大化と適正化の難しさ

 百貨店においては、接客をするのは百貨店の従業員です。漸減する売上に応じて、人件費、つまり従業員の数を減少させていればよかったのですが、そうはできていないのが現実です。赤字に転落しても、従業員の雇用を続けており、人件費が経営を圧迫しています。

 売り場のテナント化が行われると、その売場の販売員は、賃借企業のスタッフに変わり、百貨店の販売員を配置する必要はなくなります。

 いままでメスを入れられなかった人件費に対しては、テナント化を進めながら改善していけるはずです。

2-② サービス業を誘致しにくい

 人気の有るサービス業態を取り入れようと思っても、消化仕入れの契約形態になじみません。過去に固定賃料での事例が無く、現場担当者も誘致しかねています。

2-③ ゾーニングの改善がしにくい

 大型モールや駅前再開発に触発され、消費者行動が変化しています。トレンドが変わって来ているのです。新しいコンセプトの建物と、トレンドを盛り込んだ、テナントゾーニングが消費者の購買意欲を起こしています。

 しかし、モノを売ることが全面に出てくる消化仕入れのやり方では、新しいトレンドに気がついたとしても、挑戦すらできないのです。

 新しいコンセプトとはなんでしょうか。 雑貨、アパレル、カフェなどのリーシングミックスが求められているのです。

 1Fコスメ・ラグジュアリー、2F婦人服、3F紳士服、4F子供服、5Fインテリア・キッチン等々のフロア構成ではなく、各フロアにリーシングミックスを取り入れることで、お客様もミックスしています。

 現状の百貨店の売場で行われている、消化仕入れ販売では、いつまで経っても改善できません。これに対応するには、「テナント化」が必要なのです。

構造的な問題その3シニア依存

 百貨店はこれまで、お金持ちであるからという理由で、シニア特化を進めてきましたが、これは逆に「若者を見ていない」ということです。

 デパートは今、「若者が楽しめる施設」を目指してはいないのです。

 特に、子育て世代に居心地の良い空間、という視点がまったく不足しています。商品に目を向けた際にも、似たようなことが起こっています。

 ターゲットはシニアですが、その子供や孫が、一緒に判断、買い物するケースが急増しているのです。子供、孫世代を意識した外商が求められているのです。

構造改革としてのテナント化

 そんな中、売れないアパレル区画や、開いてしまった区画の活用として、百貨店自身による商品開拓ではなく、専門店を誘致し、売場を賃借する流れ=テナント化が起きているのです。

わかりやすい事例

端的な例としては、いままで集客力が弱く、売上の低かった上層階のキッズ・ファミリーゾーンを、人気のサービス業種や、ユニクロ・ニトリ・大型家電などの大型テナントに入れ替える手法です。集客力のある人気企業が、上層階まで客を呼んでくれるのです。契約形態は、固定賃料であり、過去にはなかった形です。

成功しやすい業種

 実際に弊社が誘致してきて、業績が上がりやすいのは、大型家具店、書店、リサイクルショップ、ジム・エステ、家電量販店・携帯電話、均一ショップなどです。これらの業種により、着々とテナント化が進んでいます。
例: 大丸心斎橋店やGINZASIXなどは、多くをテナント化しています。テナント化の大きなメリットの一つとしては、今回のような市況の大きな変化に強い、という点です。
 テナントの売上が下がったとしても、固定賃料はもらえる、ということです。

テナント化に対する現場の反応

 テナント化の成功は、いい事づくしに見えるのですが、果たして百貨店自身はどのように思っているのでしょうか?以下に、実際に現場から寄せられた声を紹介します。

「自分たちの売上ではない」

「自分で売りたい」

「自分の施設」

「自分の客」

 今までは百貨店の販売員が売上を立ててきましたが、それを奪われた寂しさでしょうか。

「これしか(賃料しか)入らない」

 売場が作った売上に対し、百貨店に入る利益が、減少する場合もあります。

「バイヤーの目利きが無い」

 今までは、百貨店に並ぶ商品は、バイヤーが買い付けてきた商品でした。それが、専門店が選定した商品に置き換わりました。

「買いまわりが弱い」

 せっかく人気のテナントを誘致したのに、今ひとつ波及効果が弱い。

テナント化でも成功しにくい業態

 テナント化する際に、アパレルの消化仕入れの代わりに、テナントとしてアパレル企業を誘致することも可能ですが、それは簡単ではありません。特にヤングカジュアルやアクセサリー等は、都心なら売れますが、地方百貨店ではなかなか売れません。そのため、WEB通販企業などで急成長している企業など、新しいプレイヤーをさがしていくことが求められるでしょう。

百貨店に求められる意識改革

売れ筋はネットに有る

 バイヤーの皆さんの、売れ筋商品を仕入れる力、作るが弱くなっています。
今までは、情報の発信源はバイヤーであり、売れ筋商品を作っていく流れがありました。しかし昨今では、メーカーが直接商品を消費者にレビューしてもらい、改善するという流れが加速しています。消費者が見たい本当の情報は、ネットの口コミや、YouTuberの動画にあります。YouTuber に目を向けるとその YouTuberを中心に、小さな消費者のまとまりが生まれていることがわかります。そういった、小さなファン=消費者のまとまりの声を拾って行くのが、今後の売れ筋把握になって行きます。

 爆発的に売れているものは、むしろネットに有ります。ですから、ネット上の売れ筋を探し出すことに慣れる必要があります。バイヤーの皆さんも、今までやってきた商品開拓の手法と対象に加えて、あらたに行動を加える必要があります。

オンラインショッピングに慣れる

 例えば外商です。外商ではZoomへの対応も急務であります。 外商担当としては、まずは百貨店に来店させたいと思うので、Zoomは百貨店とは縁がないと考えるかもしれません。しかしZoomは、本当は外商を助ける、素晴らしいツールなのです。

 親、祖父母は足繁く百貨店へ通っていたとしても、子供や孫世代は、わざわざ百貨店へ足を運ぼうとは、思わないのです。

 そこで、提案したいのが3世代でのVirtuals h o p p i n g です。Zoomで商品をみてもらい、接客します。場合によっては、百貨店ツアーをZoomで行っても良いでしょう。顧客の高齢化に対する新しい顧客(息子)への引継ぎもできるのではないしょうか

クリック&モルタルの予測する今後の流れ

 テナント化の流れは、さらに加速、トレンド化すると思われます。また、百貨店サイドも加速させたがっています。百貨店は、それだけ追い込まれていきます。ただし、テナント化を進め、リーシングが終わった際に、そのテナント構成が、はたしてお客様にとって本当に楽しい売場なのかは、再検証が必要です。

テナント化だけでは不十分な時代に突入

 通販の購買比率が30%を越えると言われる中で、テナント化すら厳しい状況が続くことも想定しています。今回のコロナで、消費の変化の過程が10年は短縮された中で、もはやテナント化だけでは難しい局面もあるでしょう。それゆえに、showroom・ショールーミングのテナント誘致、お客様への訴求を先駆けること、を考えましょう。

売り方に変化を

百貨店による、YouTubeでの発信により、おすすめする商品を紹介する。地元の有名YouTuberに来てもらい、情報発信するスタイルなどのアイデアで新しいお客を呼ぶことは可能です。また、楽天ランキング1位だけの商品を集めた売場など、常に「ネットで売れている!」商品だけをおいてみるのはどうでしょうか。

 もしかすると決済はWEBだけで、レジすらない売場になるでしょうが、集客につながるでしょうし、なによりも、行ってみたくなる・面白しろそうな空間がイメージできます。

クリック&モルタルが提案する「成功するテナント化」五つの法則

  1. 近隣にあるショッピングモールの店舗を誘致する。
  2. 地元の隠れた名店を誘致する。
  3. あえて、東京とは逆の方角の名店を探す。地元に根ざしている(本店が地元に有るなど)
  4. 元気なネット通販企業を誘致する(まずはPOPUP催事から)
  5. 閉店をたくさんしている企業にアプローチする。

 上記項目を行う際に、弊社の提供する無料のリーシングのサポート・サービとして「クリック&リーシング」をご活用されるのも一つの方法です。

 情報提供・マッチング・成約手数料まで無料で行う、業界唯一のサービスとなります。
今後施設改装、退店候補の入替などでのリーシング活動にご活用ください。
弊社の会員1000社と空き区画を無料でマッチングいたします。

新しいリーシングスタイルによる、新たな可能性とスピードを体感してください。

クリック&リーシング

 また、弊社クリック&モルタルでは、今回述べさせて頂いた課題を解決すべく、独自システムとノウハウによる有料サポートも提供しております。
リーシングの相談から、実際のリーシングサポートまで行っております。

ご興味のある方は、弊社までご連絡お待ちしております。
株式会社クリック&モルタル
Tel:03-6778-8404
Mail: info@clickmortar.com

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