地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その4 オンラインとオフライン

(オンラインとオフラインの違い)

 商ビジネスにおいて、オンライン取引とは電子・仮想空間取引のことであり、オフライン取引は実店舗・対面取引のことです。両者の決定的な相違点は、顧客にモノを販売するにあたって直接人が介在するのかしないのか、というところです。この点は、見方 を変えると大きな差異が明確になってきます。

(オフラインは他動的)

 オフライン取引は、基本的に売り手と買い手が一対一であり、売り手には直接買い手に対してモノを売るという責任が生じます。販売現場において買い手に自分の行動を一部始終見られているという点が大きな特徴と言えます。換言すれば、売り手は商品だけではなく、売り手自身の教養、人格、気配りなど自分の情報を買い手に伝えることで、購入判断を委ねるのです。

 つまり、積極的に話をしながらも売り手の立場は他動的であり、買い手は総合的な経験値により購入動機を膨らませていきます。ここに、オフライン取引の真髄である商人道が大きな役割を果たすことになります。むろん、売り手本人だけでなく、店の環境や周りにいる他の販売員の動きも重要です。買い手は、その店に買いに行く決断を始めとした一連の流れの結果、最終的に対面する売り手とのコミュニケーションで購入を決めることになるのです。

(オンラインは能動的)

 一方、 オンライン取引は、能動的です。売り手は買い手の実像には関心を持ちません。マーケティングにおいて、買い手の類型的な像を様々なデータを駆使して絞っていきますが、たどりついた相手のオリジナリティに向き合う必要はないのです。大切なのは、売り手側の言葉と目に見える画像・情報をいかに買い手に分かりやすく伝えるかというデータづくりです。つまり、不特定多数の買い手に対して、なるべく多数の人に納得してもらえるマーケティング情報を提供することが大切なのです。

 売り手側の企業としては目に見えない相手にモノを販売するのですから、商品の提供責任はオフライン取引よりある意味で厳格に求められます。一方、 直接の売り手である販売員個人には一人の特定の買い手に対する責任意識はあまり育ちません。販売する対象となる相手が具体的に見えないのだから当然です。ここにオンライン取引の決定的な欠点があるのです。つまり、商人道が売り手個々人には育っていかないのです。

(デパートの基本は、お客様優先のオフライン)

 コミュニケーション力が弱まり人間関係が薄くなっている今の時代、多くの人が求めているのは、自分を楽しませてくれる豊かな会話術であり、それを促がす和やかな環境です。その観点から、オフライン取引で最も大きな力を発揮するのはデパートなのです。

 デパートはオンライン取引を拡げていくのは当然ですが、本当の強みであるオフライン取引の制度を更に高めるように様々な施策を講じることこそ絶対に必要なのです。不特定多数の人々が求めるモノを幅広く調査しつつ、最終の販売シーンではたった一人 の特定の人に幸せを届けることが、オフライン取引の醍醐味でもあるのです。