地方デパート 逆襲(カウンターアタック) プロジェクトその8 貸借対照表と人材

貸借対照表の役割

 貸借対照表は、決算日の時点の企業の財産状態を示す最も重要な指標です。所有している資産と抱えている負債、その差額である資本を表示し、その企業の財務力を示すのです。

 今の時代強く求められている企業の存続可能性を示す資料と言ってよいでしょう。そこには、「いくら売上があったか」とか「どれだけ経費を使っているか」といった日々の情報はありません。あくまで、その企業の事業年度末日の金銭的価値を示す書面と言ってよいのです。

人財の評価の欠落

 ところが、そこに本来財産として表示すべき従業員のことは何も記載されません。人数も支払う給料の総額も一人一人の経験年数や個別の能力なども全く価値評価されていません。

 人は人財と言われ続け、多くの企業が人財を有機的に活かして成立しているのにもかかわらずです。このことは、デパートにおいて深刻です。人財が最大の財産であるデパートが、従業員の価値を貸借対照表に表示しないのは大きな欠陥であると思います。

 経営者というものは、単眼的です。貸借対照表に計上しない財産なら特に価値はないもの、と人財の具体的評価をしようとしませんでした。給料を払うための一つのシステムとして人事評価をしてきただけで、自分のデパートにとって「この人」がどのくらい財産的価値があるかなど考える視点はなかったのです。

人財と公益

 ところで、人の価値を財産とする考え方は、公益的思考と密接な関係があります。株主の利益のためだけの資本主義から従業員・取引先・地域の方々といった不特定多数の人々の幸せを目指す思いやり資本主義の必要性が年々高まってきています。まずは、企業が最も身近な従業員の価値を正しく評価することで、企業自体の価値も見直されるのです。

 具体的には、貸借対照表の無形固定資産のところに人財資産として、人財の評価額を計上することで資産と資本が増えます。それによって、企業の客観的評価が高まり、それがディスクロージャーされて企業への信頼が増し、企業価値が高まることで利害関係者への利益の配分にもつながっていくのです。ここに掲げた貸借対照表の資産の部に記載した人財資産がこれを意味します。

 今後の貸借対照表に、このような記載が必要になっていかなければなりません。