地方デパート 逆襲(カウンターアタック) プロジェクト その24 これからのデパートが目指すべき経営二刀流 コニュニケーション事業への道

資本主義の壁

 デパートは、営利法人です。つまり、儲けること・収益を上げることで、獲得した利益を存続の糧にしていくことが当然の命題です。

 資本主義に支配された営利法人でありながら、この当り前の概念を見直そうというのが経営二刀流です。儲けることを目指す収益事業と、不特定多数の者の幸せの創造を目指す公益事業を合わせて行なっていこうという経営方針です。

 多くの企業は、自己の事業で誰かの幸せに貢献する、という理念を持っています。しかし、実際に行っている日々の活動には、そうした視点はほとんど反映されていません。社会貢献は単なるポーズに過ぎず、自己の利益を優先する姿勢を変えることはありません。

 浸りきった資本主義経済の概念を脱ぎ捨て、利他の精神を経営に本気で取り入れていこうというのが経営二刀流の要諦です。この活動は、従業員に対しても取引先に対しても、そして最も重要なステークホルダーである地域の方々に対してこそ積極的に進めていくことを目指さなければなりません。

地方デパートこそ経営二刀流

 さて、経営二刀流を行うべき最も適切な事業体が地方デパートなのです。高齢化した地域、人々が減少していく地域、個人の交流が失われていく  地域が全国的に急激に増加しています。こうした地域にコミュニケーションの輪を拡げていくための、具体的なアプローチについて、コミュニケーション力を歴史的に育んできたデパートこそが名乗りを上げなければなりません。

 地域の人々の自宅訪問、定期的な情報提供、文化・スポーツ・レクリエーションイベントの開催、家族が交流する場の提供など、コミュニケーションをつなげていく方法は沢山あります。もちろん、そうした事業の多くはデパートにとっては赤字での運営となるでしょう。損して得とれという思考にもなじまないかもしれません。つまり、赤字の出しっぱなしになることも十分考えられます。

 しかし、こうした活動を続けることは、地域の人々から大きな信頼を得ることになるでしょう。そして、なくてはならない存在として、デパートが地域の重要なランドマークとなっていくはずです。結果的に、収益事業についても今よりも遙かにスムーズに進められるようになることを意味します。つまり、公益事業を行うことは、利益を得るという形での即効性はなくても、必ず収益事業において利益を増やす助けを果たすはずです。

公益と収益2つの柱を持つ強さ

 なぜなら、公益・収益、どちらの事業もデパートの根幹たる人と人との出会いの中で成立するコミュニケーション事業であるからです。そうです。もうモノを前提とした流通業でなく、地方デパートは人の営みを見据えたコミュニケーション事業であることを掲げていく時代なのです。大きく儲けることを目指すのではなく、収益事業の黒字が公益事業の赤字を少しだけ上回り、合計してみると事業として成立できるような経営を行なうのです。資本主義の大前提の思考である拡大再生産からの変身です。

 資本主義に縛られ「お客様を第一にします」といった見せかけだけの経営スタイルから脱却することこそ、地方デパートの生きる道なのです。

 それは、デパートが一方的に顧客にサービスを提供するのではなく、顧客からも様々な恩恵を受ける相扶ける関係になることであり、共同して地方自治を守っていくための新たなコミュニティー形成につながる壮大な戦略でもあるのです。