地方デパート 逆襲(カウンターアタック) プロジェクト その16 デパートは与える場所へ

ギバーとテイカー

 積極的に自分が利益を得る行動をする人をテイカー、相手の利益を優先して考える人をギバーと色分けをする考え方があります。テイカーとはテイクする人、ギバーはギブする人という意味です。この数十年、多くのデータが蓄積されてきた中で、事業を行って最も成功している人はギバーである、ということが明確になってきています。

 事業を行う上で自分が利益を得ることを目的にすることは、基本的に誰も異論はないことです。しかし、その利益を得る時期や額が、今すぐなのか、しばらく後でいいのか、ずっと先でいいのか、更に少額でもいいのか出来るだけ多く欲しいのか、という視点で考えると、相手に対する行動を大きく変えることが出来ます。つまり、常に自分の最大限の利益を優先して相手と向き合うのか、自分の利益よりも相手の立場を考えて行動するのか、という違いです。

 この場合、相手とは取引相手のこともあれば、自分の会社の仲間のこともあるわけです。前者の場合、仕入先であれば仕入値を高くしてあげる、納品期限を長くしてあげる、多少の欠陥商品があっても許容してあげる、等々。売上先であれば値引のような即物的なことだけでなく、相手の求めた無理な期限でも間に合わせたり、何度も仕様変更に応じたりすることなど、いろいろ考えられます。

 一方、同じ会社の仲間の場合、自分のすべき仕事を後に回して同僚の仕事を手伝ってあげたり、相手の悩みを時間をかけて聞いてあげたりすることなど、こちらも沢山あります。

ギバーが成功する理由

 こうした相手への思いやりを自然に出来るのがギバーなのですが、当然ただ与えているだけでは自分の仕事が疎かになってしまいます。与えながらも自己の目的をしっかり持ち、相手のために時間を割くことが自己実現につながるということを、潜在的に持っていることが真のギバーの能力なのです。つまり、決して見返りを期待して行うのでなく、相手への思いやりをもって行動するという立ち位置で良しとするわけです。

 そういう行動をする人は結果的に相手から信頼され、相手が自分のためになることをしてくれることが増えます。取引先であれば、こちらの苦しい時はいうことを聞いてくれ、社内であれば、その人の行動を見ていた上司から評価される等々、様々な良い結果が起こります。無駄なことをしないというテイカーであれば合理的判断で手を付けなかった多くのことを経験することで多くの知見を得、視野が広がります。ギバーは様々な点で、成功するチャンスを広げていくわけです。

地方デパートはギバーになろう

 さて、デパートというところは、お客様にモノを売り代金をいただくという単純な構造から、テイカーの思考を増幅させる嫌いがあります。事実、現在の大都市のデパートが掲げる、富裕層にターゲットを絞り、海外の観光客を積極的に受け入れる戦略は、顧客からいかに経済的利益をテイクするかということを大上段から発しています。そして、この点こそ、地方デパートが違いを示すことが出来るところなのです。

 そもそもデパートというところは、その出発点において「先義後利」「三方良し」と、まず相手の利益を考えていこうという理念がありました。まさに、ギバーの発想と言えるでしょう。地方百貨店は正念場を迎えた中で、今こそ出発点に戻ってギバーの立場をとっていくことが重要なのです。