英雄たちの経営力 第8回 蘇我馬子 その2

大陸の情勢

 古墳時代の大陸の情勢についても触れておこう。

 高句麗・新羅・百済三国による朝鮮の「三国時代」は紀元前から続いていたが、半島の東北部から満州の一部までを押さえた高句麗の勢力が、ほかの二国に比べて強かった。

 仏教の伝来が三国の中で最も早かった高句麗は、いち早く土俗信仰を捨てることができ、仏教によって国家の統一と発展を成し遂げ、半島の制覇を目指すようになる。そうした意味では、大和国はロールモデルを高句麗に求めたと言えるだろう。

 一方、六世紀半ば、百済は新羅と結んで高句麗軍を撃破し、占領されていた漢江流域を奪還した。だが新羅は占領地を百済に返さない。というのも地味に乏しい半島の東南部を本領とする新羅にとって、中国王朝との交易窓口にあたる漢江河口を領有するのは、長年の念願だったからだ。これに怒った百済は新羅と断交し、それまで戦っていた高句麗と手を組み、新羅に対抗していくことになる。

 欽明率いる大和国も百済に与して半島の騒乱に介入していった。というのも、半島南部で産出される鉄鉱石および鉄製品を安定的に供給してもらう必要があったからだ。

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伊東 潤