地方デパート 逆襲(カウンターアタック) プロジェクト その9 顧客との相扶ける関係の成立
地方デパートが今後顧客とのコミュニケーションを深めていくために、最も大切な心構えは相扶ける関係になることです。商品を買って下さるお客様と対等な関係になることを当然と考えていこうという意味ではありません。
お客様に対して販売員として礼節を重んじた控えめな姿勢は当り前であり、こちらの我を通すことは厳に謹しまなければなりません。むしろ、そうした気配りは過去より重要性を増しています。しかし、一方で顧客の望んでいる楽しいコミュニケーションを行うためには一定の積極性も必要です。相手を思いやりながら、しっかり自分の意志を伝えていくことが大切です。
顧客を思いやる一例として、こういう話があります。
ご注文のお菓子が入荷したので、お客様のご自宅に連絡をいれる。いつもほとんど外出することのない一人住居の高齢者のお客様なのに、電話をしても出ない。気になって、何回か電話しても連絡がつかないので、ご自宅まで直接行ってみると留守である。携帯電話を持っていない方で、これ以上連絡のしようがない。なんとなく胸騒ぎがして帰ることも出来ず2時間余り待っていると、漸くお客様が帰って来た。聞けば、急に体調が悪くなり病院に行って診療を受け、具合が良くなって戻って来たところだという。「もう大丈夫」と言いつつ「ずっと待ってくれたのね」とお詫びの言葉をもらう。自宅に上って品物をお渡しし、雑談をした後何度もお礼を言われて、笑顔を交して帰る…
この日のコミュニケーションは販売員の仕事としては無駄が多かったかもしれませんが、顧客にとっては自分を心配してくれる人が側にいると実感できて、とても心強い思いを得た大切な日となったことは間違いないでしょう。こうしたことが、顧客との相扶ける関係になっていくのです。
このお客様はこの販売員にとって、いざという時頼りになるお客様になると思います。決して意図して行うのではなく、顧客との日常の人間関係の上に自然に相扶ける関係が成立することが大切なのです。
デパート新聞社 社主