地方デパート 逆襲(カウンターアタック) プロジェクト その14 地元の店をテナントにする

 CAプロジェクトの基本的戦略は、地域との信頼関係を徹底していこうというところにあります。当然、地元のお店に対して、その事業の育成を後押しする態勢を作っていきたいわけですが、注意すべき点があります。

 それは、デパートとして売れる商品を入れることを、最優先の方針にしてはいけないということです。もちろん、入店した店の商品がよく売れれば、そのテナントが嬉しいのは当然です。売上を増やしたいデパートとしては、共通のメリットがあると考えるのはやむを得ないことです。しかし、その考え方は、売れない店はデパートにとってもメリットが少ない、顧客も満足していないと思い込んでしまうことにつながります。商品が売れるかどうかは、運が大きく左右します。まず、デパートのバイヤーは入店を打診する店と商品のことをしっかり調べ、デパートにそのテナントが入ることで顧客に喜びを与えることが出来るかどうかを様々な角度から分析することが必要です。

 その時点では不足している商品の質の向上へのアドバイス、店の理念や将来に向っての経営者の意識を一緒に議論して育てていくことが出来る態勢を作ることが肝要です。同時に、デパートとしての公益性、将来に向けての考え方も共有していくことが重要です。デパートの進むべき方針に積極的に協力してもらえる仲間を作るのです。ここでも、デパートとテナントとの間で相扶ける関係が成立します。

 そうしたコミュニケーションを積み重ねてデパートとの信頼関係を築いたところでテナントとして参加してもらうことになれば、入店後も共通の理念に向って日々良いやりとりが出来るはずです。多くのテナントの不満である「自分たちの店にデパートは関心を持ってくれない」というようなことはなくなります。こうした態勢を作れば、売上は後から付いてきます。

 仮に、売上が思うように伸びなくても新商品の導入、広告の方法、価格の見直しなどマーケティングプランを再考することも容易になり、早い内に次の手が打てることになります。売上のことばかり考えると、そうした根っこの部分が疎かになり、つまらないところでお互いにストレスも増えます。

 そもそも、元々地元で人気の店に敢えて出店してもらう戦略は、デパートが売上を増やすためという要素が強いものなので、出店するテナントも自己の主張を強く打ち出す嫌いがあります。相扶ける関係とは違った関係になってしまうわけです。

 わざわざ人気店を追わず、地味な店こそ大きく化けさせる、という気概を持って地元の店を発掘することが、CAプロジェクトのテナント誘致の戦術です。