地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その5 これからの地方デパートのルマーチャンダイジング(MD)

流通業のマーチャンダイジングの歴史

 デパートは百貨店の名のとおり「何でも品揃えをしています」ということを謳い文句に発展しました。これが、デパートの基本的なマーチャンダイジング(MD)であったわけです。ここでいうMDとは、自社の商品の価値をどのようにして顧客に有効に伝えていくのかという方針を言います。
 

さて、1970年代、デパートの利用客の枠を超え、より幅広く人々に向けてこの方法を発信したのが、総合量販店であるダイエーやイトーヨーカドーでした。両社は全国各地に出店し、高級品以外の多くの商品を、町の小売店では揃えられない規模で品揃えしました。食品・生鮮品・菓子・衣料品・工具・金物・電化製品など、どれもそれぞれの分野で一般の商店を上回る規模の商品展開をして顧客を誘引したのです。その衝撃は日本中に拡がり、この2社は流通業のトップの座を争いました。

 しかし、衣料品はもとより電化製品や工具・金物など、それぞれの分野でさらに大規模な専門量販店が出現したことで、段々と顧客は流出していきました。品揃えどころか、価格でも全く歯が立たないので、当然の帰結であったのです。

デパートの停滞

 1980年代から2010年代までの僅か30年弱で主役交代劇でしたが、その間デパートは売上を減らしていくばかりで、新たなMDを取ることはできませんでした。他業態との流通戦争から逃避するように、売り場を持たないインターネットビジネスや場所貸しビジネスに走ってしまい、今日を迎えています。

デパートの新たなMD 

 今、地方百貨店は過去の流通業の歴史を見極め、新たなMDを進めていく時を迎えています。デパートだけが持つ魅力、能力を活かしたMDです。それは新たな百貨作戦ともいえるものです。その地域の、どの店にもない規模の品揃えする商品をいくつか特定して、その売場では出来る限り現物の商品を揃えるのです。

 例えば、紳士靴・婦人コート・傘・カメラ・包丁など、5〜10程度のアイテムに絞り込むのです。当然カジュアル衣料品や電化製品、家具など既に量販店がリーダーシップをとっている商品は除きます。その地域には専門店がない商品をピックアップするわけです。導入を決めたアイテムについては地域で最大の質と量を揃える、といったMDを進めるのです。

 同時に考えておきたいのは、ブランド志向から脱却し、デパートとして一定の水準を維持しつつも、顧客が満足する価格帯の商品を集めるという視点です。当然ながら、そのための市場調査は、改めて念入りに行わなければなりません。一方で、それ以外のアイテム商品は極力在庫を置かず、取り寄せやインターネットで販売します。つまり、リアル(オフライン)は深く狭く、バーチャル(オンライン)は広く浅くというツーウェイ販売をしていくのです。リアル部分では魅力ある商品を、気持ちのよい環境で、専門知識のある販売員が接客するという設えをします。デパートの古き良き時代の売場を作るのです。

 どんどん商品が売れるようになれば、仕入先から商品を熟知した専門販売員も駆けつけてきます。デパートのプロバー社員との競演で、顧客により豊かな遊びの時間を提供することが肝要です。