デパート新聞 第2717号 – 令和5年9月15日

7月全国は8.6%増

 日本百貨店協会は、令和5年7月の全国百貨店(調査対象70社、181店〈2023年6月対比±0店〉)の売上高概況を発表した。売上高総額は4758億円余で、前年同月比8.6%増(店舗数調整後/17か月連続プラス)だった。

百貨店データ

神奈川各店令和5年7月商品別売上高

都市規模別・地域別 売上高伸長率

池袋西武のストライキの本質とデパートの公益性を考える

 60年ぶりというデパートのストライキが発生しました。令和5年8月31日、西武池袋店でのストライキは、雇用される側の権利の発揚形として、こういうことが起り得るのだと多くの日本人に衝撃を与えました。

 今回のストライキは、単なる労働条件の改善、待遇改善を求めたものではありません。セブンアンドアイホールディングスが一方的に進めた資本主義の論理に対し、池袋の街の文化を守るという地域の人々の心を代弁したものでもあります。いや、むしろそれこそがストライキを支持した93・9%の西武の組合員の方々の心意気であり、労組が断行に至った本質なのではないでしょうか。

 これは、池袋の街で生活する不特定多数の人々の利益を考えた行為、即ち公益的活動といえるのではないでしょうか。だからこそ、多くの顧客も取引先事業者もこのストライキを支持しているのです。

 セブンアンドアイホールディングスは事業を合理的に考え、巨大化した会社です。しかし、コンビニの語源である便利さと合理性は少し異なります。便利と考えるのはあくまでそれを利用する顧客の側であり、企業に自分本位の合理性を押し付けられても納得出来るものではありません。

 8月31日のストを受けてのセブンアンドアイホールディングスの社長のコメントです。「多くのお客様、取引先に迷惑をかけて、申し訳ございません。ストが長引かないよう収束に務めます。」

 まさに、資本主義に浸かり切った哀れな経営者の言葉と言えましょう。自分たちが利益優先で売却の手段をとったことで、地域を始め不特定多数の人々に迷惑をかけていることには全く気がついていないのです。そして、地域の声を代弁している従業員がストライキをしたことについて、ご丁寧に謝罪しているのです。

 本来、謝罪すべきは流通事業者でありながら、百貨店経営に失敗した自らの未熟さと、不特定多数の人々を聾桟敷におき、株主だけの方を向いて行った一連の杜撰な手続きではないでしょうか。

 百貨店が持つ公益性に全く配慮がないのです。まさに、無道徳の極み、法律に触れなければ何をしても良いという論理であり、株主の意向にのみ忠実に従がい、自らの判断を何ら恥じていないのです。8月31日のストライキの翌日に西武、そごうの売却を完了するという結論の出し方は、あまりにも酷い仕打ちといえるのではないでしょうか。

 株主優先から従業員・取引先・顧客・地域のすべての人々の幸せを考えようという思いやり資本主義の思考への意向が世界では広がっていますが、時代の流れと逆行した見識と言えましょう。最も、そのセブンアンドアイホールディングスから会社を買い高値で売り抜けようとするファンド、そのための資金を捻出する三大メガバンク、強引に出店を進めるヨドバシカメラ、いずれも同じ穴の貉ということになるのでしょうが…。

 人間関係は、常に非合理の中で営まれていることを忘れてはいけません。自分本位の合理性は通用しません。デパートは、まさにそれが最も大切な場なのです。

 今回、インタビューで顧客より、「一日閉まると不都合が生じて心配」との声がありました。たった一日閉まるだけで…デパートの存在意義を思わずにはいられません。翻って、地方デパートは、永遠に幕を閉じるところが次々に生じています。

 今回の騒動を教訓に、地方デパートの逆襲(カウンターアタック、CA)プロジェクトをまっとうしていかなければならないと決意を新たにしています。

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 企業の倒産が急増している。金利0の融資や社会保険料の猶予が終了し、返済が始まったことで、資金繰りに窮乏している企業が常態化しているのである。

 国民年金機構が進める社会保険加入取締りと保険料滞納の取り立ては、今や税務署よりも激しく厳しい。自分たちが数十年前、あり余った資金を保養所や文化施設の取得に過剰投資し、後に捨て値で処分したことで、税金の無駄遣いと批判されたことなど全く忘れたかのようである。

 人を雇用することで、強制加入させられた社会保険のために資金繰りに詰まるというのでは、企業はますますロボット化への道を歩むことになるのではないだろうか。

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