地方デパート 逆襲(カウンターアタック) プロジェクト その20 デパートと図書館

 デパートの減少と軌を同じくして、全国から書店が無くなっていきました。書店が全く無い市町村は、25%を超えています。デパートからのモノ離れが進んだのと同様、本を読む人が激減したからです。それでも、モノを買うことについて消費者のニーズはそれなりに続くわけで、デパートはまだ対処の仕方があろうかと思いますが、唯一と言うべき販売アイテムの本を買ってもらえないということは書店にとっては致命的です。重大な危機を迎えているのです。

 ところが、無償で本を読むことができる施設である図書館は年々増加しています。いったいどういうことなのかと言えば、図書館が単に本を貸すだけでなく、公益的な役割をするようになったのです。具体的には、コミュニケーションの場としての取組みが実を結んでいるのです。

 人が集まりやすいように、交通の便の良いところに作る、建物も無機的なものではなくワクワクするような作りにする、長く居られるように喫茶スペースや、くつろげる空間を設ける、といった来館する人を意識した態勢を作っています。定期的に魅力あるイベントや講座をすることで、新しい出会いが生れます。育児相談のコーナーを設け、子育て層にも門戸を広げます。旧来の図書館が概念的に決めつけていた「無駄なこと」について積極的にフォーカスしているのです。この無駄なことこそ、思いやりの心であり、人と人との絆をつなげる取組みと言えるでしょう。

 ここで取り上げたい最大のポイントは、地方からの発信ということです。国の政策ではなく、地方がそれぞれ独自の文化観の中から方向性を決めて進んでいるということです。

 これは、まさに地方百貨店が今後目指すべき公益事業としての在り方に、極めて明確な示唆を与えてくれます。しかも、デパートの場合大きなアドバンテージがあります。それは、デパートがそもそも人が集まる地域のランドマーク的役割を担っていること、もう一つは、民間企業であるということです。

 図書館運営の多くは行政が関与しており、なお、硬直性を否めません。民間であるからこそ、より豊かなコミュニケーションの場を作る発想も、エネルギーも十分に活かせるはずです。図書館を見習い、それを超えるような公益活動をしていこうではありませんか。